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折本龍則「浦安から『食の安全』を通して我が国の食糧安保に貢献する」(『維新と興亜』第7号、令和3年6月)

 今年の浦安市六月議会では、学校での有機給食の導入について質問する。これは子どもたちの「食の安全」を守るのが目的であるが、延いては我が国の食糧安全保障を地方から支えることになる。周知の様に、我が国の食糧自給率は年々減少の一途を辿り、令和元年度はカロリーベースで38%、穀物自給率に至っては平成29(2017)年で28%と、172の国・地域中125番目、OECD加盟37か国中32番目という極めて低い地位にある。かつて我が国の池田勇人首相を「トランジスタラジオのセールスマン」と馬鹿にしたフランスの大統領シャルル・ド・ゴールは、「独立国とは食糧自給のできる国」という言葉を残したそうであるが、まさに食糧自給できていない現在の我が国は独立国とは言えないのである。事実、核保有国の穀物自給率を見ると、アメリカは119%、ロシアは148%、イギリスは94%、フランスは170%、中国は98%と非常に高い水準にある。自給率が低いと食糧輸出を外交カードにされてしまう。だから大国は食糧自給を死守して外国の干渉を受けないようにしているのである。一方の我が国は韓国と並ぶ低水準(28%)であり、さすが仲良くアメリカの属国に甘んじている訳である。
 このように自給率が低いために食糧の「量」が足りていないが、さらに問題なのが、輸入食糧の「質」の問題である。我が国が大部分を輸入に頼るトウモロコシや大豆、ナタネなどの大半は遺伝子組み換え(GM)である。例えば自給率が0%のトウモロコシは、GM作物推定輸入比率が89%である(2016年データ)、また自給率が7%の大豆のGM作物推定輸入比率は93%である。
 GM作物については、過去の動物実験の結果などから(一)免疫システムへの悪影響、(二)生殖や出産への影響、(三)解毒臓器(肝臓、腎臓)への傷害が報告され、長期の実験の必要性が指摘されている。
 次に残留農薬の問題だ。GM作物は主に除草剤耐性と殺虫毒素生成の何れかが導入されているが、GM作物とセットで開発された強力な除草剤の主要成分であるグリホサートやネオニコチノイドが人体に与えるリスクが指摘されている。
 「世界の報告例では、妊娠期間の短縮化、出生異常、自閉症の増加、認知機能の低下、腸内細菌への影響、腎臓病、癌化、脂肪肝の増加といった症例が報告されています。グリホサートが有機リン系農薬で、神経毒性を持ち、また環境ホルモン作用があることから生殖にも多大な影響を与えると考えられています」(安田節子『食卓の危機』)。
 また農薬の多用が環境や生態系に与える影響も計り知れない。こうした事態に対し、EUを始めとする諸国は、予防原則(安全性が証明されない限り認めない)に基づき、GM作物や残留農薬への規制を強化している(EU加盟28か国の内19か国がGM作物を禁止)のと対照的に、我が国は反対の原則(危険性が証明されない限り認める)に基づいて、種子法を廃止してGM種子の流入を促進し、グリホサート等の残留農薬基準値を大幅に緩和している(17年の改正でグリホサートは最大400倍、トウモロコシ5倍、小麦6倍)。内閣府食品安全委員会は「グリホサートは神経毒性、発癌性、繁殖能に対する影響、催奇性及び遺伝毒性は認められなかった」との見解を示している(2016年7月)が、これは危険性が証明されなかったという事であって安全性が証明されたという事ではない。こうした潜在的リスクのある食物を国民、特に未来ある子供たちに食べさせてはならない。
 そこで全国で無農薬、非遺伝子組み換えの有機作物を使った学校給食を導入する自治体が出てきている。千葉県のいすみ市は2014年に有機米での給食を開始し、2017年には小中学校の約2300人分約42トンを賄うことが出来た。有機学校給食は子どもたちの食の安全を確保するのみならず、有機作物の作付拡大、食糧自給率の向上に繋がることで我が国の食糧安全保障にも寄与する。幸いにも浦安市は日本一の有機米の生産地である秋田県大潟村と交流のパイプがある。浦安から「食の安全」を通じて我が国の食糧安保に貢献したい。


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