使用頻度は低いが心不全の予後を改善するイバブラジンを循環器内科専門医が解説!

左心室機能が35%以下に低下した心不全(Heart failure with reduced ejection fraction: HFrEF)の標準治療薬といえば、以下の3つが有名です。
 
・βブロッカー
・RAAS阻害薬
・ミネラルコルチコイド拮抗薬
 
実は心不全のガイドラインでHFrEFに対してClass IIaであるにもかかわらず、あまり使われていない薬があります。それは「イバブラジン」という薬で、商品名は「コララン」です。症例からイバブラジンの効果や適応をみていきましょう。
 
<症例>
60代の男性。糖尿病とHFrEFで外来に通院中。内服薬は以下の通りです。

・アーチスト5mg
・レニベース5mg
・ラシックス20mg
・アルダクトン25mg
​​・フォシーガ10mg

外来で安静時の血圧が100/60、脈拍数は88bpm。動くと息切れがあります。

イバブラジンは血圧も心収縮力も下げずに心拍数だけ下げる

症例には、心不全によると思われる症状があります。しかし、血圧が低いため、薬剤の増量がしにくい状況です。

心不全患者の心拍数は60-70bpmがよい?

心不全患者の心拍数は、どれくらいが最適なのでしょう?心拍数は、心不全患者の予後と密接にかかわっています。心拍数が速すぎると、心筋酸素消費量が増えます。また心室の拡張時間が短縮されるために、心室に血液が十分に充満できません。結果、心拍出量が低下します。

しかし心拍数が遅すぎると、1回の心拍出量は増えますが、心臓が血液を送り出す回数が減ります。そして、心拍出量が低下。統一された見解はありませんが、安静時心拍数が大体60弱から70程度であると予後がよさそうです[1]。

イバブラジンの作用機序と特徴を知ろう

イバブラジンは洞結節に作用して、心拍数のみを低下させる特徴がある薬です。βブロッカーも心拍数を下げますが、同時に心臓の収縮力や血圧も下げます。イバブラジンは、心臓の収縮力にも血圧にもまったく影響しません。用量依存性の薬剤であり、増量すると心拍数の低下効果も強く出現します。糸球体濾過量が15ml/min以上であれば、用量の調節は不要です。

イバブラジンは心不全におけるすべてのタイプに効果があるのか?

イバブラジンは、HFrEFにだけ有効性が示されている薬剤です。左心室機能が保たれた心不全に対する研究も報告されています。しかし効果は否定的です。現状、心不全に対する適応はありません[2]。現在ガイドラインで、イバブラジンの適用となる症例の特徴は以下の5つです[3]。

・HFrEFである
・βブロッカーを含む標準治療をうけている、もしくはβブロッカーが低血圧やアレルギーで内服できない
・標準治療をうけているが、心拍数が75bpm以上
・洞調律である
・症候性である

イバブラジンによる心拍数と臨床への効果は?

イバブラジンの効果をSHIFT試験のデータから紹介します[3]。SHIFT試験では、標準治療が導入されており有症状のHFrEFを、プラセボとイバブラジンにランダムに振り分けました。イバブラジンの通常用量は1日、5〜15mgの分2です。SHIFT試験では大体15bpm程度、心拍数を減少させました。イバブラジン投与群は、心不全入院のリスクが26%低下しましたが、心臓死によるリスクはプラセボ群と比較して同等の結果です。

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