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ライヴ・エイドでのザ・フーの演奏は酷かったけれども......

 ライヴ・エイドから36年。それまで活動停止状態だったいくつかのベテラン・アーティストがこのイベントで復活したことは以前も書いたが、今回はフーのステージについて書いてみる。このときのフーのパフォーマンスは非常におもしろいものだった。ただ、いままで自分が目にしてきた評論や個人ブログなどの文章で、これからここに書くようなものは見たことがない。あれほどヨレヨレのパフォーマンスでありながら、それが話題にならないのは疑問だ。今さらながらになってしまうが、このときのフーのステージを振り返ってみたい。

 イベントに出演した"復活組"のなかで、フーの出番はロンドン会場での後半、デヴィッド・ボウイとエルトン・ジョンの間だった。この位置はそれまでのフーの功績、特にライヴ・バンドとしての彼らの期待度をあらわしていたように思えるが、実際の彼らは1982年のファイナル・ツアー以来の、本当にしばらくぶりのステージだった。フーのライヴ・エイド出演が決まるまで、その交渉は困難を強いられた。なにしろメンバー間の確執が長年に渡って続いており、たった一回かぎりのチャリティ・イベントに出るだけであっても、それがバンドの足枷となってのしかかった。82年のバンド解散から3年経ってもその足枷は相も変わらず、そこにあり続けた。

 主催者であるボブ・ゲルドフがピート・タウンゼントのもとに"一日限りの再結成"をもちかけ、ピートはその話しを受け入れるが、ここから難しい問題がもちあがった。
 ゲルドフは交渉のなかで二つの相反する条件を突きつけられる。キーパーソンはケニー・ジョーンズだった。ただ、ケニーがなんらかの決定権をもっていたわけではないし、特別な意図をもっていたわけでもない。彼自身は再結成を歓迎しており、やる気満々だったのだが、彼の意思とは別のところで"彼の存在"がバンドを二つに分裂させてしまっていたのだ。

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