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男なら立ってしろ

株式会社石黒金属製作所の北山です。東大阪市で製缶、鈑金、溶接業をしています。

今は製缶鈑金の溶接をする会社に勤めていますが、昔は映画の仕事がしたくて、神奈川にある映画の学校に通っていました。

その学校は、今村昌平さんと言う映画監督が作った学校です。今では大学になっています。僕が通っていた当時は精神的におかしくなっている人以外はほぼ合格する専門学校だったそうです。

ちなみにそれは今村昌平さんの片腕だった先生がそう言っていたので、僕の感想ではありません。僕の友達は合格が危なかったぞと、その先生に言われていました。

そういう学校なので、無頼派な先生が多いし、生徒も早慶卒の人もいれば、高校出たての人もいました。元暴走族もいれば、鬱病に悩む人、二重人格の人、30歳を越えた元社会人もいました。

偏差値教育の垣根を越えた環境で、映画を作る中で協力しあい、仲間が出来て、本当の意味での多様性を学んだ気がします。

映画を観ることもそうですが、多様性を知ることで、他者を理解する寛容性が生まれるんじゃないかとおもいます。今の世の中にはもう少し寛容性があっても良いんじゃないかと思います。

あまり関係ない話しをしてしまいました。その学校で韓国からの留学生の友達ができました。I君と言います。

I君は韓国の大学を卒業して軍隊にも入って、日本文学など勉強して、日本に興味があって日本の映画界でやりたいと思って留学してきました。

知的で話しが好きで、チャーミングなところもありました。こういう表現が正しいかわかりませんが、軍隊生活を経験していたので、身体もガッチリしていましたし、精神的にも独立し、日本人より男らしい(意思を真っ直ぐに伝える)ところもありました。

とても仲良くなり、色んな話しをしました。彼はどんどん日本語が流暢になり、関西弁も習得していきました。映画の事はもちろん、文化の違いや、料理の話し、軍隊の話しも聞きました。

ちなみに僕がいつも日本語でベラベラ話すので、ハングルを覚えることもなく、覚えたハングルはヨボセヨ(もしもし)だけでした。

I君とは、卒業して、映画の現場から離れてからも大阪に来た時会ったりしました。それから数年連絡をとらずにきて、この7月に韓国に帰ると他の仲間から聞きました。

日本の業界よりも、Netflixなどで韓国が盛況で、待遇も労働環境も良いそうです。日本に来た時は日本の方がクールに見えていたのが、今では韓国もどんどんクールになっています。日本の産業が斜陽に見えるのが寂しくて辛いところではあります。

会ってなくても、帰るとなると寂しくて連絡をとり、たわいない話しをして、また仕事で日本にくるから会おうと言って電話を切りました。

数日経っても、学生時代を思い出し、少しセンチメンタルな気持ちになって、過去を振り返っていました。

仲良くなれば国籍なんて関係ない、良い友達だったなぁと。

しかし一度だけ言い合いになったことがあります。

当時下宿していたアパートによく泊まりに来たり遊びに来ていたI君ですが、僕がトイレの扉を開けたまま用を足す姿を目撃し、小便をするのに便座に座る僕を見て、「扉を閉めてしろよ、アレ?何で便座に座ってるの?うんこか?」と言いました。

僕は「いいえ、小便ですよ。男は立ってすると小便が飛び散りますし、昔から父親にも躾けられていて座ってしています」と答えました。

するとI君は、「信じられない!男は男らしく立ってするもんだろう!」

僕は「いいえ、男とか女とか関係ないです。小便が飛び散りますから、後から掃除する事を思うと座ってしますよ」と答えました。

珍しくI君は引かず、「そんなもの後で拭けばいいだろう!」と威勢よく言いました。「俺は豪快にして、後から拭くぞ!飛び散るなら飛び散れ!座るより良い!まったく日本人はどこまでも軟弱化していく!」と。その後も立ってする座ってするという議論は並行線を辿りました。

今となってはわかりませんが、立ってすることの豪快さとは何なのか。ただ端に座るのが面倒なだけではないのでしょうか。

そして豪快に立って小便した後に、いそいそと飛び散った小便を拭く姿を想像するとなんだか滑稽で笑えてきます。それなら最初から座りなよって。

そんなくだらない事を思い出しました。

このLGBTの時代に男らしくとかふさわしくないのかも知れませんが。

調べてみたら、ここ10年で座ってする派(座りションと言うらしい)が増え、座りション派が50%を越えたそうです。

座りションは、ションを飛ばさない→他者理解(寛容性)、みんな座ってする座る→LGBT、飛び散ったションを拭く機会が減る→サスティナブルを内包した優しきスタイルだとおもいます。しらんけど。

こういう時代になって、I君も優しき座りションスタイルになってるんじゃないかと思います。

また聞いてみよう。

https://ishigurokinzoku.jp

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