いしかわごう
「賢太郎も悔しい思いをしていたから。そういうみんなの思いが詰まったゴールだったと思います」(新井章太)。再び手に入れた、分厚い紙一重の差。/ リーグ2nd第15節・サンフレッチェ広島戦:2-0
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「賢太郎も悔しい思いをしていたから。そういうみんなの思いが詰まったゴールだったと思います」(新井章太)。再び手に入れた、分厚い紙一重の差。/ リーグ2nd第15節・サンフレッチェ広島戦:2-0

いしかわごう

サンフレッチェ広島戦は2-0で勝利。

 まずはやはり、森谷賢太郎によるドライブシュートでしょう。
実に鮮やかな軌道でゴールネットに吸い込まれたわけですけど、自陣のゴールマウスに立っていた選手からは、どんな風に見えたのか。ちょっと気になったのでGK新井章太に聞くと、自虐を込めてこんな風に評してくれました。

「(相手GKの)正面に行ったかー、と思ったら、(ボールが)落ちたんですよね?俺らが普段、やられているやつです(笑)。あれはマジで取れないです。速いし、落ちるし、完璧でしたよ」

 そして、こう口にします。

「賢太郎も悔しい思いをしていたから。そういうみんなの思いが詰まったゴールだったと思います」

 勝利を決定付けたのは、ロスタイムに決めた中村憲剛の2点目です。

 広島の猛攻撃に耐えた5分のロスタイムも、残りわずかとなって迎えた相手CK。GKの林卓人もゴール前まで攻め上がっていきます。

 そのCKをしのいだ流れでの、セカンドボール争い。
自陣のタッチライン際で、エウシーニョが相手からボールを奪うことに成功します。GK林卓人はゴールマウスにまだ戻りきれていません。距離はかなりありますが、思い切って超ロングシュートを打てば、ゴールネットに入る可能性もあります。しかしエウシーニョは、攻め上がっている味方にパスを選択しました。

「自分がシュートを打って外すとみんなから文句を言われるので(笑)。オプション(選択肢)が3人あったので、自分がゴールを決めるよりも誰かが決めてくれると思って、そっちを使いました」(エウシーニョ)

 このとき、猛然と逆サイドから走り出していたのが「川崎の35歳」でした。90分過ぎた時間帯に、なんでこのベテランが最前線にいたのかはわかりません。「そこにタニ!」ならぬ「そこに、ケンゴ!」です。

「エウソン(エウシーニョ)がボールを運んだ瞬間、絶対にチャンスだと思った。体力が意外と余っていたね(笑)。ラスト、ワンプレーツープレーだと思ったし、ああいうチャンスでどれだけまでに出られるか。ここぞというときにそれを出せるかどうかは質が問われるし、それを決めることができた」

  試合後の中村憲剛は、そう説明してくれましたが、きっと理屈を超えたものだったのではないでしょうか。あの瞬間、ゴールの匂いを感じ取った・・・そんな直感を信じたダッシュでした。

 回ってきたパスには森谷賢太郎も並走していましたが、どかせてボールをトラップ。GKの林卓人との1対1となりました。完全とも言えるドフリーです。おそらく等々力にいたすべての観客が、この1対1に息を飲んだことでしょう。

 林卓人というGKは、1対1のときは、あえて動かないことで自分の間合いにうまく引き込む駆け引きに秀でています。後半のエウシーニョとの1対1をセーブしたときなどもそうでした。見栄えするビッグセーブをするタイプではないですが、正確なポジショニングでシュートを正面でセーブしてしまいます。プレースタイル的には、フロンターレのチョン・ソンリョンに似ているタイプだと思います。

 以前、大久保嘉人が話していたのですが、対峙してやりにくいキーパーの特徴として、1対1のときに自分から動かないタイプだと明かしてくれたことがあります。ソンリョンはこの特徴を満たしている上に、体のサイズもあります。なので、「ソンリョンはどっしりと構えていて、デカい。それでいて反応も早い。あれは嫌だと思うよ」と、ストライカーの立場から最大級の評価をしていたんですよね。

 林卓人はこの局面でもじっと構えることで、中村憲剛を自分の間合いに引き込もうとしました。しかし中村は落ち着いています。

「最初、タクト(林卓人)の間だったので、うまくステップを踏んで自分の間にした。時間がありすぎたのでいろいろと考えたけど、タクトも動かなかったが、(シュート)コースが見えるまで我慢した」

 あれだけフリーの時間が長いとさすがに中村憲剛に分があったようです。ボールタッチをしながら、ワンフェイント入れてから少しだけ林の間合いを動かしています。これで勝負がありました。


 中村憲剛は、これでリーグ戦9得点目です。2006年以来となる二桁得点なるか。

・・・・とまぁ、ゴールシーンの駆け引きを中心に振り返ってみましたが、本文はここからです。勝ったとはいえ、試合全体の流れの中では、良いところ、良くなかったところが、比較的ハッキリと見て取れた試合だったと思います。レビューでは、そのポイントを深堀りしています。

 ラインナップはこちらです。

1.「前半はみんなテンパっていました」(新井章太)。"ゆっくりとしてくるサッカー"に警戒していた川崎の意表を突いた、広島の「ハイテンポ」。

2.「目が遅かった」大島僚太と、クセを研究されていたエドゥアルド・ネット。不安定だった二人のゲームコントローラーの誤算を検証する。

3.「目の前でやられている分にはOKだった」(車屋紳太郎)。「危ないシーンは何本かあったが、慌てずに対応できていたかなと思います」(谷口彰悟)。2シャドーに攻撃の起点を作られても、慌てず、騒がず、たじろがず。無失点勝利を支えた守備陣の奮闘。

4.「そこはノーコメントを貫いているので」。自分自身と向き合い、退任する風間監督への思いを言葉ではなくピッチで表現した森谷賢太郎の一撃。

5.最後に。再び手に入れた、勝利につながる分厚い紙一重の差。

ポイントは5つ。冒頭の文章が長めだったこともあり、今回は全部で8500文字以上あります。読み応えはあると思います。ここまで読んでくれたあなた・・・どうぞよろしくお願いします!

なおプレビューはこちらです。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ2nd第15節・サンフレッチェ広島戦)

 では、スタート!

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この続き: 7,795文字

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サッカーと将棋をコンテンツ化するフリーランスです。Number Webなどに寄稿。著書は「将棋でサッカーが面白くなる本」、「川崎フロンターレあるある1&2」など。「サッカー脳を育む」、「サッカー上達のためのマインドとメソッド」など中村憲剛の著書の構成も担当。