腋窩多汗症治療にエクロック・ミラドライを加えてアップデート!

私たちは暑い時や緊張した時、辛い物を食べた時などに汗をかきますよね。特に、脇汗による汗じみやにおいが気になる方もいるでしょう。最近、腋窩多汗症の治療法が増えたことをご存知でしょうか?この記事では外用薬であるエクロック®ゲル(一般名:ソフピロニウム臭化物)やラピフォート®ワイプ(一般名:グリコピロニウムトシル酸塩水和物)、マイクロ波治療器のミラドライ®システム(以下ミラドライ)を含め、腋窩多汗症のそれぞれの治療法の特徴を踏まえながら紹介します。

神経終末からアセチルコリンが分泌され受容体に結合すると発汗

はじめに、発汗の仕組みを確認しましょう。脳から発汗の命令がでると交感神経を介して全身に伝わり、交感神経終末からアセチルコリン(Ach)を分泌します。Achがエクリン汗腺の受容体に結合することで、命令が伝わり発汗する仕組みです[1]。

腋窩多汗症治療の主流は、塩化アルミニウム外用とボツリヌス注射

2015年版になりますが「原発性局所多汗症診療ガイドライン」の「原発性腋窩多汗症における診療アルゴリズム」で、治療法を確認しましょう。治療はまず塩化アルミニウム外用です。塩化アルミニウム外用で変わらない場合は、ボトックス(一般名:A型ボツリヌス毒素)注射をおこないます。それでも変わらない場合は、両者を併用するのが基本的な治療法です。

また、これらの治療がおこなえない症例や効果が出ない症例には、抗コリン薬内服や交感神経遮断術を考慮してもよいとされます[2]。

腋窩多汗症の各治療の特徴を理解しよう

塩化アルミニウム外用
塩化アルミニウムは、汗管を閉塞するという作用機序が考えられています。メリットはどの年代にも手軽に開始できること。
デメリットは以下の点です。

  • 毎日塗布が必要

  • 副作用に皮膚炎がある

  • 保険適用がない

  • 院内製剤であるため、処方できる施設が限られる

A型ボツリヌス毒素注射
A型ボツリヌス毒素の作用機序は、神経終末からのAch放出を阻害します。メリットは1回の注射で4~9か月持続することです。デメリットは注射時の痛みや、費用が3割負担で2万円代とやや高いことがあげられます。使用時の注意点は、挙児希望時に男性は3か月、女性は2回の月経を経るまで避妊をしなければなりません。また、保険適用は重度の原発性腋窩多汗症の基準を満たす場合に限られます。

参考として、A型ボツリヌス毒素注射は美容クリニックで自費診療でもおこなわれています。保険との違いは、保険では通常両側で100単位を注射しますが、自費診療ではA型ボツリヌス毒素の薬剤や投与量が異なることです。そのため、値段も変わります。

<抗コリン薬内服>
多汗症に保険適用がある内服薬は、プロバンサイン(一般名:プロパンテリン臭化物)のみです。抗コリン薬であるため、緑内障や前立腺肥大、心疾患などを持つ場合には、処方に注意が必要です。また、内服後は自動車の運転をしないように指導する必要があります。

<交感神経遮断術>
交感神経遮断術のメリットは、効果が長期間持続することです。
一方で、デメリットとして以下の点があげられます。

  • 副作用に代償性発汗がある

  • 瘢痕ができる

  • 入院が必要

代償性発汗とは、体幹や下肢からコントロール不良の発汗を生じることです。もし、代償性発汗を生じたとしても有効な治療法はありません。そのため、交感神経遮断術は腋窩多汗症が重症かつ強い希望時に、十分な説明と理解を得た上でおこなうべきです。

エクロック®ゲルとラピフォート®ワイプは保険適用で処方可能

外用薬のメリットはすぐに試せることですが、これまで主流であった塩化アルミニウム外用は保険適用がなく、院内製剤となるため処方できる施設が限られていました。しかし、保険適用の抗コリン外用薬であるエクロック®ゲルが2020年に、ラピフォート®ワイプが2022年5月に発売され、以前より処方しやすくなりました。

両剤の作用機序は、Achが汗腺受容体に結合することを阻害して、発汗を抑制します。剤形はゲル状とワイプ状で違います。
使用時の注意点は抗コリン作用をもつため、閉塞隅角緑内障や前立腺肥大による排尿障害がある場合は禁忌です。
デメリットとして、以下の点があげられます。

  • 毎日塗布することが手間

  • 薬剤が手についた状態で目を触ることを避ける必要があり、小児ではやや使いにくい

  • 副作用に皮膚症状がある

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