IRの実務書

IRに関する実務書をamazonで検索してもあまり出てこない。会計の実務書とは対照的だ。そんな状況の中で、機関投資家が投資先企業のことをどのように考えているかを知ることができる良書を紹介したい。
中小型投信を運用するファンドマネジャーが書いた「ずば抜けた結果の投資のプロだけが気づいていること(苦瓜達郎 著/幻冬舎新書)」は発行体に対する敬意や愛情を感じる一冊だ。私も2度ほど苦瓜氏と1on1ミーティングをする機会があったことを覚えている。会社四季報を片手に会議室に現れたのが何故か印象に残っている。

「経営者との対話で何を見ているのか」という章で、①視野の広さ、②実直さ、③周囲から愛される人であるか、と述べられていて誰もが期待する経営者像であることにホッとした。
サイバーエージェントが運用するメディア「新R25」に僕は君の「熱」に投資しよう(ダイヤモンド社)の著者である佐俣アンリ氏(ベンチャーキャピタリスト)へのインタビュー記事にも「事業を伸ばし続けるためには人格者であったほうが、はるかにお得」「社外の人に協力してもらったり、ユーザーに納得・賛同してもらってサービスを使い続けてもらうには、必然的に起業家は良い人にならざるを得ない」とあった。IR担当者がボスの人格や資質を云々することはできないが、伝えるべきネタの一つであることがよく分かる。

同じ章に④成熟した企業の場合は「根っこが腐っていなければいい」とありハッとした。独立系ファンドのトップが社長取材に来て「私は企業の根っこが見たいのですよ!」と熱っぽくディスカッションに臨んでいるシーンを思い出した。プロフェッショナルの洞察は深い。対応策はあるか。「沿革」を丁寧に整理しておくことで根っこのエキスを多少は滲み出させることができるのかもしれない。


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