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[読書ログ]タイトルに「きつね」が入っている絵本5冊

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さて、今回はきつねが出てくる話をかくために、きつねが登場する絵本・童話を10冊読んだ。それにしてもきつねが出てくる絵本は無数にある。”化ける”というメルヘンさを創作に使いやすいこと、身近な存在として、そして動物という子どもにとって親近感があるかわいらしい”キャラクター”として使いやすいことはあると思う。

まずは5冊の読書ログを。

※以下は個人的な読書感想文的な何かです。
あらすじは省略していますが、
ネタバレもありますので、気にならない方だけどうぞ。

きつね

作:新美南吉 絵:鎌田暢子

大好きな新美南吉の作品。
文庫で読んだことがあったが、絵本では初めて。鎌田さんの絵の表現の仕方で、やさしい包容力を感じる。
対象年齢は小学校初級以上、とあるが、本当だろうか、と思った。
この面白さを感じられるのは、小学校中学年以上の気がする。

きつねは登場しない。ただ、小さい頃はなんだかんだ迷信みたいなものを信じやすい時期っていうのがあって、それをきつねとかけてうまく表現されている。

自分にも、貧乏草と呼んでいたハルジオンに触れるとびんぼうになるとか、救急車のサイレンが聞こえたら親指をかくさないと親の死に目に会えないとか、変に信じていた時期があった。今もちょっとある。

この作品の面白さは、後半の文六ちゃんとお母さんの会話シーン。
甘えん坊と不安感からお母さんになんでも質問して、お母さんはそれに丁寧に答えていく。会話には文六ちゃんへの愛があり、文六ちゃんからお母さんへの愛も感じる。
これにグッとくるのは、大人だろう。
ただ、子どもも読み聞かせされたら安心できる描写だ。

それだけではない。冒頭の夜道を歩くシーンや、お祭りのシーンは楽しさと面白さと不気味さが相まって、読むものをひきつける。

本当に見事。


ちょっとまって、きつねさん!


作:カトリーン・シェーラー
訳:関口裕昭

絵がすてきだったのと、海外作家が書いたきつねを知りたくてセレクト。
きつねがうさぎを食べようとするけれど、うさぎが毎度「ちょっと待って!」といって何かを要求してくる流れ。最終的にきつねが眠ってしまって、うさぎ家族はすあなをふさいで安心してねむりました、というおはなし。

設定が不思議でなかなか理解できなかった。

だれもいないさびしいよるのことでした。
ここではきつねとうさぎがであうと
かならずおやすみなさいをいうやくそくです。
そんなばしょでまいごになったうさぎのぼうやが、ひとりぼっちですわっていました。
そこにきつねがひたひたとしのびよってきます。
きつねがおおきなくちをガバッとあけると、
「ちょっと、まって!」
うさぎのぼうやはさけびました。
「しってるよね、ここはきつねとうさぎがおやすみなさいをいうばしょだってことを?」

本文より引用

「きつねとうさぎがであうと かならずおやすみなさいをいうやくそく」
これがよく分からない。
きつねとうさぎの長老がそれぞれ会議をして、食事禁止条約を結んだ中立の場所、というのならわかる。

2009年の毎日新聞読書感想文低学年の課題図書、というから、おそらく「約束」というキーワードか、小さいものが大きいものに知恵で対処するという流れから、感想文を書くようなおはなしなんだろうと思うが、設定の説明の少なさが気になった。

きつねはうさぎを食べようとするが、すなおでユーモラスに描かれている。
このあたりは、童話で出てくる、おおかみと同じようなキャラクター設定。


ひとりだちするきたきつねのこども


作・絵:手島圭三郎

「いきるよろこび」シリーズ。
きたきつねのこどもの独り立ちの様子を描いた、きたきつねの絵本を多数描いている手島さんの作品。

こんなにリアルに、一生懸命生きる動物を物語として描いてしまうなら、これから、きたきつねの絵本を描こうとしたら、それ相応の覚悟をもってしか描けないんじゃないか、そんな気持ちになる。

きたきつねは、こどもに一人で生きていくためにやさしく狩りの仕方などを教えるが、巣立ちの時がきたら態度を一変させて激しく蹴ったり噛んだりして追い払うという。
子育てが終わるときつねは単独行動なので、基本的に一人で生きていかなければならない。
このあたりの背景も踏まえた描写もいい。

おやこのわかれのひです。
「べつべつのほうがくへむかえ。できるだけとおくへいくんだ」
ちちおやがつよいことばでいいました。
「つらくてもかえってきてはだめよ。いっしょうけんめいいきなさい」
ははおやもいいました。

