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「距離感が遠いというのは感じていました」(小林悠)。劇的すぎた決勝弾で忘れがちな「小林悠のワントップは機能したのかどうか問題」を検証してみる。/リーグ2nd第13節・横浜F・マリノス戦:3-2

 等々力競技場での横浜F・マリノス戦は3-2で勝利。

 大久保嘉人とエドァルド・ネットが出場停止。そして守護神チョン・ソンリョンもヒザの負傷により欠場。センターライン3人が不在で迎えた神奈川ダービーは、まさに総力戦となりました。

 ゴールマウスに立ったのは新井章太です。
リーグ戦では今季初スタメン。「ここで俺が出て、完璧にやってポジションを取りたい。そのぐらいの気持ちでやります」と、彼は気合十分でした。

 しかし後半、ハイボールの競り合いで脳震盪となりプレー続行が不可能に。ゴールマウスを任されたのは、川崎フロンターレでは初出場となる高木駿。クラブ史上初となるチャンピオンシップ出場がかかる試合で、新井章太の守っていたゴールマウスを託されることとなりました。

 この二人といえば、こんなエピソードがあります。

 今から3年前の、2013年シーズン終盤のときです。

等々力での試合帰りだった新井章太と高木駿が、一緒にうどん屋に寄っていきました。

「等々力での試合帰り」と言っても、二人は試合に出場したわけではありません。

 当時の二人は、フロンターレでは第3GKと第4GKという立場。
お互いにJリーグ公式戦の出場数はゼロ。ベンチに入るのは第2GKですから、ともにメンバー外で試合はスタンドから観戦する。それがGKというひとつしかないポジション争いで3番手、4番手にいた彼らの3年前の地点でした。
 
 ベンチ入りしていない第3GKと第4GK。公式戦出場時間は0分ですし、出場給も勝利給も入ってきません。お互いの懐事情をわかっている高木は、うどん屋で「割り勘でいいですよ」と気を使って新井に申し出ました。しかし先輩である新井は「いや、ここは俺がおごる!」と頑として譲らなかったそうです。

 こうしてうどんをおごってもらった高木は、その太っ腹に感激し、「来年は千葉で試合に出てA契約になって、自分がおごります!」と新井に伝えました。実は高木駿は、翌年からJ2のジェフ千葉にレンタル移籍することが決まっていたのです。

 その翌年2014年、高木駿はその言葉通り、千葉でレギュラーの座を奪取しました。この年、昇格プレーオフ決勝でモンテディオ山形に負けてJ1昇格はなりませんでしたが、その活躍ぶりを評価されて、期限付き移籍を1年延長。千葉の取材で高木に会ったときには、「A契約になったので、章太さんにはなまるうどんをおごります、と伝えておいてください」と笑っていました。こうして高木は2015年も千葉でプレーし、キャリアを積んできました。

 一方、去年2015年は新井章太にとって待望のプロデビューを果たした年です。出場機会を掴んでレギュラーも奪取するなど、彼にとっては大きく躍進したシーズンでもありました。

 そして今年2016年シーズンは、ジェフ千葉でキャリアを積み重ねてきた高木駿が川崎フロンターレに戻ってきました。

 こうして迎えたこの横浜F・マリノスとの神奈川ダービー。手倉森監督の「託すもの、託されるもの」ではないですが、3年前まではベンチにも入れなかった新井章太と高木駿の二人が、互いに切磋琢磨して高め合ってきたことをピッチで表現して掴んだ勝利でもあったと思っています。

・・・・にしても、劇的過ぎる勝ち方でした。勝ち点3という結果を掴んだことには最大限の評価をしますが、試合内容から考えたら、もっと普通に勝ち切らないといけないゲームだったのも事実でしょう。

 今回のレビューでは、ほぼ完璧にコントロールできていた90分間の勝因ポイントを分析しつつ、9分のロスタイムに露呈したチームが向き合うべき「ゲームの終わらせ方」という課題についても触れております。
 
ラインナップはこちらです。

1.「最初に一回抜かれてしまったので、そこでボールを持つ前に距離を寄せようと思いました」。両サイドアタッカーをうまく封じ込んだ車屋紳太郎と田坂祐介の臨機応変な対応力と、巧妙だった川崎フロンターレ守備陣による3バックと4バックの使い分け。

2.「距離感が遠いというのは感じていました」(小林悠)。劇的すぎた決勝弾で忘れがちな「小林悠のワントップは機能したのかどうか問題」を検証してみる。

3.なぜ三好康児はあれだけ前を向いて仕掛けられたのか?

4.ミスをして自分を落ち着かせる!?J1デビュー戦となったGK高木駿の、普通じゃないメンタリティーとは?

5.2nd第7節のヴァンフォーレ甲府戦以来、完封試合なし。チームが向き合わなくてはいけない「ゲームの終わらせ方」という課題。

 以上、5つのポイント。冒頭の文章も含めると全部で約8000文字です。劇的な勝利ではありましたが、ピッチ上の因果関係を冷静に分析しております。読み応えはあると思います。

なお、プレビューはこちらです。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ2nd第13節・横浜F・マリノス戦)

では、スタート。

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