人魚姫慟哭す

クチナシの薫る雨が降ってきたらどうしましょう
私はもう目を背けることしかできなくて
いつの間にこんなものを得たのですか
少しも欲しくなかった
海水を求めてしまうのは
どうしても私の性であるので
海水をいつでも下さい
どうしても私に必要なので
体からどうしても鱗が取れない
そんな夢ばかり見るのです
海からどうしても上がって往けない
そんな夢ばかり見るのです
砕けている波を手で拾って
片口鰯の群れも豹紋蛸の毒も
全部一緒に浮かべたら
どんなに綺麗な星空になるでしょう
そのことだけをずっと考えて過ごしていたい
暑いのに冷たいこの夏の始まりを

真珠を酷くばら撒きながら

#詩 #散文詩 #文章

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?