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鬼木フロンターレを読み解く講座vol.8〜攻撃だけではなく守備でも魅了する。噛み合った攻守の両輪がもたらした初栄冠。

 今回で、2017年度の振り返りは完結です。

 最後に語りたいのは、やはり初優勝が決まった大宮アルディージャ戦です。もちろん、リーグ優勝はそれまでの積み重ねだったので、この試合が全てではありません。ですが、クラブの歴史が大きく変わったこの試合を抜きには、やはり語れませんからね。

 この時の状況を整理すると、2位の川崎フロンターレとしては、まず大宮に勝つこと。その上で、首位・鹿島アントラーズの結果待ちという条件でした。鹿島が引き分けならば得失点差で上回り、鹿島が負けならば勝ち点で上回ることになります。いずれにせよ、勝利しなければ優勝の可能性は消滅することになります。

 だからなのでしょう。この最終節に向けて鬼木達監督が語った言葉も、実にシンプルなものでした。

「ラスト1試合なので、今年やってきたことですね。連戦ではあるが、それを抜きにして、自分たちがやってきたものをどれだけ出せるか。それプラス、自分たちのサッカーを出すことが結果につながる」

 当然ですが、シーズン最終盤ともなれば、レギュラーで出ている選手たちはみな満身創痍です。さらに浦和がACLを勝ち抜いていた関係でリーグ戦の日程がずれ込み、この最終盤は連戦の過密日程にもなっていました。

 中でも出場が危ぶまれていたのが、リーグ広島戦で負った右太腿痛が再発していたGKチョン・ソンリョンです。前節浦和戦でも試合終盤はゴールキックを谷口彰悟に任せるなど、決して軽い痛みではなさそうでした。しかし彼は「これ以上の怪我でも出たことがあるので」と涼しい顔で強行出場を口にしていました。「これ以上の怪我」とは、2012年のロンドン五輪3位決定戦のときだそうです。

 当時の対戦相手は奇しくもU-23日本代表。左肩のじん帯が損傷しながらも痛み止めを打って出場。第2GKとしてベンチ入りしていた安藤駿介は、「スカウティングではソンリョンが出場しないと聞いていたのに・・・」と驚いたそうです。U-23韓国代表のゴールマウスを守ったチョン・ソンリョンが完封をおさめて、関塚ジャパンの銅メダル獲得の夢を打ち砕きました。そして、この大宮戦前日も彼の頭の中には出場する選択肢しかありませんでした。

「監督も言っていたが、一年間やってきたことに自信を持って、自分たちのサッカーを出すこと。そして強い気持ちを持つこと。自分たちは勝たないと何も達成できないので、スタートから終わりまで100%でやる。最善を尽くしたことによって、良い結果が生まれているのだと思っている」

【DAZN提供】J1-第34節vs大宮アルディージャ_20171202


こちらはクラブオリジナルのハイライト映像。【フロンターレオリジナル】J1-第34節vs大宮アルディージャ

優勝直後、選手やスタッフと抱き合って喜んだ後、鬼木監督はいったんベンチに戻って水を飲んでいたんですね。風呂桶を掲げて、胴上げされる様子も収録されています。

 優勝が決まったとき、中村憲剛選手は言っていました。

「どのタイトルも価値はあるし、どれも嬉しかったと思う。でも等々力で優勝できたのがうれしい。アウェイで優勝できても、きっとうれしかったんだろうけど、等々力で決められたのが格別だった」

では、本題に入りますね。

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鬼木フロンターレ読み解き講座マガジン

では、スタート!

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