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「You are Special」 (リーグ第24節・サンフレッチェ広島戦:2-3)

割引あり

ピッチでの脇坂泰斗は、チームを引っ張る意思を発し続けていた。

前節、10人で戦ったヴィッセル神戸戦で見せたものと同様の凄みがあり、この日は1ゴール1アシストだ。

どんな感覚でプレーしているのか。試合後のミックスゾーンで、本人に聞いてみた。

―-すごく感覚が研ぎ澄まされているように見えるけど、個人としてはやっていてどうなんだろう?

 彼は素直にうなづいてくれた。

「(感覚は)ずっと良いです。余裕を持ってやれている、というのが今日も出せたところもあります。もっともっと得点に繋げる動きをしていかないといけない課題もあります」

 現在の脇坂泰斗がどこか余裕を持ってやれているのは、試合中のプレーの端々から伝わってくる。一時期の三笘薫や田中碧などが試合中に見せていたものに近いもので、Jリーグの舞台では少し格が違うような見え方を、最近の脇坂泰斗からも感じる。

ただチームの結果には繋がらなかった。そこに悔しさを滲ませる。

「チームを勝たせないといけない立場でもあるので、そこを達成できなくて悔しい思いがあります」
 
この試合のプレーで言えば、山根視来が決めた2点目のアシストも鮮やかだった。

驚きという意味では、1点目のゴールよりも、2点目のアシストのプレーの方がインパクトがあったかもしれない。状況を冷静に把握し、感覚的な判断に優れていないとできない選択とプレーだからだ。

 得点につながる場面を振り返ると、橘田健人がドリブルでボールを運んでいき、中央の脇坂泰斗に。右ウイングにいた瀬川祐輔に展開すると、そこからダイレクトにクロス。ニアに走り込んでいた橘田健人に出したと思ったボールは相手DFに当たり、中央に入っていた脇坂泰斗の足元に。そこから切り返しをして打つのかと思いきや、後ろに回り込んでいた山根視来にかかとで流した。

走り込んでいた山根が狭いコースにうまく流し込んでゴールを揺らす。1失点目のコーナーキックで自分のマーカーにやられた悔しさもあったのだろうか。あの力強いガッツポーズには、本人の中でそれまでの溜まっていたものを爆発させるような、渾身の喜びだった。

 脇坂泰斗に聞きたかったのは、あそこで山根視来にヒールで出した選択だ。一体、いつ、どうやって空間と味方を認識していたのか。そのまま疑問をぶつけてみた。

 —-2点目は、山根くんのことをいつ見ていたんだろう?って記者席から見てて思った。瀬川くんにパスが出て、そこからのクロスに対してはどんなイメージだったんですか。

※後日取材として山根視来のコラムを追記しました。今季2点目となったゴールシーンを振り返ってもらいつつ、勝つためにはどういう変化を加えるべきなのか。彼自身が感じていることを言葉にしてくれています。

→■(追記:8月22日)「何かを変えていかなきゃいけないんだろうなっていうのを思ってます」。危機感を口にする山根視来。現状打破に必要な自身の変化として語ったこと。

※後日取材による追記その2です。週明けのチームミーティングで鬼木監督は選手たちに「どう自分に向きあうか」を伝えたと言います。8年前の3連敗を知る車屋紳太郎、そして自身も苦境にいる小林悠はどう向き合っているのか。そんな話です。

■(追記:8月23日)「それも自分の力だと思いますし、過去は関係ないと思っているので」(小林悠)。この苦境すら、次のゴールのための極上のスパイスになる。そして、問われている「君たちはどう向き合うのか」という話。


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