妊娠線の予防に保湿クリームなどは本当に効果があるの?
妊娠線予防クリームの製品や広告を見たことはありませんか?妊娠線はずっと残るため、好ましくないと思う方もいますよね。
妊娠線の予防や治療としてさまざまな方法がおこなわれていますが、実際に効果はあるのでしょうか?今回は妊娠線の危険因子や予防、治療について解説します。
皮膚線条は、機械的ストレスやホルモンなど多因子性と考えられている
下腹部や大腿部にできるわずかに陥凹した線状の皮膚萎縮のことを、伸展性皮膚線条、または、線状皮膚萎縮症(以後、皮膚線条)といいます。妊娠期にできるものは、妊娠線条や妊娠線と呼ばれ、初期は淡紅色ですが、次第に灰白色となり、細かいシワ様となるためとても気になりますよね[1]。
皮膚線条の危険因子は多く同定されていますが、しばしば矛盾する点もあり、正確な病態は未だ不明です。主な危険因子を以下に示します。
機械的ストレス:体重増加、妊娠中、成長期などに皮膚の過伸展する部位に生じる
※非肥満や食欲不振症の患者でも発症する場合あり
ホルモン:思春期や妊娠、肥満、コルチコステロイドの使用、クッシング症候群など、ステロイド過剰の状態で見られる
遺伝的要因
その他多くの危険因子が報告されており、病態生理は多因子性と考えられています[1,2]。
外用剤による妊娠線の発症予防効果は明らかではない
妊娠線予防のための外用剤や広告を見かけますが、妊婦はどう考えているでしょうか?
山口らが実施した、妊娠16~19週の妊婦へのアンケート結果を以下に示します。
皮膚を保湿することで妊娠線を予防できると回答:91.9%
妊娠線予防行動(クリーム塗布やマッサージ)をおこなっている:61.6%
アンケートによると、多くの妊婦は、保湿によって妊娠線を予防できると考えており、化粧水やクリームの塗布、マッサージなどをおこなっていました[3]。
では実際に、妊娠線の予防効果はあるのでしょうか?外用剤と妊娠線の予防に関する論文を紹介します。
コクランレビューでは、800人を対象とした6つの試験が選択され、以下の製剤に関して、妊娠線の発症を予防できなかったと報告しています[4]。
オリーブオイル
ココアバター
Trofolastin:Centella asiatica(別名:ツボクサ、ゴツコラ)抽出液を含むクリーム
※Centella asiaticaは、セリ科の多年草でハーブの一種
AlphastriaとVerum:ヒアルロン酸などを含むクリーム
※すべての製剤がビタミンEを含む
有効の可能性が示唆されるものとして、Centella asiatica(ビタミンE、コラーゲン-エラスチン加水分解物も含む)クリームがあります。80人の妊婦が対象で、優位に妊娠線の発症を減らし、特に思春期に皮膚線条の既往がある妊婦では有効であったと報告しています[2,5]。
残念ながら、現状では、外用剤による妊娠線予防に関して、明らかな予防効果を示す高品質のエビデンスはありません[2,3,4,6]。妊娠線の予防はQOLに影響するため、有効な方法が早く確立されることが期待されますね。
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