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鬼木フロンターレを読み解く講座vol.7〜歴史に残る等々力劇場。指揮官が見せた執念の采配と、土壇場で選手たちが見せた底力。


今回は、初優勝のターニングポイントになった試合を振り返りたいと思います。

優勝するチームというのは、常に圧倒して勝ち続けて優勝するわけではありません。

 勝つべきゲームが引き分けになってしまうこともありますし、長いシーズンでは何試合か負けます。よく優勝後に「簡単な試合なんて1試合もなかった」と振り返りますが、あれは本心なんだと思います。そのぐらい勝つことは大変なんです。

 でも、だからと言って簡単に負ける往生際の良いチームでは優勝できません。終始劣勢でも土壇場のセットプレーで引き分けに持っていったり、土俵際ギリギリに追い込まれていたのに最後の粘りを見せてひっくり返したりできるかどうか。

 サッカーを見ていると、ときに説明つかない試合がありますが、優勝するチームにはそういう勝ち方が起きるものです。

 2017年のリーグ戦では、第29節のベガルタ仙台戦を優勝のターニングポイントになった試合として、何人かの選手が挙げてました。残り10分で、2点差をひっくり返した試合です。しかも10人で、です。

この試合ですね。公式ハイライトをどうぞ。

このハイライトを見ていると、「(エウシーニョが)急に仕事をした!」、「(小林悠が)シュートコース作った」、「ゲットォーー!」、「素晴らしい。このゴールは素晴らしい」、「すごいですね」、「すごかったですね」、「美しいゴール」・・・とゴールシーンにおける実況の倉敷さんと解説の福田さんの興奮が伝わってきます。何度でも見返したくなる映像です。

J1リーグ史上、残り10分で2点差のビハインドを1人少ない10人で逆転した試合はこれまでなかったそうですから、「伝説の試合」と言っても過言ではないのかもしれませんね。

 試合後のミックスゾーンでの選手たちの興奮ぶりは今でも覚えています。

 GKのチョン・ソンリョンに話を聞こうと思って声をかけると、いつもは冷静に話してくれる彼も、「僕もサッカーをやっていて、こういう試合は初めてです」と興奮冷めやらぬといったテンションでした。韓国代表としてのW杯出場など豊富なキャリアを誇る百戦錬磨の彼でさえ、10人で2点差をひっくり返すという試合は体験したことがなかったというわけです。

「後ろから見ていても、本当に戦う姿には感動した。みんなでそういう気持ちがあったからこそ、こういう試合ができたのだと思います」

今回は、優勝のターニングポイントになったこの一戦を振り返りたいと思います。

 一つ言っておくと、川崎フロンターレとしては、決して良いゲーム内容ではありません。チームとしてのパフォーマンスは低調で、試合内容的に上回っていたベガルタ仙台が勝つのが妥当なゲームでした。

 それでも、スコアをひっくり返して勝利した。選手の頑張りもそうですが、鬼木監督の采配も機能しました。それらを含めて優勝のターニングポイントになったゲームとして挙げて、検証したいと思います。

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では、スタート!

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