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“ひきこもり”長期高齢化の時代の陰で

ちょっと前にさるところに寄稿した原稿をもとに加筆修正しました。文中のデータが少し古いのですが、どうもすみません。

コロナ後をにらんで、おそらく“ひきこもり”の身の上にも大きな葛藤や混乱が巻き起こると思われます。そのことについては、僕がやっているひきこもり支援の家族会の7月のテーマにもしようと思っていて、その前後、できれば来週かその後くらいにこの場でも書きたいと思っています。

その理解につなげるためにも、ひきこもりの理解を確認するために、この記事をアップしようと思います。

●高齢化の進む“ひきこもり”


 一般に“ひきこもり”とは、他人や社会と関わりを持たず、自立・自活しないで、長期間孤立している人のことをいう。


 2016年に内閣府が行なったひきこもりの調査によると、15歳〜39歳のひきこもりの人の数は、全国で約54万人との推計が出された。ただ、これには40歳以上の高齢化の進行したひきこもりの数は含まれていない。そのうえ数多くのひきこもりが、医療や支援機関にかかわらずに隠れるように暮らし、なかなか統計にはあらわれない。


 正確な数字は分からない。

 しかし、僕は日本国内でひきこもりに悩み苦しむ人の数は100〜200万人はいるのではないかと考えている。ひきこもりが日本で話題になったのは、1990年代の後半からだが、ひきこもりの総数はまだ増加傾向にあるのではないかと考えられる。


 この国の医療や福祉は、必ずしもひきこもり問題の改善に成功していない。


 自分から医療や支援機関に足を運べる、比較的症状の軽いひきこもり(タイプ・ゼロ〜2)については、治癒や改善にいたるケースは多く出ている。しかし、長期間孤立する重篤なケース(タイプ3、4。詳細はCVNちゃんねるの①の無料放送を参照)については、その多くがあまり改善しないまま40代、50代と高齢化の一途にあるとみられる。

 長期ひきこもりを抱える家族の内部では、時には暴力、時には深刻な思考停止や停滞の問題が生じる。当事者はもちろんのこと、家族の苦痛や苦労も筆舌に尽くしがたいものがある。


 厚生労働省等の調べでは、ひきこもりのおよそ3分の1に精神疾患(統合失調症やうつ病等)、3分の1に発達障害、さらに残りの約3分の1にはパーソナリティ障害などがみられるという。

 原因は様々だが、学校や職場でイジメを受けたり、ネグレクト(十分な愛情やコミュニケーションの経験を家庭内で得られない等)などの一種の虐待を受けた経験を持つ当事者が少なくない。

●10年以上通い続けてようやく面談


 僕は2000年頃からひきこもり支援に携わり始めた。ひきこもりの多くは外出が困難なため、支援の中心は当初から家庭訪問(アウトリーチ)となった。そのほかに毎月家族教室や個別(家族、当事者)相談、若者の集まりを開いている。


 当事者への支援では、本人の得意な分野を伸ばしたり、成長をはかることを心がけていて、支援の過程でひきこもりの当事者とアジアや沖縄の片田舎を一緒に旅して歩くことがある(海外へは年に7、8回。沖縄など国内へは年に20回ほど出かけている。コロナ前のこと)。

 もちろん、訪問開始当初はほぼ全てのひきこもり当事者は、海外旅行などする気は皆無だ。

 それどころか、家庭訪問をしても、半分以上は僕に顔を見せてもくれない(僕は本人が顔を見せてくれなくても、家庭訪問を実行することにしている)。

 だからと言って、無理やり扉をこじ開けて会っても全くの逆効果なので、訪問の回数を重ねて、丁寧に穏やかに、こちらの気持ちや誠意をわかってもらうように心がけている。そうすると、面談を重ねた後の改善の速度はかなり速いのではないかと思われる。

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サポートしていただければ幸いです。長期ひきこもりの訪問支援では公的な補助や助成にできるだけ頼らずに活動したいと考えています。サポート資金は若者との交流や治癒活動に使わせてもらいます。