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シリーズ第1弾 『受領委任制度』理解してますか?


※今回は接骨院勤務や今後開業予定の先生に向けたnoteです。


昨今の柔道整復師による不正請求をはじめとした業界の暗い一面がSNSでも多く取り上げられ、心底嫌になりますね。

柔道整復師なのにそもそも整体院として開業する先生も多く、「接骨院」としての業界が衰退していくことを憂慮しています…


私は柔道整復師として、「接骨院」という業態で健康保険を取り扱うことで社会的責任を全うしたいと思っています。

その為には、私一人がルールを守り正しい事をしていても力が足りません。

さらに開業権がある我々にとって正しく保険請求に関する知識を教えてもらう機会がありません。

そこで微々たる力かもしれませんが、柔整8年目で2万件以上のレセプト作業から机上の空論ではない正しい知識や運営において必要な知識・経験を多くの先生に知って頂きたいと思います。

今回は超基礎編 ~受領委任制度~ について解説していきます。


1.接骨院は『療養費』


受領委任制度を語る上で、【医療費】と【療養費】の違いを知っていなければいけません。

簡単にわかりやすく説明しますね。


医療費とは、医療サービスという「現物」を給付されるものです。

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例えば、風邪で内科にかかった際に診察・投薬といった医療サービス(現物)を受け、3割負担なら3割分の料金を支払います。


療養費とは、患者さんが負担した療養の費用について、後で「現金」給付を行うものです。

→これを『償還払い』といいます。

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画像引用:https://www.aiwairyo.com/staffblog/syokan-jyuryoinin.html

接骨院では本来10割分支払って頂き、3割負担なら7割を保険者に直接請求することが原則となっています。

ここで問題となるのが、

・患者さんが一時的に全額自己負担しなければいけない
・保険者への毎月の請求が大変

痛みで辛い思いをしている患者さん自身の金銭的・事務的負担が大きいんですね。

ですから昔から地域に根付き、国民に信頼されている接骨院(柔道整復師)の療養費のみ『協定』を結び、それに基づいて患者さん本人が健康保険組合に請求する手間を柔道整復師に委任する制度が作られました。

~補足~
※(社)都道府県柔道整復師会に所属の柔道整復師は『協定』
※(社)日本柔道整復師会の会員以外は地方厚生局との『契約』

→これを『受領委任制度』といいます。

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画像引用:https://www.aiwairyo.com/staffblog/syokan-jyuryoinin.html

柔道整復師に委任する訳ですから患者さん本人のサインが必要です。

そして「療養費支給申請書:レセプト」は毎月1枚必要です。

これで毎月サインを頂く理由がわかりますね。


2.健保組合の償還払いに戻す問題


最近言われていますね。

これは柔道整復師が受領委任制度をいいことに痛めてもいない部位を請求したり施術日を水増ししたりする不正請求が多発したからです。

そもそも不正請求が問題ですが、

償還払いにしたら保険者が療養費支給対象かどうか決めるし、戻したら良いんじゃない?療養費削減になるし。

というのが発端です。


ここで慌てる柔道整復師が存在します。

保険が使えなくなる!!と。

そもそも保険の取り扱いが無くなるわけではありません。

それに冷静に考えて頂きたいのが、受領委任制度は誰の為に作られた制度なのか。煩雑な償還払いによる患者負担を減らすための制度です。


つまり患者さんのための制度です。

柔整師のためでも保険者のためでもありません。


実際に大企業の健康保険組合は償還払いに戻すといった情報もありますが、おそらくフェードアウトしていくと考えています。

なぜなら保険者においてあまりメリットがありません。

被保険者(患者さん)からの不平不満、毎月被保険者から送られる書類関係の処理作業増加、被保険者へ還付する際の振り込み手数料など、企業においてもメリットが少ない為、人員や資金の豊富な大企業止まりでしょう。

そして健保組合連合全体での取り組みとして機能しなくなり、結局今まで通りの受領委任制度として継続されるでしょう。

ですがこれだけ大々的にしてますから、本当にいくつかの企業では償還払いに戻す動きになるのは間違いないでしょうね。


私はこの問題をあまり気にしていません。

むしろこれに便乗したやはり接骨院は「完全自費移行」だ!!というコンサルに無駄なお金を払う先生がいないか心配です(笑)


「知っている」は武器ですね。


3.『白紙委任』は不正?


患者さん本人が委任する為にサインをしますが、原則施術にかかった月の最終通院日に、

・どこの部位の施術か?
・来院日はあっているか?
・支払った額はあっているか?

など間違いがないか確認してもらってからサインを頂かないといけません。


ここで問題が発生します。

・患者さんが急に来なくなっちゃった…
・遠くてサインしに行くのがめんどくさいと言われた…
・患者さんが亡くなってしまった…

患者さんにサインをもらえません。どうしましょう。保険者に申請できません。


先生はこれで泣き寝入りしますか?

これじゃ接骨院の運営がままならないですよね?

そこでこういった運営上致し方ない、スムーズな運営をする為に月の初めにレセプトが白紙の状態でサインを頂いても差し支えないと【内閣参質168第15号】にて厚生労働省が見解を述べています。


最近でもごくまれに「白紙委任」は不正だ!!と語気を強めて言ってくる保険者が存在しますが、なんら問題ありません。

知らない先生は悪いことをしているんじゃないかと心配する必要はありません。


ぜひ堂々と毎月のレセプト業務として行ってください。



いかがでしたでしょうか。

そんなの知ってるよ!と思った先生、その通りです。

接骨院の院長をしていて保険請求をしているなら、当然知ってないといけません。

ですが、理解していない先生が多いのも事実です。

今後こういった当たり前の事ですが、「恥ずかしくて聞けない」「正直分かっていない」という先生向けに記載していきます。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。


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