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【研究室座談会03】 システムプランニング/デザインマネージメント/意匠形態学/モビリティデザイン

今回はシステムプランニング研究室デザインマネージメント研究室意匠形態学研究室モビリティデザイン研究室の4名にお話を伺いました。(注:本記事は6月上旬に取材を行っており、現在は研究テーマ等が変化している可能性があります。)

普段の活動について

質問者:まずは自己紹介がてら何をしている研究室なのかを教えてください。


システムプランニング研究室(以下シスプラ):シスプラは本当に何でもやっている研究室です。
プロダクトとか、インターフェースとか。システム的な観点で取り組むのが特徴です。特に特徴的なのはプロジェクトが多い点です。企業との共同プロジェクトが多く、提案内容は多岐にわたります。あとは留学生も多いため、海外ワークショップもあります。

質問者:システム的観点とはどのようなものでしょうか。

シスプラ:最終アウトプットが全てではなく、それを通して周りがどう動くのかを考えるということなのかな、と感じています。

ある企業に何か提案した時に他の企業がどう絡んでくるかといったビジネスモデル的なことや、企業の内部で社員の人がどう変わっていくかみたいな観点を考えることですかね。

デザインマネージメント研究室(以下マネジ):私達も企業とのプロジェクトをやっています。大学生でデザインを勉強している自分たちなりの感覚を活かして、新しい価値を見つけることを大切にしていると感じます。調査の際も型に捉われず、自分達なりの方法でやろうとしたり。
将来的には会社に入ってインハウスのデザイナーとして働く人が多いのも特徴です。

意匠形態学研究室(以下意匠形態):意匠形態が何をしているか聞かれると答えようがないくらい、何をやっても許される感じですね。

生活の中で何か直感的に思ったことやデザインに関して日頃感じていることが世の中でどういう意味を持つんだろう、とか、自分がどういう体験をしてきたからそう感じるんだろう、とか。何でもできるからこそ、自分がどう物事と向き合うのかをすごく見られている感じがして。
それが意匠形態学研究室の魅力でもあり、辛いところなのかなって思います。

あと、実際に物を作ることを大切にしています。今ゼミが工房で開催されていますが、物づくりに近いところでみんな学び合っているからこそ、アウトプットとして形を作ることの重要性を感じるのではないかと思います。

モビリティーデザイン研究室(以下モビ): 
 
皆、意匠形態みたいな感じで好きなことをやってるイメージがとても強いです。
車やバイクに関わらず、プロダクトデザインしたいとかwebデザインしたいみたいな人もいる。
でも、やっぱり入ってくる人は、車輪が付いているものが作りたいという人が多いですね。基本的にはみんな車が好き。

質問者: お話を聞いていて、シスプラとマネジが似ているように感じたのですが、どんな違いがあるんでしょうか?

シスプラ:シスプラはどっちかというと意匠形態に近いかな。
自分が面白いと感じるデザインをどんどん作っていくような。

マネジ:マネジはどっちかって言うと、客観的に見ても面白いかどうかを考えていると思います。自分の感性も、もちろん大切にしていますけど。
プロジェクトでも「『若者』はこう思ってるよね」みたいな感じで、今ある価値観を捉えて、それをとっかかりに提案することが多いです。

質問者:重きを置くのが主観か客観かが違いなのかもしれませんね。

今、なにしてる?

質問者:それでは、そんな研究室で、皆さんが今何をしているのかを伺ってもいいでしょうか。

意匠形態:私は「箱」の研究をしています。開くとか取り出すとか、まず箱というものを使うプロセスを解析して、それを崩して「プロセス的な大枠は現行の箱の利用方法と一緒でも、今ある箱とは違うもの」というのを今作ろうとしています。
なんて言ったら良いかな。作ろうと思っているものが、これくらいのものなんですけど(両手を広げて大きさを示す)。


質問者:
え、でかい!1メートルぐらいありますか。

意匠形態:まず、ベニヤで球みたいなものを作って、それに粘土をつけて、石膏型を作って……。型の側面にFRPっていうガラス繊維に樹脂を染み込ませたものを塗って固めて。で、型を抜いて……ということをしようとしています。そういう何か本当にわけわかんない(笑)

質問者:球を作る?

