「冬がはじまるよ」 (リーグ第32節・京都サンガF.C.戦:3-3)
この京都サンガ戦に向けた公開練習後のこと。
小林悠に話を聞きたいと思っていました。
前々節であるアビスパ福岡戦のゴールで、彼のJ1リーグ通算得点数は138に。歴代7位に位置している139点の三浦知良に肉薄しています。ただ前節の柏レイソル戦は終盤の出場でノーゴール。今季のリーグ戦は残り3試合となった今、自分の得点記録についての思いを率直に聞いてみたかったのです。
「1点は取りたいですね。カズさんの記録に追いつくんで、そこは意識してますね」
こちらがキング・カズの名前を出すまでもなく、彼は自ら挙げてくれました。そこで、三浦知良の記録に並ぶことの意味を聞いてみると、やはり「憧れ」という言葉で表します。
「小さな時からずっと憧れてきた選手なので。そこを目指してやってきたわけじゃないですけど、そういう位置にいるんで並びたいなって気持ちはありますね」
ただ正直言うと、出場のチャンスが巡ってくるとすると、スタメンではなくベンチからの途中出場の可能性が高いと見ていました。現在は攻撃陣の選手層が厚いことに加えて、今季の小林自身、途中出場が多いからです。
前回先発したのは等々力のアルビレックス新潟戦ですが、シュートはゼロで、ハーフタイムに交代となっています。なので今回も「限られた時間で、どうやってチャンスを仕留めるのか」というマインドが大事になると同時に、どうやって結果を積み重ねて生きたのか。その秘訣を知りたいと思いました。
それを尋ねてみると、小林は少しだけ考えてこう語り始めてくれました。
「やっぱりチャンスに顔を出すことだと思いますね。打つところにいなかったりすると後悔するし。打って決めるか決めないかは自分次第なので。そこの場所にいることをすごく意識してやってます」
チャンスをものにできるかどうかは自分次第ですが、チャンスが巡ってくる場所に立とうとしないと、それすら掴めないわけです。バッターボックスに立ち続けないと、ホームラインは打てないのと一緒です(あえて野球の例え・笑)。
漫画「GIANT KILLING」で「ボールってのは、しぶとく諦めない奴の前に必ず転がってくるもんなのなんだよ」ってフレーズがありますが、ストライカーというのはそういうマインドがないといけないのだと思います。
それだけに、京都戦でスタメンで出場した時は少し驚きましたし、嫌な空気が漂い出した展開での前半終了間際の追撃弾は痺れました。
あの139得点目について「難しいシュートではなかった」と話してましたが、本人の言葉を借りれば、大事なのは「そこにいること」でもありますからね。
試合後のミックスゾーン。
小林悠は、自分がゴールを決めても勝てなかったこと、勝つためのゴールを奪えなかった悔しさを滲ませていました。ただ悔しがれることを彼は喜んでいたようにも見えたんですね。レビュー本編ではそんな話を書いてみました。
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