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写真集「RECOLLECTION / 記憶」の制作にについて思うところ

こんちには、石田シンヤです。

このたび、写真集「RECOLLECTION / 記憶」を305PRESSから上梓しました。
写真集を作成しようと具体的に動き出したのが昨年の11月でしたが、それから1年で完成にこぎつけることができました。その写真集に対する思いや、制作に関するあれこれを書いていきたいと思います。

写真集の仕様は以下のようになっています。

判型:210×190mm ←少し背が低いA4サイズ
製本:糸かがり綴じ、コデックス装(寒冷紗き)
頁数:本文120P
表紙:ミルトGAスピリット スノーホワイト220kg 1c/0c
本文:テイクGA-FS 110kg 1c/1c
カバー:テイクGA-FS 135kg 1c/0c+マットPP加工+銀箔押し
印刷:株式会社 吉村印刷/YOSHIMURA PRINTING Co.,Ltd.
デザイン、編集:小林千紘/Chihito Kobahashi
発売日:2023年10月25日
価格:4,000円(税込)
出版:305PRESS
ISBN 978-4-9913043-2-3

いろいろとこだわりを盛り込んだ結果、当初の想定より制作費が高くなってしまい、販売価格の設定に苦労しました。4,000円は少々高いかと思いましたが、採算ギリギリのラインです。この写真集で儲けるつもりはないですが、うまくいけばプラマイゼロぐらいになるように設定しています。

写真集の制作ではじめに考えたのは、本を手にとってもらうにはどうすればよいかということ。書店やブックフェアに陳列したときには、とにかく手にとってもらわないと始まりません。なので表紙は黒をベースに銀の箔押しにして、地味に目立つようにしています。サイズ感も方手でも持ちやすいように少し小ぶりです。そして最大のこだわりポイントが製本。「糸かがり綴じ、コデックス装(寒冷紗き)」というところです。詳細はリンクをご覧いただくとして、この製本を採用することで、ページを楽に180度開くことができるようになりました。立ち読みでも片手で簡単にページめくりしてご覧いただくことができます。

ページの構成は、見開きの右側にのみ写真を配置して、左側は撮影日と撮影場所それとページ番号を小さく記しています。方側にだけ写真を配置したことで、掲載されている写真は合計60枚とそれほど多くないですが、写真を一枚づつじっくり見ていただくことができれば、ちょうどいい分量だと考えました。また、見開きの左右に2枚の写真を配置するとそれぞれの写真の関連性が気になりますが、片側にだけ配置することで、物語が淡々と流れることを狙っています。

写真集に物語を感じてもらうには、ステイトメントがポイントなのですが、それは写真集の本文には記載せず、栞にセルフ写真とともに記載しています。写真集のコンセプトから考えて、セルフ写真を掲載したかったのですが、本文中に掲載すると違和感があったので、本文から外して栞にステイトメントとともに記載しました。結果的には、写真集を見ているとふいにステイトメントに出会うという演出もできてよかったと思います。

これらのデザインに関しては、自分で考えたのではなく、デザイナーとして入っていただいた小林千紘さん(以下、千紘さん)にたいへんお世話になりました。というか、原案はほとんど千紘さんのアイデアで、僕はそれに乗っかったというのがホントのところです。

千紘さんには本のデザインだけではなく、写真のセレクトやシークエンスなど編集もお願いしました。自分ではない他の人に写真集の編集を任せるというのは前からやってみたかったのですが、編集を通じてまざまな発見があり、お任せしてよかったと満足しています。

千紘さんとは、昨年の夏にGallery Room305のメンバーZineを作成したときに、そのデザイン担当として出会ったのですが、その後、写真家の鈴木達朗さん(以下、達朗さん)のワークショップでじっくりお話する機会があり、今回の写真集の編集は彼女にお任せしようという思いに至りました。

冒頭にも書きましたが、写真集を作成するために具体的に動き出したのは昨年の11月で、それが達朗さんのワークショップになります。

僕が本格的に写真を撮り始めたのは2018年からなのですが、それから4年ほどは女性モデルのポートレートをメインに撮ってました。ピークの時期は毎週土日にはいつも撮影の予定が入っているぐらいの頻度で撮影していたのですが、昨年ごろからポートレートに対する熱は徐々に冷めていき、スナップ写真を多く撮るようになりました。当時のことを知っている人に言うと驚かれますが、今年に入ってからはポートレートは撮ってません。

写真集を作成するにあたっては、被写体が女性モデルから街の景色に変化していく3年間の写真で構成することを考えたのですが、ポートレートとスナップの組み合わせがどうもしっくりしなくて試行錯誤したところ、タイミングよく達朗さんのワークショップもあり、少しでも学ぶことがあればと思ったのが参加のきっかけです。

ワークショップは対話形式で進められました。そのなかで被写体が女性モデルから街の景色に変わった理由を深掘りしていくと、そもそも女性モデルを撮り始めたきっかけやスナップ写真に込めた思いにたどり着くことができました。そうやって完成したのが栞に記載しているステイトメントです。ステイトメントが完成したあとは、それに沿ってこの3年間に撮った写真をセレクトして、少しばかりの写真を撮り足すことで、1冊の写真集にまとめることができました。

写真集の制作期間は、ステイトメントの作成と基本のセレクトに4ヶ月、撮り足しと編集に4ヶ月、入稿から完成までに4ヶ月ぐらいのバランスです。その中でもステイトメントの作成にもっとも苦心しました。自分との対話をなんどもして、そしてなんども書き直してやっとの思いで完成しました。しかしステイトメントが決まると、写真のセレクトがいっきに進み、お気に入りの写真であっても、それに合わなければ容赦なく外すことができるようになり、あらためてステイトメントの重要性を感じました。(ステイトメントは下記オンラインショップでご覧いただけます)

この写真集は自費出版ですが、ISBNコードを取得することで、書店での取り扱いのハードルが下がるようにしています。というのも、この写真集は作家としてのゴールではなく、スタートラインであり、僕がここにいるという狼煙でもあり、できるだけ広く多くの人に手にとってもらいたいからです。なので慌てることなくじっくりと販売していくつもりです。といっても、次の写真集の構想もあるので、あまり時間がかかっても困るのですが。

写真集「RECOLLECTION / 記憶」は、いまのところGallery Room305と305PRESSのオンラインショップでお求めいただけますが、写真集の販売に注力している書店にも置いてもう計画を進めています。もしどこかで目する機会がありましたら、ぜひ手にとってご覧ください。そして気に入っていただけれは購入してもらえると嬉しいです。


10月25日から29日にかけて、Gallery Room305で写真集の発売記念展を開催しました。これまでの女性モデルのポートレート展とは違い、スナップ写真中心の展示だったので、どれぐらいの来場があるか不安でしたが、多くの方にご来場いただき、展示も写真集も好評でほっとしています。これまでの個展と比べて滞在時間が長い方も多く、またステイトメントを見る前後では写真の見え方が違ってくるなど、嬉しいコメントもいただくことができました。


写真集「RECOLLECTION / 記憶」の作成で作家活動はいったんの節目になります。ドラマでいうファースシーズンが終わったところです。これから始まるセカンドシーズンはファースシーズン以上によい内容になるよう、これからもどんどん写真を撮ってあちこちで発表していきます。
引き続き応援のほどよろしくお願いします。

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