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「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」 (ルヴァンカップ第3節・浦和レッズ戦:0-0)

 自分の誕生日に試合があるというのは、どんな気分なんだろうか。

 この日が31歳の誕生日だった車屋紳太郎に、試合後のミックスゾーンでそんなことを尋ねてみた。

 こちらの問いかけに彼は「いや、あんまり・・・なんすかね」とニヒルな笑みを浮かべつつ、少しだけ考えてから、こう呟いた。

「一つ山を越えるというか・・・・この後に楽しみが待っているんでしょうけど」

・・・うん、わからない。まるでわからない。

 こちらの頭の中で、たくさんの「?」が浮かぶ。でも車屋ワールドに引き込まれる予感がしたので、期待に胸を膨らませながら相槌を打ち、次の言葉に備えておいた。

なぜなら、こういうときに必ず期待に添う「車屋語録」で返してくれるのが、シンタロウ・クルマヤだからである。

 彼は「いつもそうなんですよ」と、持論を話し始めた。

「クリスマスの次も、元旦もそうで、天皇杯があって・・・何かこう、楽しみの前には、何か必ずこうやって山がある感じがしますね」

・・・うん。

わかったような、わからないような。おそらくだが、人生において楽しいこと(誕生日)がある前には、常に何かしらの大きな一仕事がある、というのが彼の人生観なのだろう。「No pain, no gain(痛みなくして得るものなし)」と似たニュアンスで語ってくれたものだと思われる。

 そして「山がある感じ」とこの試合を評していたのは、それだけこの一戦に賭けていたからだ。

今年は横浜F・マリノスとの開幕戦でスタメンだったが、右ハムストリング肉離れにより負傷交代し、それにより戦線離脱を余儀なくされた。前節の札幌戦でようやく復帰したが、ベンチスタートで終盤の出場。最終ラインで気を吐きながら、チームの勝利を粘り強く支えている。

この試合ではスタメンとして、90分フル出場を果たした。

等々力での今季初勝利はならなかったが、それでも無失点で終えたことは守備陣として最低限の仕事を果たした自負もあるだろう。ただそのことを尋ねると、彼は点が取れなかったことに責任を口にした。

「点が取れなかったのは後ろの選手の責任でもあると思っています。そこはもっともっと前を助けられるようにしないといけない」

■「今日はそういう意識は強くて良かった」(車屋紳太郎)。なぜ勇気を持ってボールを受けると、チームはうまく回っていくのか。車屋が語ったチームに必要だったこと。

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