意外に種類がある!鼻のQoLを改善する外科手術について知ろう!

指導医T:おはようR君。
研修医R:T先生おはようございます、よろしくお願いします。今日は鼻の手術が3件ですね。
T:そうだね。2020年改訂されたアレルギー性鼻炎ガイドラインでは、外科的治療に関する記載が増えて、保存的治療で効果が不十分な場合は検討を推奨されるようになったんだ[1]。以前は鼻閉の改善効果だけ注目されていたけど、鼻汁症状を改善させる術式もあるんだよ。
R:私も花粉症なので興味があります!
T:さて、それぞれどんな患者さんなのか簡単に症例を提示してくれる?

鼻腔の断面図と側面図を添える(こちらで図を作成)

局所麻酔で施行可能な下鼻甲介粘膜焼灼術

R:1件目はAさん30歳女性、スギ花粉症で、春になると鼻汁・鼻閉で悩むようです。
T:季節性アレルギー性鼻炎に対する、下鼻甲介粘膜焼灼術だね。当院ではCO2レーザーによる焼灼をおこなっているんだ。他にも、トリクロロ酢酸を用いた化学焼灼という方法もあるよ。この術式では、下鼻甲介表面粘膜を変性させることでアレルゲンに対する反応を減少させ、鼻粘膜の腫脹を軽減させるんだ[2]。
R:効果が1年しか持続しないというのは本当ですか?
T:そうとも限らないね。7年以上も効果が継続することもあるといわれているよ[3]。
R:局所麻酔で入院せずに手術できるのは、大きな利点ですね!
T:ただし、花粉の飛散期内ではアレルギーによる粘膜浮腫と鼻汁によって治療効果不十分となることが考えられるので、施行は推奨されていないよ。また、表面の焼灼は繰り返すと、徐々に効かなくなることもあるんだ。

鼻中隔矯正術と粘膜下下鼻甲介骨切除術は物理的に鼻閉を改善する

R:2件目はBさん25歳男性、ハウスダストによる通年性アレルギー性鼻炎があり、中学生からほとんど鼻で呼吸したことがないようです。いびきもあって、ごくたまに睡眠時無呼吸を指摘されることもあるそうです。
T:Bさんは、鼻中隔湾曲症と肥厚性鼻炎による鼻閉がメインの症状だね。鼻中隔矯正術と粘膜下下鼻甲介骨切除術を予定しているよ
R:どちらも粘膜を温存して、軟骨や骨を除去する手術ですよね。
T:鼻中隔湾曲症は、鼻中隔軟骨とその下の鋤骨(じょこつ)との接合部で鼻中隔が左右どちらかに突出することによって起きるよ。鼻中隔矯正術では、粘膜の切開は最小限のまま、粘膜下に鼻中隔の曲がりと骨の厚みを物理的に除去することで鼻閉を改善できるんだ。鼻閉はいびきや睡眠時無呼吸を悪化させるし、もしCPAP治療するときに高度の鼻閉があると、うまく圧がかけられないこともあるね。
R:鼻閉を改善させれば、いびきや無呼吸も改善する可能性があるのですね!下鼻甲介へのアプローチには種類があるのですか?
T:以前主流だったのは、下鼻甲介粘膜を切除減量する下鼻甲介切除術だね。けど、粘膜の創面にかさぶたが長期間付着すること、Empty nose syndromeを起こすことがあって施行数は減少しているんじゃないかな。他の方法として、粘膜下に粘膜の減量をおこなう粘膜下下鼻甲介粘膜切除術と、骨を除去する粘膜下下鼻甲介骨切除術だね。私の場合は粘膜を可及的に温存するため、後者の粘膜下下鼻甲介骨切除術を主に選択するようにしているんだ。
R:Empty nose syndromeは勉強しました。下鼻甲介の状態が変化することにより、鼻閉感、鼻の乾燥感などの症状が起こる病態のことですね[5]。
T:よく勉強しているね!Empty nose syndromeは一度起こってしまうと、ほぼ不可逆なんだ。粘膜下下鼻甲介骨切除術は手術時間がのびるけど、この合併症を防ぐと考えられているね[6]。
R:難治性の合併症を減らせるなら積極的に選択したいですね。

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