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城内実「日本の価値基準を国際標準に」(『維新と興亜』令和5年3月号)

國體を感覚的に理解することが重要だ


── 保守的な思想を持っている政治家は少なくありませんが、城内さんのようにしっかりした國體観を持っている政治家は非常に少ないように思います。
城内 私は、保守思想の根底には、しっかりした國體観がなければならないと考えています。左翼的なにおいすらする、いわゆる思考停止型保守、排外的保守、独善保守に陥らないためにも。
 幸い、私は大学四年生の時に父の友人でもある小堀桂一郎先生に初めてお会いさせていただいて以来、國體や皇室について考えるようになりました。ただ、國體についてさらに深く考えるようになったのは、平成十七(二〇〇五)年に落選した時からです。この落選時代に、高野山を訪れ、その後生まれて初めて伊勢神宮を参拝し、さらに古神道にも目覚めました。一月二十日の大寒禊を体験したのをきっかけに、日常的に禊行をするようになりました。現在もほぼ毎朝、風呂場で禊行をしています。ご皇室の弥栄、神の国日本の繁栄、世界人類の平和、森羅万象の幸福を祈り、禊祓祝詞を二回斉唱します。
 「高天の原に神留ります 神漏岐 神漏美命以ちて 皇御祖神伊邪那岐命 筑紫日向の橘の小門の阿波岐原に 禊祓ひ給ふ時に生れませる祓戸の大神達 諸々禍事罪穢を 祓へ給ひ清め給へと白す事の由を 天津神・国津神・八百万の神等共に天の斑駒の耳振立てて聞し食せと恐み恐み白す」
 それから冷水を浴びて心身を清めるのですが、禊は交感神経と副交感神経のバランスをとるためにも非常に効果があるように感じています。
 また、日頃から大倉精神文化研究所が編纂した『神典』とその解説書の『神典解説上・下』(山雅房)や、錦正社から刊行されている森清人謹撰の『みことのり』などに触れています。言霊や文字霊を通じて、日本の國體をより感覚的に理解できるようになるのではと思っています。また、伊勢神宮や全国津々浦々の神社や鎮守の杜に参拝し、神々が宿る日本の風土を頭ではなく、たましいで感覚的に理解することも重要だと考えています。
 國體には言葉で説明し切れない部分があり、魂の成長とともに自ずと理解できるものだと思っています。もちろん、本居宣長、賀茂真淵、平田篤胤といった国学者の領域に到達できるとは思いませんが、そうした感覚を磨いていきたいと思っているのです。そうすることによって、神武天皇以来、二千六百年にわたり、百二十六代連綿と続いてきた天皇(スメラミコト)を頂点として、臣民の集合体である日本国民が共存共栄するのが、わが国の姿だということが、感覚的に理解できると確信しています。
 憲法に書いてある、外国使節の接受などの国事行為も天皇のお役目の一つですが、祭祀の長として、高次元の高天原に御座します天照大神はじめ、皇祖皇宗と目に見えない繋がりを持ち、祈るということを通じて、神の国日本の繁栄のみならず、この地球の森羅万象、生きとし生けるものの平和と安寧を願うのが天皇の本来のお姿です。
 近年、「魂の存在」を量子力学的に解明しようという研究がありますが、私には、「祈り」の力が高次元との世界との繋がりを通じて三次元の空間を浄化しているように感じます。
 大嘗祭とは、新しい天皇とその高次元の世界が、血統的にだけではなくて、霊統的にも繋がることではないかと受け止めています。
── 城内さんが掲げる「万民幸福」の政治という理念も、國體観に支えられているのですか。
城内 その通りです。政治は「政」ですから、政治のあるべき姿は、直接神々の世界に思いをいたし、神々のご意志を忖度し、自然との調和や、争いをなくすといったことを願いながら行うものだと思います。
 万葉集にある舒明天皇の御製、
大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち 国見をすれば国原は 煙立ち立つ 海原は 鴎立ち立つ うまし国ぞ 蜻蛉島大和の国は
には、「万民幸福」の政治のイメージが示されていると思います。

言葉に宿った魂が重視される国柄


── GHQの占領政策によって、戦後日本人は國體観を喪失してしまいました。
城内 戦後、わが国の祝祭日も封印されてしまいました。四大節と呼ばれる四方拝(一月一日)・紀元節(二月一十一日)・天長節(四月二十九日)・明治節(十一月三日)や新嘗祭(十一月二十三日)に象徴されるように、祝祭日は国柄に繋がる極めて重要なものです。ところが「紀元節」は「建国記念の日」、「天長節」は「天皇誕生日」、「新嘗祭」は「勤労感謝の日」、「春季皇霊祭」は「春分の日」、「秋季皇霊祭」は「秋分の日」になってしまいました。
 キリスト教やイスラム教にもそれぞれの宗教に関わる祝祭日があり、それらが重視されています。我々も国柄に繋がる本来の祝祭日を取り戻すべきです。
 日本人の価値観を維持するためには、教育が非常に重要だと思います。私は小学校一年から四年まで西ドイツで教育を受けたからこそ、逆に自分が受けている教育を絶対視することなく、常に「本当にこれでよいのだろうか」と自問自答してきました。私はメディアの報道などにも影響されることなく、中学生の時から戦前のレコードを聴くようになりました。レコードを聴いて、その時代の雰囲気をレコードの音源、レーベル、歌詞カード、袋などから感じ取ることによって、日本人本来の価値を理解するようになったのかもしれません。
 私は、英語を教育するなとは言いませんが、小学生から英語を学習するなどということはあまり意味がないことだと思っています。英語の前に国語をしっかり学習することが重要です。万葉集などの古文もしっかり学び、言霊とは何かをまず幼いころに感覚的に理解できるようになる必要があると思います。文字にも文字霊があるように感じます。わが国は、言葉に宿った魂が重視される国柄なのです。俳句や短歌に示される言霊は、高天原で使っている言語が地球に降りてきているのではないかとさえ私には感じられるのです。
── 皇位継承についてはどのように考えていますか。
城内 わが国の歴史を振り返ると、一時的、緊急避難的に女性天皇の時代もありましたが、基本的に男系で続いてきました。現代的な価値観を適用して女系天皇を容認するような考え方には賛成できません。
── 令和の新元号が事前公表されたことについてはどう考えていますか。
城内 これは、私の國體観とは相容れません。旧皇室典範は「践祚ノ後元号ヲ建テ…」(十二条)と規定していました。今回は崩御を伴わない新元号でしたが、過去の例を見れば、天皇が崩御された後、喪に服した後、新しく天皇になられた方がお決めになるのが本来の在り方です。「システム改修などの時間を確保するために、新元号を事前に公表する必要がある」といった主張がありましたが、元号は利便性を優先して考えていいほど軽いものではありません。
── 憲法についてはどのように考えていますか。
城内 明治憲法に復元すべきという意見がありますが、明治憲法はプロシアの憲法を手本にして作られたものです。私はむしろ不文憲法にすべしという方々の意見も傾聴に値すると思っています。もともと我が国は、みことのりによって成り立つ国柄です。成文憲法には「日本は万世一系の天皇を戴く国家である。男系継承を維持する」とだけ書けば十分だという考え方もあるでしょう。

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