見出し画像

社会福祉の落とし穴 B型作業所を突然クビに…

最近、埼玉県S市のさるB型の作業所に通う、ひきこもりがちの若者が、一度のトラブルで突然、契約解除(クビ)になり、一人暮らしをしていることもあって、経済的問題や深刻な孤立状態の到来で途方に暮れています。

きっかけは、土曜日の作業所での作業終了後、彼(A君)に突如、ある発作が起き、どうも作業所のスタッフに暴言を吐いてしまったようです。

ちなみに障害者の作業所には大きく2種類あって、A型作業所は雇用契約を結び、B型作業所は労働者としての雇用契約を結びません。一般にB型作業所は、比較的症状の重い人が通うところで、突然休むこともできる、融通の効くところです。

一般に精神障害を患って治療後、就労する際、まず就労移行支援事業所へ通い、仕事の仕方やマナーなどを一から学びます。その後、障害者枠での企業や自治体などへの就労、A型作業所、B型作業所などへの進路に分かれます。

さて、A君は精神障害者手帳の1級を持っているそうで、特に解離性の症状というか障害というか、それが深刻です。つまり、多重人格を患っているわけです。1級は最も障害の程度の重いものです。

とはいえ、作業所へ通い始めてから、家の外で本格的な解離をしたことはなかったそうです。症状はすこしおさまっていたとA君は話しています。それが、最近の異常な気候や、コロナ禍のストレスで、ついに解離してしまったということです。

暴言を吐いたようですが、本人はまったく覚えていません。副人格がでてきて、暴言を吐いたようです。

その日は帰宅して、月曜日の午前10時頃でしょうか。A君は作業所から電話をもらいました。その電話をもらった時はたまたま僕もそばにいました。とはいえ、僕は運転中で、A君は車の助手席にいたわけです。

そこでA君は突然、「あなたとの契約の解除を決めました。もう来ないでください」と宣告されたわけです。

A君は驚愕しました。そして、あれは解離人格がしでかしたことで、自分(主人格)はまったく記憶にないこと。一度の暴言を理由に契約解除とは厳しすぎるので、なんとかもう一度チャンスをもらえないかということ。自分に問題があるなら、謹慎でもなんでもしますから、首だけにはしないでくれ、ということ。

A君は暴言をしたときの状況も確認しました。そして、たしかにスタッフ一人に対して暴言をどうやら話してしまったのですが、他のメンバー(作業所に通う人)の前では暴言はしていないこと。暴言をしたことを知るのは、言われたスタッフ一人ということ。そのスタッフの判断のみで、A君はいきなり契約解除になってしまうということ。もう一回話をさせてほしいとA君は言ったが、それは許可できないということ。

A君はそれでも粘って「3分間だけ時間をください」と作業所の人に電話で懇願しました。しかし、かえってきた言葉は「あと1分で正午の昼休みなので、1分で電話を切ります。これは契約解除の通告であって、話し合いをするものではありませんから、本当に切ります」となりました。

A君は釈然としませんでしたが、最後に「では先月5月分の給料はどうやって受け取ったらいいですか」と聞きました。すると、相手は混乱します。「作業所の事務所にうかがってもいいですか」とA君がいうと、「来ないでください。書留で送ります」と返事が返ってきて、電話は切られました。

書留の分だけ、経費やコストがかかってしまいそうな。ちなみに作業所の事務所はA君の近所で徒歩圏にあります。

この話は、あくまでA君から話を聞いただけですが、月曜日の電話での交渉の様子は僕も小耳にはさむことはできたので、だいたいこのようなやりとりでした。

ちなみにA君が話していた相手のスタッフは、その作業所の長(おさ)だと自分でいい、長は自分の判断で問題のある人の契約解除をできるのだ、と話しました。

僕が聞いたのはその辺までです。

A君の話だけで書くのはフェアでないかもしれません。もしかしたら、以前に多少の行き違いのやりとりは作業所とA君の間にあった“可能性”はあります。

ただ、問題はそこではなく、B型の作業所という精神障害者手帳を持つ人の最後のよりどころのような場所で、たった一度のスタッフとのトラブルでA君は仕事を失ったこと(月の収入は4万円あまりはあるということです。B型ではかなり破格です)。そして、 その契約解除の判断は理事会などにかけられたり、管轄する市に相談されることなく、たった一人の長(おさ)というスタッフの判断で行われたこと。さらには、本人が頭を下げてセカンドチャンスをくれるよう懇願しながら、とりつくシマもないこと。

その辺はちょっと問題があるかもしれないと感じました。かなり恣意的な契約解除に見えなくもありません。

ちなみにA君はアパートで一人暮らしをしていて、障害年金と作業所の給料で生活しています。生活保護は受けていません。

A君が解離性の問題を抱えていることは、当初から作業所には報告してあり、作業所では認知していました。

もっとも、僕の方でもまだA君の話しか聞いていないので、とりあえず、このブログではゆるやかに仮名で書かせてもらっています。A君はほかの障害者の人に比べて、自己主張をする傾向はあります。それが作業所に気に入られなかった可能性はあります。

また、月曜日の電話でのやりとりは、僕の目の前で行われたものでした。

このような福祉施設での問題は、例えば神奈川県の人に聞いたところ、神奈川では管轄している市町村のほうがチェックを欠かさないので、あまりないのではないか、と話していました。

とにもかくにも、障害者やひきこもりの立場からすると、まだまだ福祉の現場の壁は高くて、頑なな“障害”がそれなりにあるようです。

※もちろん、多くの作業所は真摯に障害者支援をしています。ただ、社会福祉の現場では、問題が発生することはしばしばあるだけのことです。

サポートしていただければ幸いです。長期ひきこもりの訪問支援では公的な補助や助成にできるだけ頼らずに活動したいと考えています。サポート資金は若者との交流や治癒活動に使わせてもらいます。