石井克人
石井克人原作『ヤエル49』のストーリーリストです。 note創作大賞2024 漫画原作部門参加
◆タモタン対ユビナガ あさみの目の前で、大口を開けるタモタン。 あさみはただ、突っ立っている事しかできない。 そのあさみを突き飛ばしたのは――ユビナガだった。 間一髪、あさみはタモタンの捕食から免れた。あさみは突き飛ばされ、神社の壁にたたきつけられる。 あさみはその衝撃で、腰が抜けたように倒れ、気を失う。あさみの限界は、もうとっくに来ていたのだ。 ユビナガは、吠えた。 そして、ヌシ熊から取り返し手にしていたナタを、タモタンが開いたままにしている口の中に
◆脱出の時間 島の南側のバー。 森下妹が酔いつぶれて、カウンターでへたばっていた。あのままずっと飲み続けていたようだ。 マスターに肩をゆすられるが、森下妹はなかなか起きない。 「はぁ、お客さん、お客さん……」 「……ヌシなんているわけないじゃない……バカよ、兄さんはバカ。頭がおかしい! 熊なんてこんな島にいるわけがない! なんで? なんでそれで、熊と勝とうとする? なんでムキムキになる? 見られてたから? ハァ? ハァ? 私の方が兄さんをみてたっちゅうね、私の方
◆まだ、森下が生存していた21時ごろ 時は少し遡り――。 森下の隠れ家にて、大きな音。それはタモタンが落下した時の音であり、地響きが隠れ家を揺らす。 森下はその時、今日あったことを文章にまとめていた。 「大きな音がした、いったい何だろう」とその場で書き……やや沈黙したのち、ゆっくりと立ちあがる。 半裸だった体に狩猟用のジャケットを纏わせると、奥の武器庫……あさみが見て驚愕した、違法罠が陳列された壁に向き合う。 さまざまな罠や武器を手に取り、触り、時にさわった
◆あさみの中学時代 中学校時代のことだった。 メガネで、おさげの、地味で目立たない生徒――あさみが、朝、登校すると、自分の机の上にはゴミが散乱し、心無いラクガキがされている。 朝の日課は、そのラクガキを消しゴムで消すこと……。その必死な様子のあさみを、遠くの席で主犯格の女子生徒たちがニヤニヤとみている。 あさみはそちらに目をやる。あさみの必死な姿を見て、笑っているのだ。 「なんで私なのか、私の何が気に入らなかったのか、原因は分からない……」 大人のあさみ
◆神鳥島・南側中腹 井上たち四人は、「六番目の白ウサギ」が落下した地点に到着していた。 神鳥島の、南側中腹に当たる箇所。その地面の草木は焦げ、星型の大穴が開いている。 その大穴に、バドとカナンが、地面に試薬を振りかけ、その反応を腕のパーツであるマイクロセンサーにかざし、その数値を見ている。 「……タンパク質反応、……ありますね」 「てことは、もう地球上の何らかの生物を食らっちゃった可能性大ですね、タンパク出てるって事は、ガンマ線も容赦なく出てるっていうかまあバ
◆夜の森 気がつくとあさみは、夜の森の中で倒れていた。 まだ、後頭部に痛みがある。落葉は夜露に濡れ、眠る直前だったので服はラフな寝間着姿のままだ。 森の中で、木々が部分的に少ない、平たく比較的開けた場所。 満月の月明かりがこの一帯を照らしている。周囲には――あさみの私物であるナップザックや、ライトが転がっている。 「わたし……いったい……」 あさみにはまだ状況がつかめていない。 ここは神鳥島の山の森の中であることは確かなようだ。立ち上がり、歩こうとする
◆ヤエル49最新鋭ヘリ ヤエル49が手配した最新のヘリに、ジェイソン井上、カナン、バド、そしてNDGのスープラが乗っている。 決して大きくないそのヘリの中で、全員は装備品を身につけていた。パチン、パチンとストッパーが掛かる音がよく聞こえる。 「静かだな、このヘリ」 「危険物とか、あと精密機械というか、爆弾も運んだりするから、振動ほとんどゼロなんだって」 「ヤエル本部の本作戦になるといいメカ使わせてくれるんだなー」 ヘリコプターにしては振動が静かで、音もほとんどして
◆N・D・G、ネバー・ダイ・ガールズ スープラは銃を抜き取り、自身の頭を撃ち抜く。 眼から上の頭部が砕け散る。無数の飛沫が飛ぶ。 しかしその飛沫は本体から離れず、極細のワイヤーが細胞の飛沫それぞれについているように静止し、空中の一点に留まる。 まるでその空間だけがストップモーションしているかのように。そしてゆっくりとその飛沫は頭部に戻っていく。そして、残った口は言葉を吐き続ける。 「あなた方と違い、ご覧の通り、私は死なない。“井上ルーム”に期待するのは、救助で
◆トラバサミ 「この森はもともと俺たち一族の森だった。俺は生まれてからずっと、この森で育っていた……」 森下がカセットテレコにセリフを吹き込みながら、山を歩いている。筋肉質な体型に、チェック柄のハイキングウェアに山ズボン、靴と、どこかオタクにも見えるファッションだが、髭と髪の毛は伸び、顔だけ見れば修行僧のような風体だ。 「幼いころから俺は森の中から視線を感じていた。何かを見透かすような、鋭い視線だ。俺はその目線を、森のヌシの物だと直感していた……」 森下が設置して
キャラクター○女型不死超人・スープラ 外見は10代後半。ヤエル49の最終兵器群のひとつ。 ヤエル49より井上ルームに「増援と教導」目的で配属される。 少女のように見える外観だが、幼少のころから文化・芸術・哲学、生物知識、近接戦闘ならびに薬剤や兵器の使い方を訓練されており、その兵力はアメリカ特殊部隊の50人分に相当する。 放射能汚染に免疫があり、【宇宙地雷】の死亡時に放射される大量のガンマ線を吸収することができる。 ○特殊工作員・ジェイソン井上 34歳。特務
あらすじキャラクターリストプロローグ 白い物体が、光速に近い速度で地球に向かっていた。 全長3メートルほどの球状の物体は、地球の大気圏にふれ、摩擦熱で破壊され、砕ける。 そこから、ソレは飛びだした。 大気圏の熱にあぶられ、もがき暴れるソレはまるで――猿のようにも、寸足らずの人間のようなシルエットにも見える。 手足をばたつかせながらも大気圏をもがきながら突破したソレは、そのまま地上に落下していった……。時刻は日本時間で21時を回るころであった。 「隕石? じゃない