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前半は3バック?4バック?そして、なぜ後半に奈良竜樹の位置を入れ替えたのか。その狙いを読み解く。(リーグ第7節・北海道コンサドーレ札幌戦:1-1)

 札幌ドームでの北海道コンサドーレ札幌戦は1-1の引き分け。

 この試合を通じてフロンターレが放ったシュート数は9本。対するコンサドーレ札幌は13本です。

 シュートの数で負けているわけですが、問題は「質」の部分だと思います。ペナルティエリア内で相手守備陣に脅威を与えるような崩しがなく、フロンターレとしては決定機らしい決定機がとても少なかった。この試合に関していえば「決定力不足」ではなく「決定機不足」という表現のほうが正しいと思います。

 このフロンターレ攻撃陣と対峙していた相手は、どう感じたのか。
試合後、札幌の3バックの一角として守っていた福森晃斗に聞くと、彼は言葉を選びながらも古巣の印象について率直に述べてくれました。

「飛び出してくる選手があまりいなかったですね。3人目の動きがかみ合っていなかったのかな、というのは敵として感じました。自分たちのブロックの前で回す時間帯が多かった。なので、自分たちはあんまり行きすぎずに構えて、というのができていたと思います」

 札幌は最終ラインに5枚が並ぶ〔5-3-2〕で、自陣ではお互いの距離を近くしてコンパクトに守っています。

 一般的に「コンパクトな守備は良い」と言われますが、だからといってDFラインと中盤のラインは距離が近ければ良い、というわけではありません。

 なぜかというと、あまりに距離が近すぎると、後ろから飛び出している選手は、楽に裏のスペースに抜け出せるからです。

 ディフェンスラインと中盤をコンパクトにしすぎると、守るほうとすると後ろから走りこんできてくる選手をキャッチするまでの時間がないため、置き去りにされやすくなるわけです。だから、ディフェンスラインと中盤が近すぎるのも必ずしも良いわけでもない、ということです。

 言い換えると、DFラインと中盤のラインの近い相手には、後ろからの飛び出しがとても効いてきます。実際、中村憲剛がPKを獲得した場面は、阿部浩之とのワンツーで後ろからゴール前に飛び込んでます。PKを与えたのは福森晃斗ですが、彼自身もあそこの対応が難しかったのを認めていました。

「ケンゴさんが二列目の後ろぐらいから飛び出してきて、自分たちもそこを見きれずに抜け出されてしまった。ああいうのをやられると、こっちも後手を踏んでしまう。あそこは本当に厄介でした」(福森晃斗)

 しかしこの試合では、その相手が嫌がっていた飛び出す動きを意識する選手が少なすぎました。そういった攻めの部分も含めて、チームの攻撃面で何が足りないのか。今回はそのへんを中心にレビューしてみました。

ではラインナップです。

1.「ボランチのところから前にボールを入れても、こうして、こうしてこう、という絵が少ない」。崩しのイメージ共有に苦心していた中村憲剛。チャンスを作り出す確信を掴むために必要なものは?


2.「外から見ていてああいうシーンを狙っていこうと思っていた」と語る、PK獲得の立役者・阿部浩之。「使う側」と「使われる側」になれる彼が、潤滑油として機能したのには理由がある。

3.前半は3バック?4バック?そして、なぜ後半に奈良竜樹の位置を入れ替えたのか。その狙いを読み解く。

4.「点を取ったからこそ、攻撃的な守備をしないといけない」。ゲームの終わらせ方を悔やんだ奈良竜樹。事故を起こさないための、現実的な逃げ切り策はあったのか?

以上4つのポイントとなっております。

なおプレビューはこちらです。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第7節・北海道コンサドーレ札幌戦)

では、スタート!

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