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ペーパーテストはこう活かせ! 若手教師へ

ほとんどの小学校では、単元末や学期末にペーパーテストを用いていることと思います。
そして、その目的は成績評価のためである場合がほとんどでしょう。
教師の中には、「評価の手段としてペーパーテストを使いたくない!パフォーマンス課題で子供の生きて働く学力を調べたい!」と考えている人もいるでしょうが、「学年で足並みを揃えて」などと言われると、使わざるを得ないのが現実でしょう。特に若い教師の場合は。
また、ペーパーテストで高得点を取れる子供を育てることが社会的に求められていることも事実です。

理想に向かって邁進しつつも、現実にもまた対応していかなければならないのが教師である、とひとまずここでは言っておきます。

そこで、どうせペーパーテストを実施するのであれば、次の3つの使い方をオススメします。推奨する根拠は、私の経験と、『認知心理学者が教える最適の学習法ビジュアルガイドブック』(ヤナ・ワインスタイン、メーガン・スメラック、オリバー・カヴィグリオリ著 山田祐樹日本語版監修 岡崎善弘訳 東京書籍 2022)において示されている知見です。

①ペーパーテストの目的と効果をきちんと子供に説明する
ペーパーテストの目的は評価のためであるという認識を子供がもっていることが多いでしょう。
子供だけでなく教師の中にも、成績評価のためだけに子供にやらせているという人が少なくないのかもしれません。

しかし、ペーパーテストには、「学力を高める」効果もあります。ペーパーテストを受けることによって子供は学習したことを記憶の中から引き出し、それによって知識を再構築し、強化します。つまり、ペーパーテストが学習を強化するのです(前掲書 pp.203-204,p.226など)。

ですから、私は子供たちに次のような説明を繰り返し行い、ペーパーテストのもつ意義を伝えてきました。

・ペーパーテストの目的は、みなさんをできる子とできない子に分けるためでも、順番を付けるためでもない。
・評価をする資料の一つとして使うことは確かだが、目的はそれでだけではない。
・みなさん一人一人が、何ができて何ができないのかを知り、次の学習に活かすことも目的にしている。
・自分の指導方法を振り返り、より上手な授業をするための資料にもする。
・みなさんには、自分が、何ができて何がよくわかっていないのかを知り、学び方を振り返ったり、これからの学習計画を立てたりするための資料にしてほしい。
・そして何よりも、テストをすることで(「テスト直し」も含めて)、頭の中で「学び直し」が行われて、その結果、学力が高まる!

こうした説明をすることを通して、子供が学習のためにペーパーテストを活用できるようにするのです。

②ペーパーテストの後は、必ず「テスト直し」をさせる
ペーパーテストの実施後は、得点を付けて子供に返却しておしまい…は、絶対にだめです。
それでは、マルかバツかをその子供が知るだけで、その後の学習に結果を活かせません。
学んだ内容についてのフィードバックが必要なのです(前掲書 pp.257など)。

私は、そのために、正答をただ読んだり写したりするだけのテスト直しではなく、子供に正答の説明をさせたり、私が解説を加えたりしました。また、教科書やノートで調べ直しをさせたり、直した後に類似問題に取り組ませたりもしました。

③ペーパーテストで学習方法を育む
ペーパーテストのための「テスト勉強」の時間も取りました。

授業の中で行う場合には、主に次の方法を採っていました。

・小テストを繰り返す→小テストといっても、多くの場合がクイズ形式でした。その方法も、例えば人物画や実験道具を見せて名前を言わせたり、前の授業中に記入したカードの文字を隠して言葉や内容を思い出させたりするなど、準備の時間がほとんど必要ないものにしていました。クイズ用紙を作成したり、既成のものを探して印刷したりする方法は手間が掛かります。
・授業の中で、前の学習内容を使わないと考え・答えが作れない問題を設定する→「小テスト」や「クイズ」は、方法として好まないという方には、こちらを強くオススメします。
前の学習内容と関連付ける「精緻化」の学習方法と併用したわけです。
 
家庭での宿題として、「テスト勉強」に取り組ませることもよく行いました。
このときのポイントは、「テスト勉強」の方法です。
ただ教科書を読むだけでは効果的ではありません。
学習してきた内容をイメージマップ(コンセプトマップ)にまとめさせたり、図を交えて(これもポイント!「デュアルコーディング」理論が裏付け)、ノートに「1ページまとめ」をさせたりしました。
また、「学習してきた内容を家の人に説明する」という課題も効果的と思われますが、家庭環境によっては子供や保護者の負担が大きくなるので、私は多用しませんでした。

以上③について、前掲書では、pp.210-212,pp.241-242などを参照してください。
 
なお、上記の方法によってペーパーテストを活用することは、多くの場合、子供の自信を育むことにも繋がりました。
テストの点が向上するからです。
「前の学年よりもテストの点がよくなった。」
と、子供たちはよく言っていました。
もちろん、ペーパーテストの得点が全てではありませんが、「できない」よりは、「できた」方がいいに決まっています。

また、上記②の「まちがい直し」で、必ず「100点」と赤以外の色ペンで大きく書き直してから家庭に持ち帰らせていたことも、子供の自信を育むことに関連していたように思っています。

以上、ペーパーテストを活用方法についてでした。