翁長知事、日本人のアイデンティティ問い続けた

3万5000人が集結した「戦後70年止めよう辺野古新基地建設!沖縄県民大会」(2015年5月)で翁長雄志沖縄県知事はあいさつの最後を次の言葉で締めくくった。

「うちなーちゅ、うしぇーてぇーないびらんどー」 (沖縄の人をないがしろにしてはいけませんよ)『戦う民意』

本土の人からすると翁長知事があいさつで述べた琉球方言は、外国語のような印象かもしれない。が、琉球方言はれっきとした日本語の方言なのだ。

言語学者として世界的に著名な服部史郎博士(一九〇八~一九九五年)は、『日本語の系統』で日本語と琉球方言の親族関係は十分な証拠が存在すると明言している。

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この両言語は、形態論的構造、シンタックス的特徴が非常に酷似しているばかりでなく、基礎的な語彙が一致している。

『日本語の系統』 ※シンタックス=統語法(句、節・文の構成法、法則)

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言語学者の外間守善氏は、琉球方言は日本語の方言の一つであると『沖縄の言葉と歴史』で述べている。本土方言と琉球方言の間には、音韻に厳格な対応関係があり、文法、文構成の法則などすべてにわたり言語の同一性、類似性が検証できるという。外間氏は、本土の言葉と別れ独自の琉球方言となったのは二、三世紀~六、七世紀と推定している。

翁長知事は、日本語の方言、琉球方言で話したのは、沖縄のアイデンティティを表現するためだったのだろう。

翁長知事が意識したのかはわからないが、日本語方言の一つである琉球方言で発言することで、日本人、大和人のアイデンティティも呼び起こしたかったのではないだろうか?

辺野古移設反対を表明し推進した翁長知事は、左翼知事と思われがちだが、もともと自民党で保守の人。自民党県連幹事長を歴任し、大田知事と激しく対峙した人物でもある。

知事選で稲嶺氏を擁立し選対事務総長として現職の大田知事を倒したのが翁長氏だった。

翁長氏の著書『戦う民意』に「沖縄問題を国政の真ん中に据えたのは、大田知事の政治判断」と大田知事を評価する一方「イデオロギーに偏りすぎるきらいがあり」と疑問を投げかけている。

日米安保の必要性は十分認識しているし、沖縄から米軍基地を全部撤退させるという考え方はしていない。応分の負担はしなければならないが、「沖縄だけに基地を押し付けるのはおかしい。安保大事と言うならば本土の人も基地負担しよう」というのが翁長知事のスタンス。

辺野古移設反対は、沖縄人のアイデンティティの為だけではない。

日本人のアイデンティティが問われていることを、本土の人はもっと認識すべきだろう。

日本人が、日本を誇りに思うなら、米国におかしい、疑問に思うことは率直に米国に進言することは当然ではないか。

日本人のアイデンティティを問い続けたのが翁長雄志知事だった。

翁長雄志・沖縄県知事のご冥福をお祈りいたします。

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-778660.html

https://dot.asahi.com/wa/2018080900019.html?page=5

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