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チューブ入り絵の具か固形絵の具か? 一生ものの絵の具はどちらか?

あなたは、学校の美術の授業でどんな水彩絵の具を使ってきましたか?

チューブ入りの絵の具ですか? それとも固形絵の具ですか?

私は、小学校、中学校、高等学校で、チューブ入り水彩絵の具を使ってきました。そのため、当時は、水彩絵の具はすべてチューブ入りだと思っていました。

チューブ入り絵の具の功罪

チューブ入り絵の具は柔らかいので、パレットに出して直ぐに水を加えて筆に含ませて描き出すことができます。すると、絵の具が濃いままに塗りがちなので、透明水彩というよりは不透明水彩(ガッシュ)のような表現になります。小学生が描いた水彩画はたいていこのような表現ですね。

しかし、このような、チューブから絵の具を出してそのまま水に溶いて使うのは、チューブ入り絵の具の推奨すべき使い方は、ではありません。

望ましい使用法は、いったんパレットの細かく仕切られた部分にすべての絵の具を詰め込むように置き、絵の具が完全に乾燥してから、必要な絵の具だけに水を加えて少しずつ溶かして使用するものです。そうすれば、紙の白さを生かしたあざやかな色合いを出せるのです。しかし、美術の授業ではなぜかそうした使い方を教えてくれませんでした。

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(使い終わってから20年以上放置したパレット、まだ使用できます。)

パレットの仕切りの中で乾燥した絵の具は、水を加えればいくらでも、半永久的に、使用可能になります。しかし、どの仕切りになんという名前の絵の具を入れたのか、わからなくなることがあります。

ところで、チューブ入り水彩絵の具は、新品のキャップを最初に開けたときに、黄色っぽい透明な、ねばねばした液体が出てくることがあります。

これは、絵の具から分離した「メディウム」といわれるものです。主成分はアラビアゴムで、いわば接着剤のようなものです。

この、絵の具から分離したメディウムをチューブから出し切ってしまうと、本来の絵の具が出てきます。

完全に未使用で、分離したメディウムが充分残っているチューブ入り絵の具の場合、少なくとも20年くらいは絵の具がチューブの中でやわらかいままなので、いくらでも使用可能です。

ところが、この分離したメディウムをいったん出し切ってしまった場合、キャップをきちんと閉めていても、キャップとチューブの隙間から空気が侵入してしまい、徐々に、チューブ内の絵の具が固まってゆきます。そのため、多くの、使用中のチューブ入り絵の具は、10年くらいでしっかり固まってしまい、チューブを押しても出てこなくなります。

そのように固まった絵の具は、チューブを切り開いて、パレットナイフなどで水と混ぜてよく練ればやわらかくなるのでまた使えますが、均一に成るまで練るのはとても面倒です。面倒なので、固まった絵の具は捨てて、新しい絵の具を購入したほうが良いでしょう。

そのように考えると、チューブ入り絵の具はかなり不経済な絵の具なのです。

しかし、20号以上の大作を描きたい場合は、大量の絵の具をパレット上で簡単に広げられるチュープ入り絵の具が便利です。

また、チューブ入り絵の具は、色の数が多い(100色以上)ので、好きな色を選びやすいことも長所です。

固形絵の具の功罪

固形絵の具は、絵の具を最初からパレット上に固めた状態で販売している製品です。固形絵の具のほとんどは透明水彩絵の具です。油絵の具やアクリル絵の具には、固形絵の具というのはありません。

固形絵の具は、その上に水をたらして筆でこすり、少しずつ溶かして使います。固形絵の具はカビなどが生えない限り、半永久的に使えます。

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(使い終わってから40年以上たつ固形パレット。まだまだ使えます。Pelikan 66/12 Günther Wagner)

下図は現在私が使用中の固形パレットです。新しいだけあって絵の具が溶けやすく、これが一番使いやすい製品です。

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(ホルベイン ケーキカラー)


下図はチューブ入り絵の具と固形絵の具の色を比較したものです。

絵の具の色は同じ名称であっても、メーカーごと、製品ごとに違います。また、絵の具が古くなって色が変質してしまうことはないようです。

色の比較 700

(同じ名称の絵の具が見つからなかったので、似た色で比較)

要するに、かびたりしない限り、固形の水彩絵の具は使用期限がなく、一生使えると考えてよいでしょう。

チューブ入りの油絵の具やアクリル絵の具と比べると、ずいぶんと経済的ですね。

しかし、色の数があまり多くないので、好きな色を選ぶのが難しいのです。混色すれば、大体のところは間に合いますが・・・。

使い終わった固形絵の具は、個別に、一色ずつ追加購入できます。

一方、大きな画面の絵を描きたい時は、固形絵の具を大量に溶くのは面倒なので、チューブ入り絵の具を使うほうが良いでしょう。

私は原則として小さい画面の絵しか描かないので、普段は固形絵の具しか使いません。

まとめ

チューブ入り絵の具の長所と短所
・ 一度に大量の絵の具を溶くのに向いているので、大作に向いている
・ 一度使用すると、しばらくしてチューブが固まって、絵の具が出なくなる
・ 絵の具の寿命が短い
・ 色数が多い。

固形絵の具の長所と短所
・ 絵の具を少量ずつ溶くのに向いているので、小品に向いている。
・ 絵の具の寿命が長い。ほぼ一生ものである。
・ 色数が少ない。


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