意匠形態:そう、球形の箱。
これが、椅子になるというものを作ろうとしていて。「ものを開けて、使う」という箱の使い方を、今一度捉え直したくなって。


昔、日本の人は畳が敷かれただけのほとんど何も置かれていない建築空間に暮らしていました。
そんな空間に箱を持っていき、開いて使うと箱に入った道具や箱自体の機能に合わせて空間が変容するんです。


例えば硯箱(硯と筆が入った箱)。それを任意の場所に持って行って使うと、何もなかったその空間が書斎になります。

じゃあ例えば、箱に載るものが道具ではなく人間自体になったら?
 例えば椅子になったらどうなるだろう? というところからデザインを始めました。


でも、こういう口頭の説明では、やっていることが伝わりきらないですよね。
だからこそ、実際に作って、検証する。

質問者:とてもしっくりきました。
言葉だけでは伝わらないから、やっぱり実際に形を作ることが大切になるんですね。

意匠形態:リアルな体験を伝える手段は形だけではありませんが、先生や研究室のメンバーの特色から、最終成果物に立体が多い面はあります。

モビ:私は車内環境インテリアに重きを置いた研究をしています。
車の中って「将来ああしたい」みたいな、結構深い話になることがありませんか? そんな意味で車内って、ちょっと特別な空間だなって思っているんです。


あとは、普通コミュニケーションを取る時って、対面だったり、並んで喋ったり……顔が見える状態が普通じゃないですか。車の中は前列後列に分かれていて、みんなが同じ方向を向いてコミュニケーションを取ります。そういう意味でも不思議な空間なんですよね。


そんな車内空間について、今回は「親子のコミュニケーション」をより促すようなインテリアとはどういうものだろう。ということを考えたいと思っています。
例えば、家族みんなで遠出をするようなシーンで、家族間でのコミュニケーションの発展が促されるような。
そんな車内環境を考える研究です。

マネジ:私は研究室で、先ほどお話した企業とのプロジェクトにいくつか参加させてもらっています。
卒業研究としては、墨田キャンパスで行なっている統合デザインプロジェクトに参加しています。


『useをplayに』というテーマの下で、参加しているメンバーそれぞれが「実用性」とか、「遊び」について解釈して、それをもとに作品を作ろうとしています。
私の場合は一回やって終わってしまうような体験じゃなくて、ずっと続いていく体験には魅力があるよね、みたいな……そんな考えをベースに置いて進めていく予定です。

質問者:「一回やって終わりではなくその次も」というのは、具体的にはどのような体験ですか?

マネジ:例えるなら、「絵を描く」という体験だと、一回絵を描いてそれで終わり。ではなく「ちょっと下手くそだったから次はこうしてみよう」とか「自分は意外とこういうのが好きかもしれない」のような新しい発見があって、それが次の行動に繋がって何度もくり返していくイメージですかね……。
そんな体験はどうしたら作ることができるのだろうかっていう。
 研究室で卒研に取り組んでいる同期も今、各々のテーマで事例調査を進めています。


シスプラ:シスプラも同じ感じで、研究室としてはプロジェクトに取り組んでいます。



卒研は、統合デザインプロジェクトの枠で取り組んでいます。
(マネージメントのインタビュイーと)同じチームです。テーマである「useをplayに」について、僕の場合だと、「解像度」に注目して研究しています。

4Kとか8Kとかがどんどん出てきたりしていて、解像度の高さで競争し合っている現状ですけど、
自分の感覚としてはその逆で、低解像度のものに結構魅力を感じているので、そこを起点に研究を進めようとしています。



例えば8Kで人を映した映像って、その人の持つ特徴を本当に細かいところまで受け手に伝えますよね。あまりにも解像度が高すぎるコンテンツでは、受け手の解釈の余地が狭まってくる気がして。
一方で、モザイクのかかった映像を観ているは、「この人、こういう人なんじゃないかな」いうのを想像する。
そんな感じで、解像度を下げることで、新しい魅力とか体験が生まれないかなということを、考えています。

質問者:面白いですね。その結果が、意匠展で見られるかもしれないと思うとワクワクしてきます。

なぜこの研究室に決めたのか

質問者:それでは次に、なぜ今いる研究室に入りたいと思ったのをお聞きします。

マネジ:元々、プロダクトやサービスを作るデザイナーになりたくて。
卒業生に目指す働き方をしている方が多かったのが、志望した理由です。プロジェクトも多い研究室だと聞いて、大学外の方と関わるのは勉強になるだろうな、と思ったのもあります。

