第1章 任務が与えられる 「石の精霊の叡智」Michael Katz(著)
ある日の夜遅く、私はリビングのソファに座り、目を閉じて内面に意識を集中させた。風のような音が聞こえてきた。外は穏やかだったので、その音が心の奥底から響いていることに気づいた。音は突然大きくなり、内なる眼にビジョンが映し出された。
30名ほどの人物が、巨大なクリスタルを囲んで輪になって座っている。光がクリスタルに注がれ、地面に流れ込み、周囲の人々に均等に広がっていく。私の目に映る彼らは、これまで出会ってきた「人間」と同じくらいリアルだった。ある者は人間の形をしたエネルギーの塊に見え、別の者は明らかに人間の姿をしており、それぞれが異なる色彩の衣装をまとっていた。彼らの会話から、何か大事な議論が交わされていることがわかった。
私はその輪の外に立っていた。はっと気づくと、左隣には友人のマイケル、右には「スピリチュアル・マスター」として知られる男性がいた。彼は以前にも会ったことがある人物で、膝丈の栗色のローブを着ており、乾燥した肌、短い黒髪とひげが特徴的だった。
「彼らは、自分たちについて書かれる本のことを議論している」とマスターは言った。彼の深い茶色の目が私を鋭く見つめた。
その瞬間、輪の中の老人が立ち上がり、クリスタルの方へ歩み寄った。そして振り返り、私たちに輪に加わるよう手招きした。輪の中の会話が一斉に止まり、全員が私たちを見つめた。マイケルと私は驚きと好奇心を抱きながら、輪の中へ入っていった。紫のローブをまとった老人に近づくと、何か大きな出来事が起こりそうな予感がした。
「地球の人々が宝石の真実を知る時が来ました。特に、球体の宝石の使命と癒しの効果についてです」と老人は言った。「ここに集まっているのはジェムストーン・ガーディアン、つまり宝石の守護者たちです。彼らは、それぞれの宝石の目的を果たし、その効果を維持することが古くからの役割です。最近では、さらに人間に宝石の正しい使い方を直接教えるという責任も担うようになっています。」
「この輪に集まったガーディアンたちは、インタビュー形式で進められる講義について話し合っています。このインタビューは、彼らにとって新たな責任を果たすための重要なステップなのです。彼らは自分が担当する宝石に関する知識を共有し、それを基に一冊の本が生まれるでしょう。」
私の好奇心はますます強くなっていった。マイケルと私は宝石の癒し効果に深い関心を抱いており、これまでにも多くの本や記事を読み漁ってきた。しかし、それらの情報は曖昧で不完全、あるいはあまりにも一般的なもので私達は失望の中にいた。
宝石の特性に関する記述は資料ごとにまるっきり異なっていることが少なくなかった。まるで全く異なる宝石の説明をしているかのように。私達は苛立ちを覚えながらも、宝石が持つ強力な効果について本質を追求することをあきらめない決意をしていた。
そんな時、心の中にある問いが生まれた。この「ガーディアン」たちは、私たちの探求心を知っていたのだろうか? そして、私たちが求めている情報を見つける手助けをしてくれるのだろうか?
この先どうなるのだろうと思いながら聞いていると、話しかけてきた老人の豊かな紫色の瞳が気になった。その瞳は、最高級のアメジストを思わせた。
次の瞬間、彼は私の言葉にならない質問に答えてくれた。「あなたたちは、スピリチュアルな道を歩むことでスピリットの光と音に導かれ、このような非物質的な場所でも現実の意識を保つことができています。これまでの試練は、内なる導きを信じ、規律と集中を学ぶために用意されたものでした。」
確かに、毎日行っているスピリチュアルな訓練は、私たちの生活に欠かせないものだった。目を閉じた時に聞こえた音は、この日常的な経験のほんの一部だったのだ。現に時折、物理的な環境から意識の焦点を外すことで内なる世界を旅できるのは、とても幸せなことだと感じていた。
「石の守護者たちへのインタビューを、あなたたちにお願いしたいのです。あなたたちがその特権を得たのです」と彼は締めくくった。
私はこの任務の重大さに、恐れ多いと感じるかと思いきや、次の瞬間、自然な流れだと捉えていた。これは私たちが進むべき道であり、論理的なステップなのだと。何しろ、宝石の真髄を知る者から直接学ぶ機会が与えられたのだから。
「ありがとうございます。私たちを信頼していただき、光栄です」と私は答えた。
マイケルも同意してうなずいた。そして、インタビューはいつ始まるのだろうかという期待感で心が満たされた。そんな私の様子を察したのか、栗色のローブを着たマスターが続けた。
