2022年度春季仏検1級一次試験 解説
今日は意識の低い育休ではなく、珍しく真面目な話し。6月19日に、妻と娘を2人家に残して、受験してきました。DALFと比べると、受験者の年齢層高め。
〔筆記試験〕
【1 名詞化】
名詞化は試験対策が難しかったのですが、最近『フランス語 名詞化表現宝典1192』という素晴らしい本が出たので必読です。ただ、今年度の4問のうち、同書に収録されているのは、⑶ bref→brièvetéだけでした。
⑴ stupéfaire→stupéfaction。他の名詞化として、
stupéfiant (m)=麻薬
がある。名詞を目的語にして書き換える際に、動詞としてprovoquerを使うのは、1級の名詞化では頻出。
⑵ relever→relèvement。他の名詞化として、
relevage (m)=引き上げること
relevé (m)=読み取り、記録
releveur, -euse =記録係
relève (f)=引継ぎ
などがある。releverは今後多義語でも出題されるか??
⑷ attribuer→attribution。
attribut (m)=属性、属詞
との混同に注意。
【2 多義語】(自己採点8点中2点)
⑴ essuyerの「(被害を)被る」という意味を問う問題。barman、comptoir、chiffonという語を知っていれば、「拭く」→essuyerに辿り着けるか。barmanって何かの専門用語かと思ったら、まさかの英語。
⑵ règlementの「規則」以外の意味を問う問題。Aは「解決、決着」、Bは「支払い、決済」。元の動詞réglerにも、「〜を解決する」と「〜を支払う」の意味がある。今後名詞化でも出題されるか??
⑶ entretenir=維持する、を問う問題。maintenirは積極的な動作を加えるものなので(『仏和大辞典』)、ここでは不適か。接頭辞の「main」と「entre」に注意。
⑷ 熟語の知識を問うもの。
Aはêtre dur d'oreille (= avoir l'oreille dure)=耳が遠い
Bはêtre dur à cuire=(「煮えにくい」から転じて、)手強い、したたかである
【3 前置詞】(自己採点8点中2点)
⑴ par endroits=所々で
⑵ se retrancher=身を守る、立て篭もる
se retrancher derrière une position=陣地に立て篭もる
se retrancher derrière les fortifications=城砦に立て篭もる
se retrancher derrière l'autorité de qqn=〜の権威を盾に取る
などなど。
⑶ à l'année=1年契約で
⑷ en rien=全く〜ない
【4 時事問題】(自己採点5点中0点)
全部間違えた! 出題される語彙が無限なので、対策不可能な気がします。時事問題の勉強に労力を割くくらいだったら、名詞化の勉強したり、書き取り試験の練習した方が点が伸びると思います。
⑴ la pression hospitalière / sanitaire
多くの人がmédicaleと答えたのでは??
