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とある研究者夫婦の里親奮闘記 その3

気がついたら、また1ヶ月経ってしまっていました。
月1更新がちょうど良いペースなのかもしれません。

ということで、今回は、2019年3月に里親登録してから息子との交流が始まる前までの約10ヶ月間についてを書きたいと思います。


■ さっそく子どもの紹介が….

もちろん、エントリーします!

前回の記事(その2)でも書きましたが、最初に児相を訪問してから1年半後の2019年3月、ようやく「養子縁組里親」としての登録が完了したとの通知が届きました。と同時に児相から電話があり、「早速ですが…」と子どもの紹介が。

ええ、もう???
もっと待つんじゃなかったの?

予想していなかった早さに、私たち夫婦はすっかり舞い上がってしまっていました。

ちなみに、児相の方が紹介してくださる子どもについてのお話は、だいたい以下のような項目についてです。

  •  こどもの名前のイニシャル(e.g  Sちゃん)

  •  性別

  •  月齢

  •  子の現在の様子(好きなもの, 普段の様子, 健康・発達状況など)

  •  生まれたときの状況

  •  なぜ特別養子縁組の候補になったのか(経緯、簡単な家族状況)

  •  実母 and/or 実父の意向確認状況(特別養子縁組に出すことへの同意が取れないとそもそも紹介されない)

このとき紹介があったのは、3歳の女の子でした。
児相の方から紹介があったのち、「エントリーするかよく考え、明日までに返事をください。」と言われました。「え?明日??」と驚いたものの、もうウキウキで「もちろん、挙手一択でしょう!」と、ほぼ即断即決でした。

3歳の女の子ってどんな感じかな??
ああ、子ども用のトイレアタッチメント買わな!
布団も! 踏み台も!  食器も!  服も!
アレもコレも!  オムツはどれがええんかな?
おもちゃは???

翌日、エントリーする旨を電話した後、私たちはもうすっかり3歳の女の子がウチに来ることが確定したかのような気持ちになっていました。
家の中のどこに何を置こうかとメジャーで測ってみたり….

今思い返してみると、このときほど「浮き足立っている」という言葉がピッタリくるときはなかったと思います。

ああ、勘違い。

数週間後、児相の方から「この度はご縁がありませんでした」との電話があり、私たちはかなり大きなショックを受けました。

あれ?  紹介までは時間がかかるけれど、紹介があったら、こちらが「Yes」と返事さえすれば交流が始まるんじゃなかったの???

パンフレットや研修では、子どもの紹介から委託までの流れについて、以下のように書かれています。

東京都福祉保健局作成・里親制度啓発パンフレットより借用


児相の方から電話で子どもの紹介があったことについて、てっきり私たちが候補家庭として選ばれたから電話があったのだと思い込んでしまっていました。

ところが、この理解は大きな勘違いだったのです。

実際の流れは….

  1.  候補となる子どもがいると、家庭訪問時に回答していた希望児童の性別・年齢条件があっている里親に対して、里親担当の児相からエントリーするかどうかの意思確認の連絡がある。

  2.  里親がエントリーするかどうかを判断して返事をする。

  3.  エントリーした里親家庭の中から、子担当の児相が候補となる子どもにあっていると考えられる候補里親を選定する。(このとき、第一候補だけでなく、第二候補、第三候補、というように順位づけがなされる。)

  4.  選定結果が、エントリーした里親に通知される。(e.g. 今回はご縁がありませんでした / 第一候補になりました! / 第二候補です )

  5.  第一候補の里親家庭と候補となる子どもの引き合わせが実施される。(このとき、このまま交流を開始するかどうかの最終確認が行われる。ほとんどの場合、このまま交流が開始される。)

  6.  交流が開始する。

といったものでした。なお、第一候補より下の順位の候補家庭に話が回ってくることはほぼ無いそうです。

ああ、勘違い。

すっかり浮き足立っていた私たちは、ショックから立ち直るのに約1ヶ月もかかってしまいました。その間に一回、また別のお子さんの紹介があったのですが、気持ちを切り替えることができず、エントリーはしませんでした。


■ いろいろ想う、複雑なこと

その後、何度か「紹介を受ける → エントリーする → ご縁がありませんでした」を繰り返していたのですが、その中でいろいろと複雑な気持ちになったことがありました。そのうちのいくつかを紹介しようと思います。

「エントリーする」ということ

「エントリーする」ということに関して、当時とても複雑な気持ちになったことを二つ挙げたいと思います。

一つ目は、「エントリーする」という言葉。
プロセスを考えると何らおかしい言葉ではないのですが、意思決定の大きさと比してどこか作業的な言葉の響きに、最後までしっくりきませんでした。
「精神的につらかった」とまではいきませんが、「エントリーします」と電話で回答するたびに、何かすっきりしない気持ちを抱えていました。

二つ目は、一度に複数の子どもを紹介されることがあったこと。
これは本当につらかったです。一度に2, 3人ご紹介いただくことが何回かあったのですが、エントリーできるのはその中の1人だけ。つまり、紹介があって数日のうちに、電話で聞いた情報をもとに「エントリーする子の選択」をしなければならない訳です。

最初同時に2人紹介されたときは、選ばなければならないことを知らず、「どちらともエントリーします」と回答したら「同時に複数エントリーはできません。1人選んでください。」とのこと。

え、選ぶの???

とかなり戸惑いました。

上述の通り、簡単にとはいえ、子どもの状況については様々な情報提供があります。その上で選ぶということは、私たちが上述のような項目を複数の子どもで比較し、何らかの価値づけや優先順位をつけてしまうということに他なりません。

私たち夫婦の間で子の性別が議論になったことは一度もありませんでしたが、その他の項目(子どもの年齢や現在の状況、候補児童になった理由)を比較しながら誰にエントリーするかを話し合っていました。そんな「エントリーする子の選択」をしている自分に対して、自己嫌悪を抱えていたのを今でもはっきりと覚えています。


「実母」のこと

この呼称も何とかならないですかね。
ならないですか。そうですか。

「生物学上の母」でよくないですか?
英語だと「biologial parents」という表現はよく用いられてますよ
… と、まぁ愚痴っておきます。

さて、子どもの紹介を受けるときに生まれた時の状況や候補児童になった理由の説明も受けるのですが、びっくりするぐらい「実父」が登場しません。
そして、説明される「実母」さんの置かれている過酷な状況….

普段接している学生と年齢がそう変わらない(下手をするともっと若い)「実母」さんが妊娠・出産し、そして子どもが特別養子縁組の候補児童となった経緯を(非常に簡単ではありますが)聞くたびに、その方たちにも必要なサポートが届いて欲しいと切に願うばかりでした。




そんなこんなで「ご縁がありませんでした」が続いていましたが、2019年12月、遂に運命が動き出しました!!

ということで、息子との出会いは次の記事で。
ではでは。



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