モビ:俺は小さいとき働く車は好きだったんですけど、常用車はそんなに……って感じだったんです。
だけど大学1年生の時に免許を取ってドライブしたら、なんか運転楽しいなって。
「楽しいから車のデザインにいっちゃおう」ってなりました。
で、車を描くようになって。今に至ります。運転する側の気持ちから始まったので、内装に興味を持ちましたね。

シスプラ:自分の場合は、シスプラとマネジで本当に迷いました。決め手としては、ちょっとグダっとした感じが……あんまり言ったらいけないな(笑)

質問者:自由な社風ですか。

シスプラ:そう(笑)
自由な社風が好きだから。
それと研究室訪問とか行った時に、先輩が誰でも集まってきて相談に乗ってくれる雰囲気もあって。
「ちょっとこれどうですか」なんてポートフォリオを置いたら、いろんな人がどんどん集まってきて、みんなからガヤガヤ言われる感じになってくる。
ぬるっと集まってデザインするみたいな。そんなスタイルが個人的にいいなって思って選びました。

意匠形態:自分としてはやっぱり自由にできるようなイメージが良かったりとか、先生が物とのかかわり合いみたいなところをすごく真剣に考えられている方だと授業の中で実感してそんな先生から学びたいと思ったからですね。

研究室をひとことで表すと?

質問者:事前アンケートで「自分の研究室を一言で表すと?」という質問をしました。意匠形態学研究室は『形がないものに形を与える研究室』と回答されていました。これまでのお話を聞いていてまさにそうだなぁと。

意匠形態:やっぱりそれが何か研究の根幹にあるような気がしたので。

質問者:システムプランニング研究室は『パクチー』

シスプラ:研究室紹介の時に先生が「パクチーみたいな研究室です」とおっしゃっていたんですよ。
どこもそうかもしれませんけど、特に癖が強い人が集まってるんじゃないかな。研究室紹介のpdfにも「これを気にしないひとはこの研究室に向いています」ってチェックリストがあったりして。

質問者:マネージメントの方は『ストイック』って書いてありますね。

マネジ:はい。研究室に入ってから、みんなストイックだなぁと思ったのでそのまま書いちゃいました。例えば、1つよさそうなアイデアが出ても「まだ他にあるんじゃないか」とか、「もっと面白くできるんじゃないか」って凄い粘り強く考えている先輩が多いイメージがあったから……。
夜遅くまで残って作業をする人もいるし、いつ行っても誰かいる、みたいな(笑)

質問者:では、最後ですね。モビリティーデザイン、『男しかいません』

モビ:本当に男しかいないので(笑)
エンジンの規格にロマンを感じて盛り上がる、その雰囲気が俺は好きだけど、
そんな人しかいません。
去年までは1人女性がいたんですけど、卒業してしまったからもう男しかいない。今年はどうなるかな。

最後に

質問者:ありがとうございます。
もうそろそろお時間になりましたので、最後にこれからの意気込みをお聞きしてもよろしいでしょうか。

マネジ:本当に経験豊富な先生と先輩がいらっしゃる研究室で。そこで勉強できていることが楽しいです。

その成果が意匠展で出せたら、いいな……笑。

シスプラ:今年は、例年の「意匠展」っていう形の中に、総合プロジェクトが入ってくるため、今までよりも会場となっている墨田という地域とのつながりが感じられる意匠展になりそうです。

意匠形態:やっぱり、モノづくりに近いところで研究していることを活かして、魅力的なアウトプットが作りたいです。

モビ:研究も、意匠展も、今しかできないことだし、とにかく楽しみたいです。
楽しめば、正直、失敗しようと成功しようと、良い思い出になると思うし、何かしら自分の糧にはなると思うので。
楽しんで、ふざけながらやっていきたい。遊び心を忘れずにいたいなと思います。

質問者:本日は、システムプランニング研究室、デザインマネジメント研究室、意匠形態学研究室、モビリティデザイン研究室からお越しいただきました。ありがとうございました。

意匠展2023 概要
日程:2023年3月10日〜12日
場所:千葉大学墨田キャンパス
住所:東京都墨田区文花1丁目19-1

意匠展サイト
【HP】http://ishouten.com
【Twitter】https://twitter.com/ishoten2023
【Instagram】https://www.instagram.com/ishoten_2023/?hl=ja

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