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【研究室座談会04】人間生活工学/人間情報科学/材料計画

今回は人間生活工学研究室人間情報科学研究室材料計画研究室の3名にお話を伺いました。(注:本記事は6月上旬に取材を行っており、現在は研究テーマ等が変化している可能性があります。)

普段の活動について


質問者:よろしくお願いします。はじめに、この座談会ですが、このグループは比較的「研究」色が強い研究室を集めています。自分の研究室は何をしているのか、ざっくりと教えていただければ嬉しいです。

人間生活工学研究室(以下人工):例えば、ペットボトルを開ける時の手の筋電図を測ることによって、その手にどれだけ負荷がかかっているのかを調べることができるんですが、それをもとに、どんな形状のペットボトルが一番開けやすい形なのかを調べたりしています。生体情報に基づいた研究をしています。

材料計画研究室(以下材料):材料計画研究室は、名前の通り材料の研究が中心なんですが、サービスの研究をしてる人や、プログラミングとか使って研究してる人もいますね。例えば先輩は、製品をデザインする際のスケッチをAIに任せてプログラミングで作るような研究をしていました。

質問者:材料というテーマにとらわれてなくてもいいんですね。

材料:最終的には製品を作る人もいますが、研究の内容としては色々作って比べたり、実験したりして、何が一番いいのかを研究してる研究室です。

質問者:試行錯誤でベストな形を探す研究というのは人工と似ているかもしれませんね。人間情報科学研究室はいかがですか。

人間情報科学研究室(以下人情):人間情報科学という名前の通り、人間が外界から受ける刺激や、それを受け取る感覚器についての研究など、脳で情報が処理されるプロセスについて科学的に解明する研究をしています。ほとんどの人は、決めたテーマについて、実験で新しいことを明らかにするまでを卒業研究としています。だからすごく客観的で科学的な物の見方が要求されていて、基本的に研究の方向性を決める時は先行研究ありきです。

質問者:なるほど、まず先行研究を調べることが肝心なのですね。

今、何してる?


質問者:次に、皆さんのそれぞれの研究について伺いたいと思います。今研究室で取り組んでいることが、最終的に意匠展で展示するものに繋がっていくのかと思いますが、現段階で取り組んでいることを教えていただきたいです。

人工:簡単に言うと筋肉の動きを可視化するデバイスの開発です。
通常、筋肉の動きを測る機械でEMG=筋電図を測ります。でも、EMGを使うと電極を3つ付けないといけなくて、運動時などに測定するのが大変なんです。そこでMMG(メカノミオグラフィ)っていうものがあるんですけど、これは筋肉の動きによる身体の音を検出するセンサーで。その MMGセンサーを使うメリットは、1つの電極だけで測れることと、電子回路を作ることで無線でも測ることができるので、運動中の測定もしやすいことです。僕の場合は、力が入った筋肉から出る音をコンデンサーマイクで拾って、それをLEDの明るさによって表すっていう装置の開発を今しています。最終的にはそれをビジュアルで、例えば腕の図の中で一番動いた筋肉の部分を赤く表示したりして、表現したいなと考えています。
最終的には実際に使えるデバイスの開発まで行きたいけど、卒業論文ではそこまでは行けないかな。修士論文までの3年間で継続する研究みたいな感じです。

質問者:すごく長期で考えているんですね。材料はいかがですか。

材料:私がやっているのはファブリック系です。
伸縮性のない生地と伸縮性のある素材、2つを貼り合わせて手を離した時に生地がクシャってなるのが、新しい表現として使えないかなという研究をしています。色々試作していきながら、バッグのような入れものを作ろうかなと思ってます。
はっきりした道は決めずに、やってみたらこんなことが見つかったから、じゃあ次はこれを試してみよう、というような感じで進めてます。

質問者:じゃあ今から試作を始めてるんですね。
ボツになっちゃったものとか具体的に何かありますか。

材料:例えば、生地にゴムひもを取り付けたものは、今ある既存のものとそんなに変わらなかったですね。作ってみたけど、気付きも何もなかったみたいなこともあります(笑)