本文より引用


そして、ラスト1ページ、ひとりだちしたきつねのたくましさ、でエンドではなく、次のことばで終わるのも情感たっぷりですばらしい。
このあとに続く言葉がなく、この言葉で終わる、というのが震える。

ゆきがふりだしました。
えぞしかはふゆをすごすばしょへうつっていきます。
そのおやこのすがたをみて、わかれたおやきょうだいをおもいました。
おもいだしたのは、わかれのひのははおやのことばです。
「つらくてもかえってきてはだめよ。いっしょうけんめいいきなさい」

本文より引用


きつねくんのてじな


作:松田範祐
絵:せべまさゆき

めずらしく、絵本ナビのサイトになかった。

昔からよくあるきつねの「いたずら好き」と「変身術(化ける)」というモチーフを使った作品。

みんなに、いじわる、いたずらばっかりしてるきつねが、ある日人間がやっていたてじなをみて、一生懸命覚え、森の仲間に披露して人気者になる。
最終的に自分が大事にしていたチーズもあげてしまう。

主題がどこにあるのかわかりづらく、今までいたずらをしてきた相手に急に自分の大切にしていたものを大盤振る舞いであげてしまう理由がわからなかった。

また、てじなをやる理由付けも薄かったように思う。
「ほんもののまほう」はおそらく化ける技術のことだと思うが、主人公はそれのやり方を知らない。「母さんだったら、ほんとうのまほう、知っていたのかなあ……」というセリフがあるが、きつねが化けられるかどうかについては触れてない。
たとえば、お母さんに化け方を教えてもらう前にお母さんがしんでしまった、という設定なら、化け方の代わりに手品をやってお母さんに成長してるから、安心して天国に行ってねという具合にストーリーを進められるように思う。

最後に、ラスト1ページの文を引用する。

クイくんは、自分のからだよりも大きなチーズを、ころがすようにして、かえっていきました。
その足どりは、いつまでも、おどっているかのようでした。
クイくんは、とちゅうで、なんかいもふりかえって、ケンに手をふりました。
そのすがたも、すっかり見えなくなると、ケンは、ぽつんとつぶやきました。
「あーあ、いちばんだいじなものが、いっちゃった。
……けど、なんだ、あれぽっち。おれが食べたら、一口だもんな」

本文より引用

やっぱり作品は、読後感のカタルシスが大事。
あんなに大事にしていたチーズなのだから、この言葉のあとに、もう一押し欲しいと思ってしまった。


きつねのおはなはん


作:中川正文
絵:二俣英五郎

関西弁が特徴的な絵本。
対象年齢5・6歳とあったが、これも高すぎる気がする。
小学中学年以上でいいのではと思うが、読み聞かせならちょうどいいように感じた。

絵が文章を補う役割をしていて、また味のある絵がとてもいい。

ラストの展開は驚き!という展開にしてあるので、オチがしっかりオチていて心地よい。

おはなはんがきつねであることに誰も驚かないので、これがこの世界ではふつう?というのがよく分からなかった。

きつねであることがばれてはいけない、という後半の展開もあるので、きっときつねであることをみんな知らないのだと思うが、語り口が関西弁で、この世界の人が話しているような妙な親近感があるせいか、きつねであることを受け入れているように感じてしまう。

「マンケはんのおっさん」の「マンケはん」が分からなかったが、調べてみると呼称らしい。このあたりも関西圏ではないので馴染みがなかったのかもしれない。

また、「ウインター ハッド ゴーン、スプリング ハズ カム」とおはなはんに教わった言葉を起き抜けのおっさんに言う「おたみ」だが、英語を理解するくらいの年齢でないと面白さが半減してしまうようにも感じた。

ほかにも、きつねがおはなはんに化けていた理由もよく分からなかった。

落語のような、昔話のような、リズミカルで面白い話だが、ミステリーの犯人解明ストーリーの流れにも少し似ていて、枠組みがしっかりしていてよかった。

ただ、個人的には、もう少しボリュームアップして、8~9歳以上向けに細かい描写とエピソードも入れて膨らませてあったらより面白かったなと思った。



全体的に、きつねをたぬきに置き換えたらどうなんだろう、成立するかな、と思って読んだが、きつねでなければならない理由があったように思う。

それは、ずるがしこい、計算高い、ユーモラスだけど少し不気味で神秘的、スマート、という印象が人間側にあるのだろうと感じた。


読書は本当に勉強になる。


また次は残りの5冊のログを書きます。


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