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さあオリンピック開幕!学習に活かそう

パリオリンピックが開幕します。
私は担任教師時代、冬季オリンピックを含めた2年に一回のこの時をいつも心待ちにしていました。
なぜなら、子供たちの目を世界に向けさせる国際理解の学習の絶好の機会になるからです。

もちろん、国際交流や国際関係について子供たちの視野を広げる機会は他にもありますが、マスコミの取り上げ方も含め、子供の気持ちにとっての身近さという点でオリンピックに勝るものはありません。

今、地球規模課題についての学習を行うことは、絶対に必要です。
オリンピックがそのための契機になると考えます。
まずは世界に対して目を向けることとその具体的な理解が大切です。

そのためにオリンピックを教材にするのですが、それは、子供たちに無批判に観戦や受容をさせるわけではありません。
学年段階によりますが、テロや破壊工作も含めて、オリンピックのもつ負の側面にも目を向けさせることが必要です。

とは言っても、私がまず行っていたことは、「開会式」の映像を録画・編集し、地図帳を片手に見させることでした。
開会式・選手の入場を通して、開催国の文化を軸に様々な国の名前や、文化、人種の違いを目で見て知ることができます。
入場してくる国の位置を世界地図で確認させました。
教室には世界地図を掛けておき指示することで、見つけるのに時間のかかる子を援助しました。

その際に、低学年であっても子供たちがすぐに気が付くのは、参加人数の違いです。やがてそれが、競技の進行につれてメダルの獲得数の差とも結び付き、「国力」という概念の具体的な理解へと繋がります。
そして学年が上がると、「世界における不平等さ」という視点を獲得する子も出てきます。
過去には、この世界がいかに欧米中心であるのかがわかったと言う子もいました。

実はそこまで見通して開会式の映像を編集することが必要です。
全参加国を見せ地図で探させていたら、45分間では足りません。
映像編集では、子供たちが地図帳で見つけることが可能な時間を取ったり、比較させやすい国に焦点化したりする工夫が求められます。

また、オリンピックに続けて開催されるパラリンピックと比較して捉えさせることによって、学習は別の方向にも広がっていきます。
テレビ放送や新聞などの取り上げ方の量や質の大きな相違に気が付き、さらにその目を自分の中の差別意識に向ける子供も少なくありませんでした。

もちろん、パラリンピックの種目を知り、スポーツのもつ可能性や魅力を感じたり、スポーツの概念を広げたりする方向にも多くの子供たちの目は広がりました。

なお、「開会式」の映像を録画・編集すること以外に、私が必ず行っていたことには、オリンピック・パラリンピックの新聞記事の収集がありました。
集めた記事は、夏休み明け初日の朝の教室黒板にびっしりと並べておきました。
オリンピック・パラリンピックの新聞記事で埋め尽くした黒板で、子供たちの再スタートを出迎えたわけです。

この実践については、「リフレク帳105:夏休み明けの黒板を夏休み中の新聞で埋め尽くそう」で紹介しています。

オリンピック・パラリンピックに限らず、このような “新聞黒板”そのものの主なねらいは以下の三つでした。

①止まっていた学級の時間を再び動かすための話題作り。

②夏休みを「世の中の出来事」という視点で振り返らせることで、社会事象への関心を高め、新聞記事を活用する力を育むきっかけ作り。

③点目は上記①に関連しています。子供たちは、それぞれの夏休みをそれぞれの家庭でそれぞれの形で過ごしてきています。その過ごし方には、当然凹凸があったはずです。それを、黒板上の「この夏の出来事」という話題によって、一度フラットなものに近付けたいという意図です。
久々に再開した級友たちとの会話の中に、「今年の夏は暑かったよね。」「台風の被害が、ひどかったね。」「〇〇高校が甲子園で優勝したんだ。知らなかった。」などという言葉が少しでも混ざっていたら、「成功」であると考えていたのでした。

そして今年度の場合は、私なら夏休み明け2日目に、オリンピック開会式映像を子供に見せます。
教室空間のオリンピック共有感覚を高めて、学級経営の一手にもするわけです。

興味の湧かれた先生がいらっしゃいましたら、自分の学級ならどんな国際理解の単元が創れそうか、子供たちがどんな学習を進めていきそうか、開会式の録画をしつつ構想を立ててみてはいかがでしょうか。