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神谷宗幣「本音で日本の自立を語る」(『維新と興亜』第14号、令和4年8月28日発売)

ブームで終わらせない国家観のある政党として


── 参政党は先の参院選で神谷さんが当選され、一議席を獲得されました。今後、国会でどのように活動されていくのですか。
神谷 まだ登院したばかりなので手探りですが、先日の三日間の臨時国会の間に質問主意書を五本提出しました。質問するチャンスが限られているので、質問主意書をどんどん政府に出してその回答を皆さんに伝えていきます。この質問主意書も、私一人で考えるのではなく全国の支部から地方の課題も含めて聴き取りを行い、合理性のあるものを選んで国会に提出しようと考えています。こうしたこつこつした活動を通じて、他党の方から参政党はネットだけとか、一時のブームだけでやる政党ではなく、きちっとした軸とか国家観をもってやる政党なんだということを分かってもらい、なかなか院内では一人では出来ないことばかりですので、他の政党との会派の結成なども視野に入れながら参政党の理解者を院内に増やしていくことが私に求められていることだと考えています。
── これから党としての政策を固めていく段階に入ると思いますが、今後どのようなプロセスで党としての統一した政策を出されるのですか。
神谷 まず運営党員のなかで政策の勉強会を9月頃からやります。そのなかで政策に長けた運営党員を選抜し、その方々に政策のたたき台を作ってもらいます。そして、そこで出てきたものを各支部に投げて支部の党員の意見を聴いていきます。さらにそこで練り上げたものを最終的には党員投票で決めます。つまり、①運営党員がたたき台を作る②我々本部で揉んで投げ返す③支部の意見を反映させる④党員で投票、といった四つくらいのステップを踏むかたちになります。ですから、一部の方々が言っているように、武田先生や所属議員の方があれを言ってるとかこれを言っているということは党の政策には反映されないので、それを党の見解と見なすのは全くの誤解でありプロパガンダに踊らされています。
── 憲法改正について「創憲」を掲げておられますが、これは今の憲法を是としたうえで、それを改正するということで間違いないでしょうか。
神谷 そこのプロセスについてはこれから話し合っていかねばなりませんが、私個人としては今の憲法を是としていません。はっきり言って無効だと思っています。それは法的に言ってもそうです。ただ、それでどうやって変えていくのかといった時に、無効の手続きをして大日本帝国憲法に戻してそれを改正することになると本当に何も出来ない可能性があるので、そこは妥協する必要もあるのかなと思っています。変えていかねばならないのは事実ですし、根っからの護憲派などは話になりませんが、変えるにしても緊急事態条項のようなものを加えられると、今回のコロナの事でもいまだに日本だけがワーワー騒いでいて世界はとっくに終わっているのに、作り出されたパンデミックで日本人の人権や経済活動が奪われるような決定権が与えられかねないので、そういう所は絶対に変えさせてはならないと思います。もちろん、私も戦後レジームからの脱却は必要だと思っていますが、改正が改悪になるか改善になるかは中身によるので、ただ変えれば良いというものでもありません。
── いまの憲法の最大の問題は、天皇の地位を「主権者たる国民の総意に基づく」と規定した第一条ではないでしょうか。しかし「創憲」になると、結局は天皇の地位を国民が規定することになるという意味での危険性を孕んでいるのではないでしょうか。
神谷 そうですね。私も先程言ったように、今の憲法は無効だし、大日本帝国憲法の改正から始めるべきだと思っていますが、それを言っているといまの人達は全然ついてこないので、そこは何らかの妥協が必要になってくると思います。余り正論を言い過ぎても結局合意が取れずに物事が前に進みません。何でも良いから変えろというのも間違っていますが、正論になるべく近づけつつ、民意も呑んで行かないと何も変わりません。これは私一人の意見で決められることではないので、党員との対話で意見を聴き、識者も招きながら憲法案を作らねばなりません。理想と現実の狭間で悩んでいるのが実情です。

