「燃える瞳を持ち続けて」 （リーグ第20節・横浜FC戦:3-0）

等々力陸上競技場での横浜FC戦は3-0で勝利。

語りたいトピックはいくつもあるのですが（マッチとか）、まずはピッチで繰り広げられていた戦術的な側面から言及していきたいと思います。

この試合で横浜FCが採用する５バックを崩すためのポイントとして、僕はサイドバックに注目していました。

〔3-4-2-1〕システムを採用する横浜FCは、サイドにいるウイングバックが早く最終ラインに落ちる形で守備ブロックを構えます。つまり〔5-2-3〕システムになるんですね。

同じ５バックでも、前節に対戦した名古屋グランパスであれば、サイドにあるボールに対して早いタイミングでウィングバックが前に出てくるのですが、横浜FCの場合は、素早く後ろに引いて５バックを形成してきます。

　〔5-2-3〕システムの場合、中盤のダブルボランチの「脇」になるサイドのエリアは構造的に空きます。そのため、５バック攻略のポイントとして、この場所で攻撃の起点を作っていくことが一つの狙いになります。

　では、このエリアを活用する選手は誰か。
お互いのシステムの噛み合わせでいうと、〔4-3-3〕システムのフロンターレでは、サイドバックが高い位置を取った際にフリーでボールを受けやすくなります。具体的に言えば、山根視来と登里享平です。

　サイドバックが高い位置でボールを持った時、５バックの崩しにどういう変化をつけていくのか。そこは、この試合で注目していたポイントでした。

　そしてその両サイドバックの仕掛けから、ゲームが動きます。

最初にチャンスを作ったのは右サイドバックの山根視来です。試合後、５バック崩しの狙いについて聞くと、彼はこう明かしてくれました。

「相手は3バックなので、僕に対して誰が出てくるかのかを考えながら3枚の脇っていうところが一つ狙い目でした。そこを意識しつつ横に動かしていく」

前半11分、山根視来がジョアン・シミッチとパス交換を入れて時間を作ります。中盤でフリーになった山根視来は、中盤のエリアから逆サイドに向かってクロスボールを供給。

　クロスで狙った先は、中央にいた山田新か。それとも、その奥から走り込んでいた左ウイングの宮代大聖か。早いタイミングで不意に背後を突かれた横浜FCの守備陣は、戻りながら必死にクリアします。それがコーナーキックに。この局面についてピンポイントで聞くと、山根視来はこう振り返ります。

「パスをリターンでもらった時に、自分のとこで1回（パス交換で）時間が空きました。（相手の）ラインが高いと思ってたので、背後に蹴ったほうがいいなと思って狙いました。あれはディフェンダーにとってすごく嫌なボールなので。（宮代と山田の）2人が走っているのが見えましたね。（2人は）いつも走ってくれるので、（合うかどうかは）出し手次第かなと思います」

　待望の先制点は、この揺さぶりで獲得したコーナーキックから生まれました。

　決めたのは山田新。アシストしたのは左サイドバックの登里享平です。

ショートコーナーで左サイドからポイントを作ると、ボックス付近でボールを持った瀬古樹がフリーになっている登里享平にパス。左サイドで十分な時間があったノボリが、狙い澄ましたクロスを中央に。

　家長昭博の後ろから鋭く飛び込んだ山田新が、身体のどこか（骨盤あたりらしい）にボールを当ててゴールネットを豪快に揺らします。山田新らしく、泥臭くねじ込んだ一撃です。

　試合後のミックスゾーンでは、あのアシスト場面を登里享平に聞いてみました。あのクロスは家長昭博を狙ったのか。それとも、奥にいた山田新を狙ったものだったのか。

「2人が入っていたのが見えていて、奥にいたシンを狙って出しました。練習からあの動きをしてくれたので、タイミングもそうですし、そこしか狙ってないです。そこに走ると思って出しました」（登里享平）

　練習通りだったとノボリが話したように、受け手の山田新も予感はしていたと言います。「ノボリさんのボールが良かったかなと思います」と出し手のタイミングを絶賛しています。

「ノボリさんが持った時点で、あそこに来るなっていう風には感じていました。そこ（場所）を開ける動きをしてから、ベストのタイミングで、ベストなボールを出してくれたので。ノボリさんのボールが良かったかなと思います」（山田新）

　山田新にとって等々力でのプロ初ゴール。それは両サイドバックによる揺さぶりから生まれた先制弾でもありました。

　では、この試合のポイントを、さらに深掘りしていきたいと思います。

■前節からのスタメン３人変更に込められていた、あるメッセージ。