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独断と偏見で選別した、攻殻機動隊ベストエピソード5選

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さて、ついに配信が開始した攻殻機動隊SACシリーズの完全新作「攻殻機動隊 SAC_2045」ですが、みなさんはもうご覧になりましたか?

「SAC_2045」は数々ある攻殻機動隊派生シリーズ(押井版や黄瀬版等)の中でも神山健治監督が制作したTVシリーズ「S.A.C.版」の正式続編となっており、「S.A.C.版」としては前作「Solid State Society」からなんと14年振りの新作となっています。
(というか、むしろ続編作られるなんて誰も思ってなかった)

そんな「S.A.C.」の新作を観ていると、ふと過去作への思いがよぎったわけです。

というのも、このS.A.C.」シリーズが放映されていた当時、自分はちょうど20代前半。当時はあまりアニメを観ていなかったのですが、友人に進められ鑑賞したところ、綿密なストーリー、そして洗練されたキャラクター設定に、怖いくらいにハマったわけです。

そんな思い出の「S.A.C.」。どのエピソードも最高に面白いのですが、その中でも個人的に好きなエピソードを選別し、「俺の考えた最強の攻殻機動隊5エピソード」を紹介したいと思います。

ほら、昔はMDに好きな曲だけ入れて「俺が考えた最強アルバム」作ったでしょ。それと同じ。

※あくまでのSACを一度視聴経験のある方向けの書き方なのでネタバレ注意


第5位 「顔 MAKE UP」

「個別の11人」を名乗るテロリストを追う公安9課を描いたシーズン2である「攻殻機動隊S.A.C. 2nd GIG」の第13話。

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9課メンバーの中でも最も寡黙で謎の多い男「パズ」がメインのエピソード。

「個別の11人」の犯人の一人であるクゼの調査中に、彼が「特殊な造顔作家に顔を作らせている」ことがわかった。だが9課がその造顔作家の身元を突き止めた時にはすでに彼は殺され、さらに監視カメラに映っていた犯人はパズと同じ顔をしていた……

という話。

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ネタバレすると、パズの昔の女が「パズに振られたのが理解できなくて、自分を振ったパズの気持ちを知ろうとパズと同じ顔になった」というもの。

最後はパズと、パズの顔になったその女の戦いが描かれる(ややこしい)。

なぜこのエピソードが好きかと言うと、攻殻機動隊のキャラクター達ってほとんどバックボーンが描かれないんですよね。
だからセリフの節々から、ちょっとずつ輪郭が描かれていくキャラクターを楽しむというのがこのシリーズの面白さだと思います。

そんなわけで、このエピソードまでほとんどそのバックボーンが不明だったパズのほんの少しの「キャラクター」が見えるのがこのエピソード。

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また、このエピソードでは攻殻機動隊屈指の名言の一つ「俺は同じ女とは2度寝ない主義」ってパズのセリフが聞ける。(そんな事言ってるからこんなことになってんだぞ)

しかも面白いのは、そのセリフは少佐がパズをスカウトした時に言われたセリフだって少佐自身から語られる。笑

俺もそんなセリフ、一生に一度くらい言ってみたいわ。


第四位 「タチコマの家出 映画監督の夢 ESCAPE FROM」

こちらはシーズン1「笑い男編」の第12話。

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基本はシリアスな「笑い男編」だけど、その箸休め的なエピソード。

9課が所持するAI搭載多脚戦車「タチコマ」。普段は情報を並列化して「全が個」であるタチコマが、バトーが遊び半分で与えた天然オイルの影響で1台だけエラーが起き、好奇心に勝てなくなって家出。
そんな折、町中で少女と出逢い旅をする。

というもの。

このエピソードの素晴らしさは、非人間的な価値観で駆動しているAI搭載多脚戦車タチコマが家出中に出会った少女が、飼い犬「ロッキー」の死を悼む姿を見て新たな価値観が芽生える部分。

