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鬼木フロンターレを読み解く講座vol.1〜未整備だった領域の定跡化。指揮官就任後に着手したチーム作りの初手を振り返ってみる。


 2020年の新体制発表会見でのことです。
シーズンの展望について語っていた庄子春男GMは、スタッフの陣容について触れる際、4年目を迎える指揮官についてこう述べていました。

「鬼木監督は4シーズン目を迎えます。これまで3シーズン連続でタイトルをもたらしてくれました。すでに名将の1人だと私は思っています」

 そして3シーズン連続以上でタイトルを取ったJリーグ監督である、オズワルド・オリヴェイラ(当時鹿島アントラーズ)、トニーニョ・セレーゾ監督(当時鹿島アントラーズ)、ネルシーニョ監督(柏レイソル)、西野朗監督(当時ガンバ大阪)の4人の名前を挙げ、「これらの監督に肩を並べるぐらいの実績を残したと思っています」と、庄子GMは鬼木監督について高い評価を口にしています。言葉を続けます。

「ただ鬼木監督は見てわかるように、そういう奢りもなく・・・・つねに向上心を持って取り組んでくれています」

 横で聞いていた鬼木監督は「名将の1人」というフレーズやJリーグの歴代優勝監督に肩を並べる実績という評価にも表情を変えませんでしたが、「奢りもなく」と内面に言及されると、少し照れたような表情を浮かべて笑っていました。この反応に場内のサポーターからも笑いが起きる和やかな雰囲気の中で、庄子GMはこう締めました。

「今年は今まで以上に鬼木監督のスタイルといいますか、ポゼッションをベースに球際とハードワーク。そのスタイルをもっともっと成長させて、これまで以上に進化したチームを作ってくれるのではないかと思います」

 壇上での鬼木監督は「リーグ王者の奪還」を必須とした上で、カップ戦も含めた複数タイトルの獲得を掲げ、その経験を通じて成長していきたいことを抱負として語っています。

 迎えた2020年シーズン。
その宣言通り、「超アグレッシブ」をキーワードに、フォーメーションを従来の4-2-3-1ではなく4-3-3を導入。攻守に相手を圧倒する戦い方を標榜して臨み、リーグに先駆けて開幕したルヴァンカップ清水エスパルス戦では破壊力を存分に見せつけて5−1で大勝をおさめました。続くリーグ開幕戦となったサガン鳥栖戦では課題の残るスコアレスドローに終わったものの、1勝1分とまずまずの滑り出しとなっています。
 
 試合を通じて掴める収穫と浮き彫りになる課題を見つめながら、どう前に進んでいくのか。チームを定点観測していく楽しみの一つはそこにあるのですが、その矢先、新型コロナウイルス感染拡大の影響でJリーグがまさかの中断に。4月に再開予定ではありますが、まだ正式に決まったわけではありません。

 現状では想像以上に長引く中断期間となっています。取材する側の自分としても、時間的な空白ができたので、前々から考えていた分野に取り組んでみようと思います。

 それは何かと言うと、就任4年目を迎えた鬼木達監督の振り返りです。
冒頭で紹介した庄子GMの言葉にあったように、3年連続で国内タイトルを獲得し、今やリーグの歴代優勝監督に肩を並べる実績があると言っても過言ではありません。しかし、鬼木監督自身がそこまで深くフォーカスされたことはあまりありません。

 そこで、2017年から2019年までの過去3年のチーム作りでどういう変遷があったのか。試合中の采配やチームマネジメント、そして4年目となる今年に向けた狙いを自分の中で、いったん整理する作業をしてみました。

 これまで書いた記事を加筆、再編集する作業が中心で「楽勝だぜ」と思っていたのにですけど、実際に取り掛かってみると、一冊の本ができるんじゃないかぐらいの作業量と時間で、正直、「・・・・やるんじゃなかった」とだいぶ後悔してます・笑。でも、短期集中でやり切ることにしました。

・・・・ってなわけで、今回はその第一回目です。前任者である風間前監督からスタイルをどう引き継ぎながら、指揮官就任にあたって、何に着手していったのか。そうした2017年のチームスタイルの設計図に関する話からスタートします。

2017年、2018年、2019年とシーズン別の変化を振り返る形で、全部で10回ぐらいの予定ですが、ようやく半分ぐらい書き終わりました(15回ぐらいになるかもしれません)。毎回4000〜5000文字ぐらいのボリュームになる予定で、記事は個々で購入できますが、全部読みたい人はマガジン形式で買い切りするとお得です。

 鬼木体制も4年目を迎えており、ここ2、3年で等々力に通い始めた新規サポーターも多くなっていると思います。サポーター全員がチームの変化を見ているわけではないと思いますし、最近見始めた人には鬼木フロンターレの入門講座感覚で、昔から観ている人にとっては復習でありつつも、過去の再発見するような感覚で読んでもらえれば幸いです。

それでは、スタート!

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