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バイデンのアフガン戦敗走と従軍通訳

「従軍通訳」なしで、現代戦は戦えない。
 現代戦を支配するのは非対称戦であり、それには戦場である現地社会の「人身掌握」がすべてを決定するからだ。
 アメリカが「勝利」する場合は問題ない。戦後復興の中で通訳たちには優遇されたキャリアが保証される。そうでない場合は、悲劇だ。
 バイデン政権によるアフガニスタンからの「敗走」がもたらす影響は計り知れない。通訳たち、その家族は「売国奴」の汚名を着され、処刑される。
 アメリカ陸軍のモットーがleave no one behindなら、命をかけて歩兵活動の最前線に同伴した通訳たちを、撤退計画において米兵と同列、そして同時に扱い、”作戦化”すべきであった。
 しかし、現在行われている通訳たちの脱出作業は、作戦と呼ぶには程遠い。
 タリバンの実効支配が急拡大する非常事態だから?
 冗談じゃない。「軍事的勝利なしの撤退計画」は、オバマ政権末期から模索され、トランプ政権を通じて実現化されてきたものだ。他のNATO諸国と共に、通訳の出国と移民受け入れは、その頃から始まっていた。
 通訳の数は米軍が圧倒的に多いが、カナダ、イギリス、ドイツなどは、確実に移民としての定着を進めていた中で、アメリカの”遅れ”は顕著であった。
 事実、僕は5年ほど前から、この”国際比較”について、あるカナダ人の博士論文の指導をしているのだ。移民となった元通訳たちの国をまたぐネットワークもできており、そこから明らかになるのは、定住支援においても顕著なアメリカの杜撰さである。
 現在、アメリカのSIVs(アフガン特別移民ビザ)事業は、性急に実施されるとの表明であるが、アメリカ本土への”直接”の輸送ではなく「第三国(この時点ではどの国かはっきりしてない)」を”経由”するものである。その”経由”がどのくらいの期間なのか、経由地での定住を意味するものなのか、その場合誰が家族の扶養、就労、そして子供の教育の責任を負うのか、すべてが定かではない。
 一方で、3千名ぐらいの通訳とその家族を抱えるイギリスは、イギリス本土への”直接”であり、それは、ドイツも、カナダも同じである。
 更に、現在、アフガン国土の半分以上をタリバンが実行支配している状態で、地方在住の通訳とその家族は、どうやって首都カブールにたどりつけばいいのか。地方の州都の空港は、かろうじてアフガン国軍が守っているにしても、そこに輸送機を飛ばすには、手筈を周知する綿密な計画と準備が必要である。
 言わずもがな、現在、そういう地方には、計画遂行を可能にする諜報活動と、輸送機の安全な離発着を確保する米・NATO軍は皆無なのだ。
 問題は、通訳とその家族だけではない。米・NATO諸国と一緒に民主化そして人権のために尽力してきた政治家、活動家、ジャーナリストへもタリバンの攻撃の矢が向けられる。政治難民の大量発生である。
 どうだろうか?日本も親米国の面目躍如で、人肌脱いでみるのは。
 特に、小泉政権下で、アフガン戦の下部作戦であった「インド洋給油作戦」に海自を派遣し、それは現在のジブチの自衛隊恒久基地と安倍政権の安保法制の策定につながった”恩義”があるのだから。
 日本が、アメリカのためにアフガン通訳、政治難民の”直接”の受け入れ先になるのだ。
 横田空域を通って横田基地への着陸だったら、日本政府の許可は要らない。そこまでは、日本に反対勢力あっても、アメリカの意思だけできる。だから、とりえず、横田基地に入ってもらって、既成事実をつくり、その後、時間を割いて、横田から日本への移住措置を進めるのだ。
 大した数ではない。とりあえず、数千人。
 どうだろう。


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