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森喜朗さんの女性蔑視と日本社会の根深い年齢差別と『RGB 最強の85才』

森喜朗東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の女性蔑視発言はとんでもないものだし、そのあとの釈明会見もひどいものでした。そのことに異論はないし、即刻やめてもらいたいです。

それはさておき、ここにはそれ以上に根深い問題があると『RGB 最強の85才』とのつながりで感じたので書いておきたいと思います。

女性差別の存在を未だに認識してない人々

ちょうど昨日Eテレでアメリカの元最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグについてのドキュメンタリー『RGB 最強の85才』(の前編)をやっていましたが、この映画と今回の問題を鑑みると、彼女が1970年代からずっと身を捧げてきた男女平等を求める戦いはまだまだ終わらないと思わざるを得ません。

この映画の中で彼女は70年代の最高裁判事たちを「差別が存在していることすらわかっていない男性」と評しています。

森さんの言動を見聞きしていると未だにその状態にあり、彼の発言があったとき笑い声がおこった(https://m.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_601c956ac5b66c385ef80bb8)のだとするとJOCの評議員の中には同じような認識の人が何割かいるのでしょう。そんな人たちが多様性を重んじるオリンピックに携わっているなんて悪い冗談としか思えません。

森さんはもちろん、その事がわからない人にはぜひ『RGB 最強の85才』をみて、自分の考えが間違っているとわかってほしい。それでもわからない人も多いのだと思いますが。

もちろん、今回の問題に憤っている人にもぜひ見てほしい。そういう人には痛快な映画なので。

日本社会の年齢差別

ただ、今回の「森問題」を見ながら『RGB 最強の85才』と共通する違和感も覚えました。それは、森さんに対して年齢を理由に彼に身を引くよう求める声が(SNSを中心に)多かったことです。

私は森さんの立場にある人がああいう発言をしたなら、80代でも50代でも20代でもやめるべきだと思います。そもそもそういう発言を許す組織自体もおかしいと思います。

でも、それを年齢の問題にしてしまうのが日本社会の問題点なのです。

『RGB 最強の85才』で違和感を感じたのはその邦題です。原題は単に『RGB』となっていて年齢には言及されていないのに、日本では「85才」が強調されている。RGBの知名度がそこまでないので年齢を入れることでわかりやすくなるという効果があることはわかるのですがが、この邦題は彼女の思想と相容れないのではないかと思うのです。

映画の中で彼女も年齢を理由に最高裁判事を辞めるように言われたことがあるというエピソードが出てきます。しかし彼女自身は年齢ではなく、自分が満足な仕事ができなくなったら辞めると話すのです。彼女は年齢を理由にしない。もちろん加齢に伴って能力は衰えるでしょうが、評価の基準となるのはあくまで年齢ではなく能力なのです。

そんな彼女の映画に「85歳なのにすごい」という意味の「最強の85才」という副題をつけてしまうところに日本社会の差別意識の根深さを感じました。

日本社会では年令によって人を評価することが当たり前になっている気がしますが、それは「年齢差別が存在することすらわかっていな人たち」が多いからではないでしょうか。

森さんに代表される「高齢の男性」の「女性差別的傾向」はもちろん問題ですが、この言説に潜んでいる年齢差別に対して無批判なのもまた問題だと思いました。

(Top Photo by Sara Cottle on Unsplash

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