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試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第36節・セレッソ大阪戦)

11月20日はヨドコウ桜スタジアムでセレッソ大阪戦です。

まずはこの話題から。

試合前夜、セレッソ大阪の大久保嘉人が今シーズン限りでの引退を発表しました。

「J1で200点とってやめたい」とも話していた記事を読んだので、逆に言うと、200点取るまでは意地でも続けるんじゃないかと思っていましたから、本当にビックリしました(現在は191点)。

川崎フロンターレ時代にはJ1リーグ3年連続得点王という記録を打ち立て、現在進行形でJリーグの歴代得点記録を更新しているストライカーです。

世界のサッカー市場において、もっとも高額で取引される存在というのは、やはりゴールを奪う技術の高い選手です。サッカーはゴール数の多い方が勝つゲームですから、ストライカーの市場価値が高まるのは当然です。

大久保嘉手は、その「プロとしての価値」をよく考えている選手でもありました。

例えばフロンターレ時代、チームメートに対してもそこはすごくシビアでした。

 新井章太というゴールキーパーがいます。
国士舘大学卒業後、練習生を経てJ2の東京ヴェルディに加入した選手です。
ただしゴールキーパーという経験が問われるポジション争いの難しさもあり、2年間ほど出番がなく解雇になりました。その後、Jリーグ合同トライアウトを経て、2013年にJ1の川崎フロンターレに加入。ただフロンターレでも4番目のGKという立場で、2年間出場はなし。プロ5年目となる2015年に、待望のJリーグデビュー戦を飾ったGKです。

大久保嘉人と新井章太は公私ともに親しい間柄で、練習後、新井の構えるゴールマウス向かってシュート練習に励む姿は麻生の日常となっていました。

 そんな彼が、プロ5年目にしてプロデビューを飾ることになったんですね。その前日の練習後、「いよいよ新井章太に出番が来そうですね。何か声はかけたんですか」と大久保嘉人に聞いてみたんです。

すると、大久保の返事は、「かけていないよ。昨日(風邪で自分は練習に)いなかったから、今日知ったんで」と意外なほど素っ気ないものでした。

誰よりも新井選手のデビュー喜んでいるのかと思いきや、まったくそうではないんですね。

それでも食い下がってみると、「働いてもらわないとね。プレッシャーのかかる中で、どれだけやれるかでしょ。それでダメだったら、そこまでの選手だということ」と、大久保嘉人らしい厳しめのエールを贈ってました。

言い換えれば、それが「プロとしてピッチに立つこと」なのであり、「プロはピッチで実力を表現してナンボ」だということを彼は言いたかったのだと思います。自分の価値は何で決まり、どうすれば上がるのか。当たり前ですが、結果を出し続ければ、プロとしての市場価値は確実にあがっていきます。

活躍すれば、お金が入ります。でも活躍できないと、すぐにクビになる。身も蓋もない言い方ですが、実際にプロはそういう評価をされる世界です。自らの実力をゴールという結果で示し続けて来た大久保嘉人の言葉だけに、なんだか説得力がありました。

そして彼は、そこをオブラートに包んだ言葉で言わない。ゴールを決めて、自分の価値を示す。だからこそ、「プロの価値とは何か」を雄弁に表現しているようにも見えました。

なお、新井章太はチョン・ソンリョンとレギュラーの座を争いながら、2019年にはルヴァンカップ初優勝に貢献したのはご存知の通り。この大会MVPにも輝き、翌年はジェフ千葉に移籍し、現在も奮闘を続けています。

今シーズン、大久保嘉人のいるセレッソ大阪とは3月に等々力で対戦しました。結果は、3-2で川崎フロンターレが勝利しています。

なお、今季の川崎フロンターレは堅守を誇っており、リーグ戦で2失点以上を喫した試合は35試合中、僅か5試合だけです。その中で一人で2得点を奪っている唯一の選手が大久保嘉人だったりします。やはり危険なストライカーです。現在は後半途中から出場する機会が増えていますが、果たしてこの試合ではどうなるのか。

公開する直前に、大久保嘉人のニュースが入ってきたので、大幅に書き直したプレビューになりました。ぜひ読んでみてください。

前節・鳥栖戦のレビューです。→「泣きたい夜に聞きたい言葉」(リーグ第35節・サガン鳥栖戦:1-3)

日本代表戦での三笘薫のコラムです。→「First impression〜決勝弾の布石となった三笘薫のアウトサイドパスに思う。 」(カタールW杯アジア最終予選:日本代表 1-0 オマーン代表)

では、スタート!

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