⑵ les instruments à vent
à vent=「風力の」。moulin à vent=「風車」など。ちなみに「弦楽器」はles instruments à cordes。
⑶ les forces de l'ordre
Wiktionnaireを参照。« En France, la gendarmerie et la police sont les deux principales institutions qui constituent les forces de l’ordre. »とのこと。
⑷ le gaspillage alimentaire
⑸ l'énergie éolienne。形容詞éolienの語源は、ギリシャ神話から。名詞のéolienne (f)は、風力発電のための風車の意味で使われる。
https://fr.wikipedia.org/wiki/Éole
【5 動詞の変化】(自己採点10点中4点)
⑴ 過去の出来事なので複合過去。具体的にどのような事故で亡くなったかを示すときは、mourir dans un accident de……を使う。単に事故で亡くなったことを言う場合は、mourir d'un accident。
⑵ 同じく過去の出来事なので複合過去。se pencher sur=〜に関心を寄せる。
⑶ 主文の時制よりもさらに過去の出来事を指すので、大過去。griller un feu rouge=赤信号を無視する。
⑷ 名詞を修飾する現在分詞。このroulerは自動詞。
⑸ 過去の出来事なので複合過去。
【6 文の補充】(自己採点10点中8点)
騒音による被害について。
⑴ このpour + inf. は、結果・継起の用法。friser=もう少しで〜になる、危うく〜するところである。
⑵ facteur=要因。
⑶ vivreの他動詞の用法で、「〜を体験する、味わう」の意味。
⑷ affecterには様々な意味があるが、ここでは「〜に悪影響を及ぼす」の意味。
⑸ 本段落では、前段落で挙げた問題に対処するためのleviers(=梃子、手段)について述べている。段落の冒頭の導入部分。
【7 内容一致】(自己採点12点中12点)
⑴ 第2段落の内容に合致。
⑵ 第3段落冒頭の内容に合致。
⑶ 第1段落で、探査機が2021年に地表のサンプルを採取した旨が述べられているので、不一致。
⑷ 第2段落末尾の内容に合致。
⑸ 第3段落の記載によれば、5000〜10000kmではなく500〜1000kmになるので不一致。
⑹ 文章中に該当する記載がないので、不一致。
【8 長文要約】
⑴ 第1段落後半の内容をまとめる。試験の簡素化及び合格率の上昇の2点について説明。
⑵ 第3段落後半の内容をまとめる。父親の学歴と、子の高校での留年率の2点を挙げ、両者の関係を説明。
⑶ 2005年の報告書は、高学歴化による« destin économique et social »(第2段落)について述べているので、その点を明らかにする。なお、第4段落で筆者は、2021年のバカロレア取得者について、同様の将来が保証されるかは、定かではない旨を述べている。
【9 仏文和訳】
私の解答は以下のとおり。参考までに。
Étant rentré chez moi hier soir, j'ai trouvé qu'il était bien animé dans mon domicile. La famille de mon frère habitant aux alentours y est venue pour nous voir. Mon neveu, venant d'avoir six ans, entrera à l'école primaire l'année prochaine. Je me suis bien rendu compte qu'un enfant grandissait très rapidement.
模範解答例を見ると、その場で思いつくのは難しそうな表現がいくつか見られる。
・「にぎやかだ」=dans une vive effervescence
en effervescenceが熟語で、effervescenceに形容詞を付けると前置詞はenではなくdansを使い、不定冠詞を付ける、というよくある表現。
・「近くに」=dans le voisinage
類語として、à proximité、aux environsなど。
・「〜に顔を見せにくる」=faire un petit bonjour à qqn
類語として、faire un petit coucouなど。
・「6歳になったばかり」=avoir tout juste fêté ses six ans
・「小学校に入る」=entrer en primaire
・「〜とつくづく思う」=donner pleinement conscience de qqc
conscienceが無冠詞であることに注意。
解答例の« Cela m’a donné [……] avec laquelle les enfants grandissent. » の後半部分は、時制の一致はしてもしなくてもよいと思われる。grandissaientでも、おそらく間違いではないはず。
〔書き取り試験〕
正確に書き取るのが難しそうな表現もいくつかあります。
・a décollé [……] de Belgique ←Belgiqueは無冠詞。
・avion deux places=2人乗りの飛行機。avion à deux placesという言い方もあるが、前置詞なしでもよいらしい。
・l’aviation, les sciences, les technologies et les mathématiques ←1つ目の名詞は単数、あとは複数で、いずれも定冠詞。
〔聞き取り試験〕(自己採点30点中21点)
試験の記憶があやふやなので解説は省略。リスニングの登場人物がmédireとméditationを聴き間違えてたけど、そんな人いる??
1次試験なんとか合格できました。「1 名詞化」以外何の勉強もしてなかったけど。DALF C2にも以前合格したけど、仏検1級の方が難しくないか……?? 問われてる知識がやたらと多いし細かくて、準備に時間がかかる気がします。DALF C2は、事前に作文の解答例を暗記しておけば、なんとか書けるしなんとかしゃべれるので。留学を目指す人たちは、DALFの勉強をしておけばいいと思います。