経営指標と投資指標

IR担当者として投資指標(PERやPBS等)についてのコメントはしない、もしくは控えることにしていたと思う。若いころ上司やIR支援会社からそのような助言があった記憶がある。経営指標(粗利率、OPマージン、ROA、ROE、Equity Ratio等)は、経営として意識しているものについて公式回答を用意し、意識していない指標については財経パーソンとして良識的なコメントで済ませていた。EPSや配当金、ROEは投資指標且つ経営指標でもあるので、投資家とのデスカッションの触媒となる指標だ。

スタートアップの経営者がVCからの資金調達を目的に自社をバリエーションしピッチやセミナー等で「PSR(PERの代替指標)●倍は妥当でしょう」なんて発言しているのを耳にするとモヤモヤした気持ちになる。引受証券会社が介在するブックビルディングでの値決めが奥ゆかしく思えてくる。自分が時代遅れの人間になったようにも感じるが、いざ当事者になれば今風のバリエーションで武装して調達に励む自信はある。

未公開会社に出資したり買収するとき、「まずば純資産価格で打診してみてください」と交渉担当者に助言していた。相手が「出資させてやるからありがたく思え!」くらいの強い立場だとマズイことになるが、資金を切に求めている状況もあるのでカードの出し方としては順当なはずだ。純資産ベースでプライシングする場合は、バランスシートを入念にチェックする。時価会計をちゃんと適用できていれば、それが「時価」なのだから。

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