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↑すごく好きなシーン。ロッキーの死を受け入れて泣き始めた少女にタチコマは「僕にはゴースト(意識や自我)が無いから悲しいって概念が理解できない」と言うんだけど、そのシーンではタチコマからオイルが涙のように漏れている。

これがシーズン1のラストで命を駆けてバトーを救うタチコマにつながるわけで。「ゴーストとは」が主題である攻殻機動隊として素晴らしいエピソードだと思う。

また、このエピソードは2話のオムニバスが1話に合体されている

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タチコマは家出から戻ると当然のようにメンバーに怒られ、調整される。
そんな中、少佐はタチコマが家出中に闇市で手に入れた電脳入の箱を知らベるが…というもの。

ネタバレするとこの電脳はある映画監督の脳。しかもまだ生きている。
彼は特異な作家性から評価されず、脳を生命維持装置の箱に閉じ込めることで「接続可能なシアター」となっている。というもの。

少佐もアクセスしたことで、この映画監督の電脳内シアターで彼の映画を観るんだけど、少佐が涙するシーンが見える。それって後にも先にもこのエピソードだけ。とてもめずらしい。

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それからこのエピソードはセリフの掛け合いが素晴らしい

この映画監督の電脳には現実逃避のために彼の電脳に逃避してきた様々な人の意識が自分の意志で滞在し続けているんだけど、少佐も同じように映画監督から勧誘を受ける。当然、少佐は断るんだけどその時の映画監督との掛け合いがこちら。

「夢は現実の中で闘ってこそ意味がある。他人の夢に自分を投影しているだけでは死んだも同然だ」
「リアリストだな」
「現実逃避をロマンチストと呼ぶならね」

しびれるかっこよさ。


第三位 「草迷宮 affection」

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こちらは2ndGIG「個別の11人篇」の11話。

新人補充のために候補生に試験を行っていた公安9課。そんな中、試験中で備考対象者役を務めていた少佐は奇妙な街角に迷い込んでしまう…というもの。

このエピソードを選んだ理由は、ずばり「草薙素子のバックボーンが最も描かれている」から。

他のメンバーと同じく、その過去、バックボーンがほとんど描かれない少佐こと草薙素子。世界屈指の義体使いでウィザード級のハッカーでもある彼女が、どうして今に至ったかの一端が描かれたエピソード。

過去に起きた悲惨な飛行機事故。生き残ったのは1人の少年と少女だけ。
少女は昏睡状態だが少年は意識は戻っており、彼は毎日少女の姿を見て回復を待った。しかし少女はある日を境にいなくなり、少年は彼女が死んだのだと思った。
少年は回復したが後遺症で左腕だけしか動かせなくなり、日々黙々と折り鶴を作る日々。ある日、医者から全身義体を進められる。だが、少女を失った少年は希望も何もなく拒否を続けるのだが、少年の前に全身を義体化したある少女が少年を励ましに現れる……。

ネタバレすると、この少女が少年と共に生き残り先に義体化していた少佐。(さらに明確にされてないけど、確実にこの少年は「個別の11人篇」のラスボスであるクゼ)

このエピソードの素晴らしさは、この二人の物語を「I do」という名曲に載せて回想するシーン。
少佐の過去をしれる驚きだけではなく、どこか切なく涙するシーンとなっている。

ほんと名曲。


第二位 「左眼に気をつけろ POKER FACE」

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「個別の11人篇」の第14話。

このエピソードはまたもやバックボーンが不明な9課のスナイパー、サイトーの個別ストーリー。

待機中のサイトーと9課新人メンバーが暇つぶしにポーカーに興ずる中、サイトーが過去を語りだす。
第4次非核大戦後期。反乱軍に参加していたサイトーは、敵の特殊部隊が核輸送を極秘裏に進めているのを知る。
そこでサイトーはその核を奪取してやろうと戦いをしかけるのだが、その特殊部隊には当時の少佐と石川、二人と出会ったばかりのバトーがいて…

