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[読書ログ]6月に読んだ絵本2冊ー小川未明、佐野洋子ー

今回は日本人作家2名の2冊の読書ログを残す。

「月夜とめがね」

小川未明 作
高橋和枝 絵 
出版社: あすなろ書房

あらすじ

月のきれいな春の夜、おばあさんがひとり、針仕事をしていると、眼鏡売りがやってきて、良く見える眼鏡を売ってくれる。
その後、また夜更けに少女がやってきて、怪我をしたので手当をしてほしいと訪ねてくる。眼鏡を使って、その少女を見てみると、少女は蝶だった。
いっしょに庭に出ると、少女はいつの間にかいなくなっていた、というお話。

感想

「月夜とめがね」は、1922年「赤い鳥」に掲載された作品だ。ちょうど時代の転換期であり、大正浪漫の時代である。
 
しっとりと憂いを帯びたような、たおやかな文体で丁寧に描かれている。この滑らかさが小川未明だなと思う。
そして内容も、大正浪漫の精神をめいっぱいに詰め込んだ、少女のための御伽噺、という雰囲気がある。
 
読後感も、幻想的で、まるで夢をみたような良い心地がする。この感覚が好きだと思う人は多いだろうが、現代の子どもが読むのなら、どう捉えていいのか分からない難しさはあると思う。
  
発表当時は、まだまだ家父長制の時代であり、家から家へ嫁ぐという、家というものが非常に重要な意味を持っていた時代だった。だからこそ、少女たちは、内ではなく、外の世界に憧れを抱くようになる。
ふわりと漂う蝶というモチーフと、いつの間にかどこかへ行って消えてしまうという動きは、外の世界へ憧れた当時の少女たちの心に共感しやすいものだったのではないか。

この幻想的世界観を、単純に現代の絵本として、ストーリー構成や、文体などを評価するのは難しい。
小川未明作品は、小川未明作品として、読み、味わうというのが適当な気がする。その点で言えば、中高生の現代文等で触れるか、大学で知るのが、味わい深く読める作品なのではないかと思った。
 

「わたしのぼうし」

作・絵: 佐野 洋子
出版社: ポプラ社

あらすじ

女の子とお兄さんが帽子を被っている。ふたりは帽子を気に入って、あちこち行くところで帽子を被るが、あるとき、女の子の帽子が風に飛ばされてなくなってしまう。両親は新しい帽子を買ってくれたが、女の子は被りたがらない。母親は何度も帽子をかぶせるが、わたしの帽子じゃないと言って、なかなか被らない女の子の話。

感想

佐野洋子さんの作品。さすがとしか言いようのない内容。間違いない。
佐野洋子さんの絵本は、人にあげるのに最適だといつも思う。どの作品も、こころがキュッとするような、くすぐったいような、はっとするような、やさしいような、クスッとするような、そんないっぱいが詰まった本。
 
本書は、大切なものは替えがきかないというのがテーマだろうと思う。
汚れていて、真っ白できれいじゃないけれど、気に入っていた自分のただひとつの帽子。
わたしにも小さい頃に同じような気持ちになったことはあるし、誰しもある機微な感情を丁寧に掬い取っているからこそ、これだけ高い評価を得て、今も読み継がれているのだろうと思う。



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