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[読書ログ]「アンディとらいおん」

作・絵: ジェームズ・ドーハーティ
訳: 村岡 花子
出版社: 福音館書店

  

あらすじ

ライオンが大好きな男の子アンディの目の前に、ほんもののライオンがとびだしてきました。さあ、たいへん! でもアンディは平気です。ライオンはアンディの親友だったのです。

絵本ナビHPより引用

  

感想 ※ネタバレあり注意

白黒の絵に茶色のカラー。
表紙絵から進んで手に取らなかったという方が多くいるようで、なるほど興味深いと思った。
逆にわたしは、この絵のタッチが面白そうで手に取った。

話は、図書館で借りたライオンの本に夢中なアンディが、本物のライオンに出会い、ひと悶着ありつつ、最後は図書館に本を返しに行く、という物語。


道の途中で出会うライオンの手に大きなとげが刺さっているシーンは、今の絵本では読めない展開だろうと思う。

つごうのいいことに、アンディは、いつも、ずぼんのぽけっとに、くぎぬきをいれて、あるいていました。それをとりだして、しっかりとげをはさみました。

本文より引用

ずぼんのぽけっとにくぎぬきなんか入れてることなんかある?!
と思わず笑ってしまった。
でも、別に絵本に正解なんかない。
大事なのは助けてあげようとする意志と、行動を描くことだからこれでいいのだろう。

  
そして、とげを抜かれたライオンとお別れする。

アンディはがっこうへいき、らいおんはらいおんのようじをするためにでかけました。

本文より引用

らいおんのようじって何だろう。
ここでも笑ってしまう。
セオリーなら、ここが童話の面白さだから、「ようじ」について具体的に書こうとするのだろう。でも書かない。想像力にまかせる。あるいは読み聞かせしている母親との会話で補ってもらう。そういう解釈の仕方もある。


結末は、図書館に借りていた本を返しにいくのだが、絵では、本物のサーカスのライオンを引き連れながら、本を返しに向かっている。

本との別れを描き、本物のらいおんとの別れはない。
夢中になっていた本のなかの強いらいおんに対して、本という虚構ではなく、本物を手に入れた話とも読める。

サーカスのらいおんなので、いつまでも一緒に暮らしたとはならないだろうが、別れの結末で終わらない描き方は特徴的だと感じた。


副題は、「しんせつをわすれなかったおはなし」。
それでいえば、とげを抜くことで親切を忘れなかったために、本物のらいおんと友達になり、一緒に居られる楽しさが続いていく、という話にも読める。

それにしても、捉え方がむずかしい物語だ。
設定としては無理があるところが多いし、一見何を描きたいのかわからないように感じる。
 
だが、子どもらしい感情の描き方、らいおんが怖くて強い生き物として存在していることへのドキドキ感のようなものが読み進める楽しさを増幅している。このドキドキ、わくわく感があり、らいおんに食べられずに仲良くなれた、という安堵感が子どもにはうけるのかもしれない。

他の方のレビューで「強い者と仲良しという無邪気な誇り」という言葉があり、なるほどなと思った。

王者である強いものと仲良くなる、あるいは、強いものと仲良くなることで、自分も強いものになりたい、ある種の英雄願望のようなものも、子どもたちを惹きつける所以なのかもしれない。



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