自分の可能性にかけられるか。プロを目指す『バレエボーイズ』が将来に悩む姿に共感する。
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ノルウェーの首都オスロでバレエスクールに通う3人の少年、ルーカス、シーベルト、トルゲート。女子が多いバレエスクールの中で数少ない男子の3人はとても仲がよく、男子更衣室が一番楽しいと話します。
3人は同じ学校で今年中学を卒業することに。3人ともプロのダンサーを目指したい思いはあるものの、進路には悩みが。成績の振るわないシーベルトは勉強のため夏休みが終わるとバレエスクールに来なくなってしまいます。かたやルーカスは北欧のバレエ大会で優勝、3人はいったいどういう選択をするのでしょうか。
将来に悩む14歳の少年たちの姿を描いた青春ドキュメンタリーで、良質なテレビドキュメンタリーのような味わいです。
打ち込んでいるものがバレエというのは男の子にしては珍しいですが、夢を持ってその夢に向かっていくか、もっと可能性が広がる選択肢を選ぶか、将来について悩むというのは多くの人が経験することではないでしょうか。同じ夢を持つ仲良しの3人ですが、その才能も家庭環境も違い、その答えは自分で出すしかありません。
バレエの素人がみても、3人の中でルーカスが際立っていることは明らかで、3人もそのことを認識しています。だからシーベルトとトルゲートはプロのダンサー以外の選択肢を視野に入れざるを得ません。
こういう経験も多くの人がしていることかもしれません。自分を遥かに凌駕する才能に出会って自分の限界を知る。その限界の中で自分に何ができるのか、自分は何をやりたいのかを考えなければならない。だから、見ているとどうしてもシーベルトやトルゲートに共感が行きがちになります。
でもルーカスも才能があるなりの悩みがあって、それはプロのダンサーになるかどうかではなく、どうやってなるか。家族や友だちを大切にするルーカスは自分を第一にするか、周りを第一にするかそこで悩むのです。
この映画は中学を卒業してその先に進む少年たちをリアルタイムで捉えたドキュメンタリーなので、見ている方も彼らがどんな選択をするのか、選択はあっていたのか(受験に成功するかどうか)をハラハラしながら見ることになります。
その点で、見ていて面白いし、爽やかだし、いい映画だなと思いました。
ただ、ここから何かを得られるかと言うと、少年たちの頑張る姿を見て、俺も頑張らないとなと思うくらいで、特別になにかあるというわけではないかなという気はします。
まあそういう映画もまた良し。これはこれで未来を感じられる映画な気がしました。作られて6年が経って彼らはいま20歳くらいになってるはず。彼らのその後を追ったドキュメンタリーがあったらそれはそれで見たいな。
『バレエボーイズ』
2014年/ノルウェー/75分
監督:ケネス・エルベバック
音楽:ヘンリク・スクラム
出演:ルーカス・ビヨルンボー、シーベルト・ロレンツ・ガルシア、トルゲート・ルンド
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