帰り道
初めて入る彼女の部屋から聞く雨音は、しっとりと重くて、世界に2人だけしかいないんじゃないかと、そんな気がして、たまらなくドキドキした。
人生とは知ることだと思う。
だから新しいことをどんどん知りたい。
逆に、この世に知らないことが何一つなければ人生なんてかけらほども面白くないだろうなと思っている。
そういう意味でも幸せな日だった。
彼女のキスの仕方も、テレビを見ながらしてもらう膝枕の快適さも、彼女が寝る前にタイマー機能でテレビを消すことも、そしてそれらを知らなかったことすら、全部初めて知ったのだから。
朝目覚めると雨はほとんど止んでいて、窓の外に喧噪が走っていた。
「なんだ。2人だけじゃなかったんだ」とうんざりしたが、隣の温もりの心地よさ、そしてそれを切り裂く目覚まし時計の残酷さ、箕面から梅田まで直通の電車があること・・・
まだまだ知らないことが沢山あった事に嬉しくなった。
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