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「泣きたい夜に聞きたい言葉」(リーグ第35節・サガン鳥栖戦:1-3)


まずは自分の目の前で起こっていることを頭の中で整理しないといけない、と思った。

ここ2シーズン、リーグ戦で1試合2失点以上したことのなかった優勝チームが、すでに3度ゴールネットを揺らされているのである。

それも、まだ前半30分過ぎの時点で、だ。

 駅前不動産スタジアムはサッカー専用スタジアムである。最寄駅からのアクセスは申し分ないし、記者席からの傾斜も抜群でとても見やすい。

ただ場所によっては、階段の柵が目の前にあって見づらいエリアがある。席はあらかじめ割り振られているので指定された位置から観戦しているのだが、フロンターレ側視点でいうと、前半は自陣の左サイドの攻防が少しばかり視界に遮られやすい場所だった。細かいところをちゃんと見ようとしたら、記者席から身を乗り出して視野を確保する必要があった。

 すると開始3分、いきなりそこの左サイドの攻防から得点が生まれる。

 最初の仕掛けの場面は見えにくかったものの、カットインを警戒して中を切る旗手怜央を縦に揺さぶった、鳥栖の右ウイングバック・飯野七聖の突破が視界に飛び込んできた。そのグラウンダーを、中央で岩崎悠人が伸ばした足に当てる。ボールがゴールネットに転がっていくまでの軌道は、記者席からはちょうどよく見えた。

 開始3分の失点。川崎フロンターレからすれば、今季の最速失点だろうか。

 試合前、前節から5人を入れ替えたスタメンの顔ぶれを見て、少し気になったのが左サイドの縦関係だった。マルシーニョ加入後、彼がいる左ウイングの背後をサポートする左サイドバックでスタメンを続けていたのは、常に登里享平だったからだ。

 この日のスタメンで左サイドバックを務める旗手怜央は、シーズン終盤はインサイドハーフの一角として定着している。最近だと第30節の湘南ベルマーレ戦でサイドバックで先発しているものの、その時の左ウイングの先発は宮城天だった。

ちなみに旗手が左サイドバックとして先発したのは、去年にここ、アウェイ・サガン鳥栖戦が最初である。あれから一年後、このポジションで存在感を発揮し、ユーティリティ性を武器に、東京五輪代表、そして日本代表に選出されるのだから面白い階段の登り方をしている選手だと思う。

ただマルシーニョと旗手怜央が縦関係を組んでスタートするのは、これが初めてだった。ここの連携はスムーズだろうか。

 鳥栖は3-5-2システムを採用している。ウイングバックがいるので、サイドで相手にボールを保持されて守備をしようとすると、川崎の4-3-3システムだと噛み合わせる時にズレが生まれる。もちろん、お互いの構造は選手も頭の中に入っているだろうけど、ここの齟齬をうまく起点にされて後手に回る時間が長いと、ちょっと厄介になりそうなイメージが浮かんでいた。

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