質問者:人情はいかがですか。

人情:今自分が調べてるのは時間の感じ方に関する研究です。この場合の時間の知覚っていうのは、1秒前後の短い時間の感じ方についてなんですけど、時間の感じ方って結構その直前に見ていたものとか、今見ているものとか、あとは光なのか音なのかなどによって、結構ブレがあるんですよ。例えば直前に何十回も2秒くらいのものを見せられた後に1秒のものを見せられると、1秒が1秒よりも短く感じたり、逆に3秒は3秒より長く感じたり。時間の感じ方って色んなものに影響されるんですけど、それについて何か研究できたらいいなと思ってます。例えばですけど、スマホアプリのロード画面とかが少しでも短く感じられるような工夫ができたら面白そうだなって。実際に自分がそういう応用まで作るつもりはないのですが、そういうのにつながったら面白いなと思ってます。

質問者:面白い!ロード時間長い時に嫌だなとは思いますが、それを時間の感じ方の研究から工夫できそうと思うのがすごいですね。

材料:他のプロダクト系の研究室は結構みんな見栄えするものを作るイメージだけど、その根底として大事なのって私達の研究室で扱ってる内容だなって思います。自分で言うのもアレだけど(笑)製品やサービスを作るにも、こういう研究がないと理論づけができないじゃないですか。研究自体は結構お固いイメージだけど、今あった時間知覚の話みたいに、みんなが疑問を持ったことがあるような身近なテーマは多いなって思ってて。そういう研究ができるのが面白いなと個人的にとても感じます。

質問者:そうですね、難しそうな研究でも、そのような背景を聞くとなんだか親近感が湧きます。皆さんの研究の成果を意匠展で見られるのを楽しみにしています。

自分の研究室を一言で


質問者:これはちょっとお遊び的な質問ですが、「自分の研究室を一言で」表してもおうと思います。

人工:人工は「生理的指標に根拠があるデザイン」みたいな感じかな?
美しいと思ったからいい、という尺度ではなくて、なぜそれが美しく見えるのかを調べるんです。例えばある色を見て、それに対して脳がこう反応したから美しく見えたんだ、というような根拠を突き詰めています。

質問者:「美しい」などは主観的な感覚というイメージがありますが、突き詰めればそれにも根拠があるのですね。材料はいかがですか。

材料:これは雰囲気の話ですけど、「アットホーム」ですね。
先生が食材持ってきてくれたり、家で作ったキュウリ持って来て「食べたい人食べて」ってなったり。あと夏季ゼミっていうのがあって、ゼミって名前ではあるけど、みんなで旅行に行ったりとか。
ゼミは大変ですが、それでも夜遅くに研究室で音楽流しながらみんなで作業したり。

質問者:まさにアットホームですね。エピソードだけで雰囲気が伝わって来ます。人情はどうでしょうか。

人情:人情は「地道に泥臭く人間について学ぶ研究室」です。
ほんと根気よく粘り強く研究してようやく何か成果が得られるって感じなので。雰囲気で言うと、材料のようなホーム感はあまりないかもしれません。個人個人で努力する感じの研究室ですね。だからちょっと話聞いてて羨ましいなあと(笑)

人工:思うよね(笑)

人情:でも、先輩が優しくて、何でも相談にのってくれて、それはありがたいなと感じています。

質問者:どの研究室も雰囲気は違えど、先輩は頼れる存在ですよね。

材料:本当に。先輩さまさまです(笑)

最後に


質問者:最後に意匠展に向けて意気込みをお願いします。

人工:自分たちの代は、コロナの影響でみんなでやる行事があまりできませんでした。終わり良ければすべて良しではないけど、少しでも思い出に残るような活動になれば良いなと思っています。

材料:私も、デザインコースである以上は見栄えの良さなども大切ではありますが、中高の文化祭みたいな行事のような感じで、みんなで頑張ることを大切にしたいな。最後にみんなで満足して終われたらいいなと思っています。

質問者:そうですね。みんなで準備を進める中で、もう既に私たちの学年の個性のようなものを感じています。それが良く出た意匠展にしたいですね。
人情はいかがですか。

人情:人情の研究してることをよく知らない人にとっても、分かりやすくて面白そうって思ってもらえるような研究成果を出したいです。

材料:名前で身構えちゃうけど、実際ちゃんと話聞いてるとすごく面白そうだもんね。

質問者:やって来たことをちゃんと伝えられるよう頑張りましょうね。
本日は、人間生活工学研究室、人間情報科学研究室、材料計画研究室からお越しいただきました。ありがとうございました。

意匠展2023 概要
日程:2023年3月10日〜12日
場所:千葉大学墨田キャンパス
住所:東京都墨田区文花1丁目19-1

意匠展サイト
【HP】http://ishouten.com
【Twitter】https://twitter.com/ishoten2023
【Instagram】https://www.instagram.com/ishoten_2023/?hl=ja

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