というもの。このエピソードでは二人の一騎打ちが語られる。その戦いがとにかく素晴らしい。

当時生身であったサイトーと、全身義体である少佐。両者とも一発で決めないといけないって状況で相手の思考を読み合う手に汗握る戦いは見もの。

サイトーは生身だから、少佐のように制御ソフトに頼れない。(少佐は全身義体であるからこそ、戦闘スタイルをダウンロードしてインストールする描写がある。まさにマトリックスのように)。
そんなサイトーは出会ったばかりの敵である少佐の思考を読み、一発の銃弾に賭ける。

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まさにポーカー。演出が抜群に上手い。

しかも、このエピソードではサイトーの左目が義体化している理由が明かされる。それも見もの。

演出、ストーリー、ストーリーとしての驚き、セリフ。全て完璧だと思うエピソード。

戦いの後にサイトーに銃を向けて少佐が放ったセリフ

貴様、いい腕をしているな。今から私の部下になれ

惚れる。一生ついていきます。


第一位 「暴走の証明 TESTETION」

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個人的第一は「笑い男篇」第二話である「暴走の証明」。

剣菱重工で新型多脚戦車が暴走。市街地を突き進んでいく。
搭乗者は開発者の1人、カゴ。
彼は生まれつき虚弱体質ながらも両親の宗教的理由から治療(電脳化、義体化)ができず28歳の若さで死亡していた。
だが同僚である友人に遺言を託し、その「ゴースト」を多脚戦車に移植。
両親への復讐のために暴走を始める。

S.A.Cがまだ「笑い男」というシーズン1を通した敵との戦いを始まる前の物語。

押井守版の「GHOST IN THE SHELL」から数年、初めてのTVシリーズで、映画とは違って9課やそのメンバーを印象づける準備が必要。その中で最初の数話はメインストーリーの「笑い男」が登場せず、9課の様々な活躍が描かれたエピソード。

その中での二話は、「ゴーストを多脚戦車に移植した男」が「両親への復讐」のために暴走する話。

SFとは言え、物語とはベースは普遍的に「人間」を描くもの。このエピソードは「親と子の問題」を描いている。

宗教的な理由から生き続けられなかった息子は、その原因である両親に機械の体を得て復讐に向かうのだけれども、公安9課の活躍でカゴの実家の目の前で停止する。

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しかし少佐がカゴの電脳を確保しようとした時、両親が姿を見せる。
その影響かカゴは復活、多脚戦車は再起動。

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少佐は急いでカゴの電脳を焼き切るのだが…その瞬間に少佐の脳に流れ込んできたカゴの記憶は、決して「復讐」でみたされたものではなかった。

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そして少佐の脳にはカゴの言葉が残った。

『どうだい母さん。鋼鉄の体になった俺の姿』

と。

本当、何回観ても泣いてしまう………!!!

誰も悪くない……悪くないんだよ……!

両親だって息子が憎くてそうしんじゃない…

そしてカゴだって……

ちょっとした、けどとても大きな「想いの齟齬」で生まれた悲劇がこのエピソードでは描かれていると思った。

攻殻機動隊はSFとかアクションってイメージが強いと思うけど、基本は「人間」を描いているんだよね。

テーマは「ゴースト(自我)」なんだから。

そんなわけで第一位は攻殻機動隊の中でも特に泣けるエピソードでした。


まとめ

まとめたことで改めてわかったけど、基本的に僕はキャラクターが描いているエピソードが好きなようだ。

故・小池一夫先生も言っていた。

物語はキャラクターだと。

攻殻機動隊はどんな作品にも負けない、「キャラクター」を描いた作品だと思う。


そんな攻殻機動隊は新作「SAC_2045」がNetflixで絶賛配信中。
これを機に前作「S.A.C」、さらには「GHOST IN THE SHELL」や「イノセンス」も是非繰り返し観てみるはいかがでしょうか。(ARISE?え?)



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