「エジソン」 (リーグ第17節・サンフレッチェ広島戦:1-0)
この試合に向けて山根視来が口にしていた、あるフレーズが気になっていた。
それは「貯金」。
お金の話ではない。ピッチにおける時間のことだ。
宮代大聖が左ウイングのポジションにいることの効果について、右サイドバックの彼はこんな風に話していたのである。
「大聖が左にいると、シンプルに時間ができるんですよ。本当にちょっとのところで、ダイレクトで返すところを貯めて返してくれるとか。それだけで相手の矢印が違う。裏を狙っている選手ですし、いい効果はあるんじゃないかと思います。周りの選手に余裕が一個できることで、逆サイドでも『貯金』ができると思うので」
ピッチのどこで時間を作るのか。
時間とスペースの奪い合いとなっている現代サッカーで、そこは勝敗を左右する大きなポイントになる。
これまで、川崎フロンターレの4-3-3のサイドで「時間を作る」という役割は、右ウイングの家長昭博が担うものだった。
左ウイングといえば長谷川竜也→三笘薫→マルシーニョという系譜から分かるように、ワイドに張って縦に突破するドリブラーが重用されており、むしろ推進力が重視されてきたからだ。
柏戦から左ウイングに入った宮代大聖は、ストライカーでありつつもキープ力もある。そこに登里享平と大島僚太が絡むことで、左サイドでも時間を作ることが可能になった。左サイドで「貯金」が生まれたことで、逆サイドの遠いところにいる右サイドバックの山根視来にも攻撃参加できる余裕が生まれてきたと感じているわけである。
今節の相手であるサンフレッチェ広島は、ハイライン&ハイプレスを採用しているスタイルだ。つまり、いつも以上にピッチでの時間を奪われる中でのプレーになることが予想されていた。
そういう相手に、ピッチのどこで時間が貯金出来て、それを誰が引き落とすのか。そこは注目だった。
ところが、である。
いざ試合が始まってみると、ちょっと意外な展開となった。
※6月13日にレビューに、上福元直人と鬼木監督のコラムを追記しました。→■「驚きで相手を動かしたりとか、もっとできれば良かったんですけど」(上福元直人)、「そこはフィールド(プレイヤー)も一緒ですよ。言いたいけど、ちょっと我慢してます」(鬼木監督)。GK上福元直人が指揮官からピッチで与えられている自由と責任、そして発明の話。
※6月14日に、後日取材した脇坂泰斗のコラムを追記しました。前半、相手を見過ぎていたことで起きてしまった自分のミスと、そのリカバリー方法。そして守田英正との話です→■「あいつしか言えないです(笑)」。バースデー決勝弾を決めた脇坂泰斗が言われた、親友・守田英正からの辛口評価とは?
■「監督からは最終ラインの前で、相手のコースを断ち切る、あるいは挟み込むという役割を求められていました」(ジョアン・シミッチ)。ピンチの連続だった立ち上がり。抜け出す相手を捕まえ切れない決定機は、なぜ起きていたのか。
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