いかにしてアメリカから自立するか


── 参政党が反対するグローバリズムの根底には、我が国の従属的な対米関係があると思います。神谷さんは「自分の国は自分で守る」と仰っていますが、アメリカとの関係において、アメリカに守ってもらうのではなく自分の国を自分で守るにはどうしたら良いとお考えですか。
神谷 これは段階が必要だと思います。いきなりアメリカと縁を切って自分の国は自分で守るというのは非現実的だと思います。あくまでアメリカにもメリットになるかたちで日本が自立するんだという絵を描かねばならないと思います。我々もアメリカの政治には内政干渉は出来ませんが、共和党保守派の人たちのように、アメリカはアメリカでやる、日本は日本でやれと言うような人たちに政権を取ってもらわないといけません。民主党政権はグローバリストなので交渉の仕様がありませんし、交渉してもこっちが潰されるだけです。したがって、そういうことを一緒に話し合ってやってくれるような人たちを政治の中枢に押し上げていくようなロビーイングが必要だと思います。それを日本単独でアメリカの状況を無視してやってもさらに状況は悪くなると思います。なんだかんだ言っても日本がアメリカの傘の下にいるのは事実なので、悔しいけれどもそれは認めて、そのなかでどういうステップを踏んで行けば良いのか戦略的に考え長期的スパンでやらないと、いまのバイデン政権のもとでそんなことを声高に主張しても潰されるだけになってしまいます。
 ですから、日本には日本で自分でやってもらって、何だったらアジアの防衛も過去のように日本が主体的にやってもらったら良いだろうというふうに、従属的なパートナーシップではなく対等なパートナーシップまでどうやって持っていくかという絵を描かねばならないと思っています。私は、安倍晋三氏はそういう絵を描かれていた方だと思ったので、彼が総理になるのを応援したし、自分も彼のお声がけで自民党に入りました。しかし安倍氏ですら、それは成し遂げられなかった。ですから、我々がそれを目指しても一朝一夕で出来るとは思いませんが、だからといって諦めるのではなく、少なくとも党内でそのような思いを共有できているという状況を作っていかねばなりません。
── 先日、弊誌として外務省前で日米地位協定(日米安保条約の下で在日米軍に様々な特権を認めている日米間の取り決め)の改定を求める街宣活動をやりました。前号(13号)での政党インタビューでは全ての政党が地位協定改定に賛成しました。参政党はこれから地位協定の問題に取り組まれますか。
神谷 取り組みたいですね。いま党の政策スタッフも揃えているので、もう一度、地位協定がどういったもので、どこが問題で、どこを変えていくべきなのかということを党員の中で話し合える状況にしなければならないと思っています。そういったことについて一緒に勉強会などもやれたら良いですね。この問題についてはタブーにせずに、きちっと向き合っていかねばならないと思います。
── 神谷さんは、目下の政治情勢が、「グローバリズム勢力 vs 国民国家」の構図に変わってきていると仰っています。全く同感です。しかしグローバリズム勢力によって国民国家勢力が分断され、それが対米従属から脱却できない理由にもなっていると思いますが、リベラルを包含した上でのナショナリスト勢力の連帯について視野に入れておられますか。
神谷 それは視野に入れざるをえませんし、参政党には元々リベラルな政党におられた方にも参加して頂いています。むしろ、そういった方々にも参加してもらうために参政党を作りました。今度の沖縄知事選についても、保守の側からは自民党と連携してオール沖縄と戦えという意見もありますが、リベラルの方は自民党自体を信用していないので我々は独自路線で行きます。そういう意味では、グローバリズムと戦うためには「保守対革新」という枠組みを取っ払わねばなりません。私は「保守(右)対革新(左)」ではなく、「前か後ろ」かだと思っています。後ろというのは何もやらないことです。グローバリズムという課題が見えているのですから、前に進むのみです。小さな政策の違いなどで、我々のことを叩いている人たちがいますが、問題の本質は日本がグローバリズムに飲み込まれ、主権を失うことがないようにすることです。重箱の隅を突くようなことをして、自分たちが目立とうとしているように見えてしまいます。
 本質を見極めて、国民の力を結集しないと、日本は守れないと考えています。


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