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「カメラを止めるな!」を語る:vol.6〜映画監督とサッカー監督の話。

どうも、いしかわごうです。

「カメラを止めるな!」を語るシリーズの第6回目です。

 6テイク目は8月17日でした。
この頃になると、金曜日の夜にカメ止めを観るというのが、もはやルーティーン化していましたね。拡大上映も目に見えて増えており、6テイク目は、この日がカメ止め上映日だったシアタス調布で鑑賞してきました。

 ■シアタス調布で6テイク目

 シアタス調布は、去年出来たばかりの新しい映画館です。

「ultiraスクリーン」なるものがあり、説明によれば、「まるで体を包み込むような高音質なサウンドと、大型スクリーンに映し出される高画質映像をお楽しみいただける音響・映像システム」とのこと。特大の画面で「カメラを止めるな!」を鑑賞するわけです。

 これだけ社会現象になっていくと様々な映画の感想を目にします。なかには意外な意見を目にするようになりました。そのひとつが「観に行ったけど、前半で画面酔いをしてしまった」というもの。

 リピーターの自分が毎回大丈夫だったので気にしていなかったのですが、よくよく考えたら、自分は大きいスクリーンで見ていなかったんですね。鑑賞した過去5回の内訳は4回が池袋のシネマ・ロサ、1回が川崎チネチッタです。シネマロサはミニシアターですし、チネチッタも当時はまだ中型の部屋でしたし、どの回も常に後方の席で見ていました。

この作品は前半がワンカットぶっ通しで展開されていきますし、手ぶれしている場面も多いんですよね。大きいスクリーンを前方の席で見ていたら、確かに酔うかもしれません。

 とはいえ、もともとはミニシアター2館の単館上映で終わるはずだった作品で、全国展開されること自体が、作り手側としても想定外だったと思います。大画面で上映されることなど想定しないで制作した作品だったがゆえに、起きてしまった問題とも言えます。なので、不安な方は酔い止めを服用してみるのもよいかもしれません。

 さて。
シアタス調布に行ってみると、上映される館内はとにかく広かったですね。特大のスクリーンと、500席もの座席数。ロサでばかり見ていた自分は、「・・・始まるのはミッション・インポッシブルだったりしないよね?」ととまどうほどの大きさ。

ただ上映が始まると、前列を除いてほぼ埋まってました。それでいて、音質はクリア。そして大観客数でも安定の爆笑。上映後は拍手が起きてました。ただあの特大スクリーンを前列で見たら酔うかもしれないですね。

上映後、ロビーで休憩していたら、若者に話しかけられました。フロンターレサポーターだったようです。さすが調布。

必死すぎる宣伝普及活動の甲斐もあり、フロンターレサポーターにも浸透してきたようです・笑。

以下は、成果の一部(笑)。

ちなみに川崎フロンターレといえば、15日のサガン鳥栖戦で「川崎の車窓から」という電車企画を実施しました。

陸送して展示された電車の車内広告に、「カメラを止めるな!」のパロディがあったんですよ。

「カメラを止めるな!」ではなく、「カレラを止めるな!」。フットワークが軽いですね。それに上田監督が反応してくれる一コマも。

・・・・お褒めの言葉をいただいてるよ、フロンターレスタッフ!

■監督という職業を考える

ここから先は、コラムみたいなものを。

サッカーライターという仕事柄、自分はよく「監督」という肩書きの職業について考えるんですね。

 というのも、同じ「監督」という肩書きでも、サッカーと野球では求められる能力が違っていることが多いことに気付かされるからです。

 どういうことか。
例えば、試合中の采配。野球の監督ならば、試合中に問題やアクシデントが起きたとき、ベンチからタイムをかけたり、1打席ごとにサインを出したりと、自分なりの指示を選手に向かって出すことができます。その場、その場での修正やコントロールが、わりと効きやすいスポーツです。

 これって、よくよく考えたら、1シーンの撮影ごとにカメラを止めて、その都度に演技を指導できる映画監督のスタイルともどこか似ていますよね。野球の監督というのは、映画型の監督に近いスタイルだと思うんです。

