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豊明一期一会ver.1.2「G-yeast」(6月中旬発売予定)

一昨年から始まった豊明一期一会シリーズ第一弾の「I Gnition」のコンセプトを今年も踏襲し『さけ武蔵』『埼玉G酵母』を使用して、今期で日本酒造り3年目の蔵人が醸しました。

埼玉G酵母は、他の埼玉県酵母と比較すると華やかな吟醸香を出す特徴がありますが、日本醸造協会が頒布している酵母と比べると発酵力が弱く、吟醸仕込と言われるような低温度帯の仕込には適していない酵母です。
そんな酵母を使用したことから埼玉G酵母の『G』と酵母を意味する『yeast』を合わせて『G-yeast』とい名を付けました。

日本酒造りを始めて間もない素人同然の蔵人にとって、発酵力が弱いといわれる酵母を使用したのはかなりハードルは高い選択だったと後にして思います。それでも埼玉G酵母の使用に拘ったのは、この酵母で造られたお酒が好きだったからです。その好きなお酒に出会えたからこそ、この酵母の存在を知ることができ、私自身埼玉の日本酒が好きになりました。そんな経験から、この埼玉G酵母でお酒を仕込むことで故郷埼玉の日本酒の事を少しでも多くの方に知ってもらい、好きになってもらいたいという思いがありました。

そんな思いのもと一昨年から酒室設計などさせてもらっていましたが、今期は造りを任せてもらえることとなり、嬉しさ3割、不安7割。コンセプトだけは決まってましたが、造りの計画となると何を考えるべきなのかが全く分かりませんでした。とりあえず教科書と過去の経過簿を頼りに計画を立ててなんとか始めることは、できましたが一つの操作を考え、判断する責任が重すぎました。操作をした後に、計画通りに運んで手応えを感じることもあれば、こうしておけば良かったと思うこともたくさんありました(正直圧倒的に後者の方が多いですが…)。

具体的に良かった点は、酒母を立てた時の暖気操作は計画通りの温度経過を辿り、元気な酒母を造ることができたのは目標達成できた事です。
逆に良くなかったのは、醪の経過を過去の造りを参考にしたことで、温度を下げ始めるタイミングが早くなってしまったことです。これは、埼玉G酵母の低温発酵に優れていないという特徴を甘く見積もってしまった為で、反省点です。

如何に難しい酵母を選定したといえど、日本酒造りの難しさを身に染みて実感しましたし、世の杜氏の方々の苦悩も少しわかった気がします。たくさん苦労と苦悩をしましたが、その分学ぶところも多分にあり、何よりものすごく有意義な経験をすることができました。

商品説明

ここからは商品の説明に入ります。
今回は、
・無濾過生原酒
・無濾過直汲み火入れ(少量)
の2種類の展開となります。
直汲みの火入れは、昨年(R3BY)の豊明純米ひやおろしで実施しており、フレッシュさと熟成間の両立の様な味わいが好みだったので取り入れようと思いました。それまで『直汲みは生酒』というイメージでしたが、火入れもなかなか良いなと思わせてくれました。今回は飲み比べ目的で同時期のリリースの為、瓶内で熟成させる期間は設けていませんが、少し寝かせてみても面白いかもしれません。

無濾過生原酒

香りは穏やかな吟醸香でカプロン酸エチルを思わせます。
口当たりは滑らかで甘さの奥から苦味がやってくる、ソーダアイスのようなさわやかな甘みとすっきりと切れる味わいです。
温度が上がってくると甘が浮いてきて、苦味との調和が崩れるので、良く冷やして飲むのも良いですが、ロックがおススメです!
鰹の様なうま味の豊かな刺身と合わせると抜群です。

直汲み火入れ

生原酒よりも上立ちも含みも香りが高く、甘旨口でボリュームのある味わいがします。すっきりを求めるなら生原酒のほうが綺麗な切れがありますが、火入れのほうは渋みで切れて酒質の差を感じます。
サバの味噌煮の様な味噌系の味の濃いものや、タンドリーチキンの様なスパイスが効いた料理も相性が良いです!

最後に

このようなタンク一本分の日本酒造りという貴重な経験をさせてくれた社長と造り中にたくさんアドバイスをくれた杜氏には感謝です。
そして、一人でも多くの方に私の造った日本酒を飲んで貰えたら蔵人冥利に尽きますので、是非とも宜しくお願い致します。

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