「これから2カ月の間に、いくつかの日程を選んでインタビューを行ってください。邪魔が入らない時間を選び、楽な姿勢で座り、目を閉じてください。スピリットがあなたたちを待ち合わせ場所へ導いてくれるでしょう。そして、心を開いてその音に従ってください。神の言葉に耳を傾けてください。それは、生命の源からあなたの心を通って、再び戻ってくる音楽の流れとして現れるでしょう。その音について行きなさい。そして目を開き、目の前の世界を見てごらんなさい。あなたが開く目は肉眼ではなく、あなたが知覚する世界も物質の世界ではありません」
マイケルは、これはチャンスだとガーディアン達に本についての提案やアドバイスを求めた。ある人とはじっくりと、ある人とはほんの少し、ほぼ全員と話をした。マイケルがガーディアン達と話している間、私は輪の外に立つ女性に目を奪われた。彼女は輝くような白い光を放っていた。その女性は、話し合いが終わったのを確認すると、私達の輪の中に入ってきた。
「この方は鉱石界のガーディアンであり、すべてのジェムストーン・ガーディアンの監督者です」と、誰かが言うのが聞こえた。
監督者は私達に話しかけた。「インタビューを始める前に、お二人にアドバイスをします。ガーディアンの話をすべて記憶し、後で書き留めようと思わないでください。そうすれば、多くの情報が忘れ去られてしまうでしょう」
「その代わりスピリットに身を委ね、ガーディアンを取り巻くオーラ、つまりエネルギーのフィールドに入る方法を教えてもらうのです。あなたは自分の意識とアイデンティティを失うことはありません。また、ジェムストーン・ガーディアンになることもありません。しかし、あなたの肉声は、各ガーディアンの心から流れる言葉を話すことができるでしょう。この言葉を録音するためにレコーダーを用意してください。ガーディアン達は、あなたの心の中にある言葉やイメージを引き出すことができるようになります。できるだけ多くの人が宝石の本質、目的、効果を理解できるように、わかりやすい言葉を使うようにするでしょう」
「マイケル、あなたはガーディアンに質問をすることで、インタビューを指揮・指導する役割を担ってください。彼らは自分の宝石についてだけでなく、すべての宝石の働きを理解するために必要な情報を話してくれるでしょう。ガーディアンが語る知識は、各インタビューで得た知識の上に成り立ちます。そのため、読者の皆さんは本書の冒頭から各章を順番に読むことをお勧めします」「ところで、ガーディアンの中には、宝石をさらに区別するために、『アースストーン』と『オーシャンストーン』という名称を選ぶ人もいます。アースストーンは地球の岩石、オーシャンストーンは海の宝物す。まずはジェムストーン・ガーディアン、次にアースストーンのガーディアン、そして最後にオーシャンストーンのガーディアンにインタビュー
してください」
「他に何かアドバイスはありますか?」とマイケルが尋ねた。
「そうですね、もう一つあります。本を書きながら、今あなたの目に映っている輪の中央のクリスタル、そこから流れる光の中にいることを想像してください。この光は愛の柱。愛と光を込めて書き、作品を楽しんでください」
すると先ほどの老人、アメジストの守護者と思われる人物が、もう一度話しかけてきた。
「私もアドバイスしたいことがあります。あなたの仕事は、与えることも、奪うこともできます。もし奪うことを選んだら、あなたの選択肢は消えてしまいます。一方、与えることを選べば、選択肢は無限に広がります。選択肢の有無はあらゆる所に反映されるからです」
「選択肢の多い少ないにかかわらず、課題を成功させるための鍵は『集中力』です。今回は本の完成に言及していますが、このアドバイスはあらゆるプロジェクトに応用できます」
そして、栗色のローブをまとったマスターは、私達が輪から離れるタイミングを告げた。私達はその場を離れ、ガーディアン達は再び話し合いに戻った。
「最初のインタビューは、クオーツのガーディアンにお願いします。インタビューの時間を決め、スピリットと一緒に待ち合わせ場所まで行くことを忘れないでください」
すると突然ビジョンは消え去り、再びリビングルームが私の意識の焦点となった。私は数分間、座ったまま目をつむり今経験したことを振り返りながら胸の高鳴りを静めようとした。マイケルと私は、まもなくクオーツの守護者と出会い、人生最大の冒険を始めることになるのだ。
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