 一方で、これがサッカーの監督だとどうなるか。
いったん試合が始まってしまうと、基本的にゲームはノンストップです。もちろん指示や修正は試合中にも出せますが、ポジションによっては声が届かない選手もいます。なので細かい変更までチーム全体に伝え切れるのは、ハーフタイムぐらいしかないかもしれません。あるいは、選手交代などの采配で変化をつけるのが精一杯です。

つまり、サッカーの場合、試合中に監督がコントロールできる範囲は、野球に比べると、かなり限られているとも言えます。だからサッカーの監督は、日々の練習を通じて、選手たちに戦術などを浸透させておくのが、仕事の多くを占めます。そうやって本番のピッチで発揮させることができるのが、いわゆる「良い監督」だとも言えます。

■サッカー監督=舞台型?野球監督=映画型?

 そうやって比較すると、野球の監督を「映画型」とするならば、サッカーの監督は、「舞台型」と言えるかもしれません。舞台では一度、幕が上がってしまったら、演者に託すしかありません。サッカーの監督が、試合が始まるまでに選手たちに戦術などを浸透させておく必要があるように、舞台監督もまた、舞台が始まるまでに演者に浸透させておく必要があります。そうやって見ていくと、サッカーの監督と舞台の監督は似ているなと思うんです。

 そして、この「カメラを止めるな!」。映画なんですけど、前半はワンカットで物語が流れていくので、舞台的でもあるんですよね。もともとの着想を舞台から得ているのだからそれもそのはずなんですが、上田監督は、その舞台のスタイルをうまく映画に変換しています。しかも違和感を感じさせないぐらい、心地よくスッと入ってくる作品になっています。

 なんでこんなに心地よく見れるのか。

理由はいろいろあると思います。まず全体の構成がとてもしっかりしているし、物語のテンポが良いんですね。脚本は緻密だし、演出も見事に噛み合っている。サッカーや野球でいえば、コンセプトがしっかりしていて、戦術のこだわりもちゃんと落とし込んでいるチームの試合を見るような感覚です。これは上田監督の力量ですね。

 その上で感じるのが、個性的な役者がそれぞれが生き生きとしていることです。サッカーで言えば、ピッチでプレーしている11人の選手たちが生き生きとしている。この「カメラを止めるな!」も同じで、12人の役者全員が役割を果たしながら、それぞれにちゃんと見せ場があります。

上田監督のインタビューによれば、現場では役者一人一人に気をかけるタイプだそうです。役者が納得していないときは表情でわかるし、それに気づいたらわだかまりを聞いて、解消するようにしていると。きっとキャストをマネジメントする技術も長けているのだと思います。そういうちょっとした気持ちのズレも画面に映るのが映画ですから。

 サッカーも野球も、いいチームというのは気持ちがひとつになっているように感じさせるものです。監督も、選手も、そしてサポーターも。この映画も、ラストに向かって出演者を含めたスタッフの「一体感」を感じさせるんですよね。観客も含めて。だから、劇場で見たくなる。

今後、DVDやネット配信でも見れるかもしれませんが、やっぱり映画館でみんなで見るからこその体験作品なんですよね、「カメラを止めるな!」は。

だから、まだ見ていない人は「流行り物は見たくない!」と天の邪鬼にならず、劇場に足を運んで体験しましょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

以上、「カメラを止めるな!」を語るシリーズの第6回目でした・・・そして、一体いつまで続くのだろうか?

※「カメラを止めるな!」を語るシリーズのバックナンバーはこちらです(「いいね!」や「オススメ」をしていただけると嬉しいです)。

・「カメラを止めるな!」を語る:vol.1〜出会いと初鑑賞を振り返ってみる。

・「カメラを止めるな!」を語る:vol.2〜手に負えないことをしないで、何が映画だ。

「カメラを止めるな!」を語る:vol.3〜最高すぎる空間だった「絶叫ナイト」を振り返る。

・「カメラを止めるな!」を語る:vol.4〜人生のカメラを止めるな! それがアツアツポイントです。

・「カメラを止めるな!」を語る:vol.5〜カメ止めTシャツをゲットするまでのあれこれ。


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