大腸内視鏡検査受検プロが教える、受検のコツと心得
大腸内視鏡検査とは。
お尻からカメラ付きの管を突っ込まれて、大腸の様子を診察するための検査だ。
初めて受検する方にとっては、
①なにか悪いものでも見つかったらどうしよう
②えっ、前日から食事制限あるの?
③えっ、下剤(腸管洗浄剤)いっぱい飲むの?
④てか、お尻にカメラ突っ込まれるとか恥ずかしくない?
など、不安の多い検査だと思う。
しかし、大丈夫だ。
①以外はなんとかなる。
潰瘍性大腸炎歴25年、大腸内視鏡検査歴だいたい15回くらいの私が編み出したコツを、ここに書き記そう(ただし、これはあくまで私のコツなので、そうなんだぁ〜程度に。何かあっても責任は負いかねますので、そこんとこはよろしくです)。
検査前日がかなり大事
この検査は、前日から準備が始まる。
大腸を空っぽにする必要があるため、前日の朝から食事制限が始まるのだ。
食事制限のやり方は病院によって違う。
〈検査用食事セット〉を渡されるパターンと、〈食べてもいいもの、いけないものリスト〉を渡されるパターンだ。
〈検査用食事セット〉の場合は、指示どおりにそれだけを食べれば良い。
私は久しく食べていないが、意外とおいしかったのを覚えている。
〈食べてもいいもの、いけないものリスト〉を渡された場合は、当たり前だが、食べてもいいものだけを食べる。
このくらいなら大丈夫だろうと、〈食べてはいけないものリスト〉のものを食べると、検査当日、大変な目に遭う。
ここで、私が編み出したコツのひとつが、検査前日の飲み物は水オンリーにすることだ。
そして、夕食はできるだけ取らず、可能なら水だけで耐える。
プチ断食だと思えばなんとかなる。
自分を追い込んでる自分、なかなかやるじゃん!と思えばなんとなくテンションも上がる……気がする。
とにかく、体内に残っているものを少なくすることが目的だ。
あと、前日夜に飲む下剤だが。
これは、錠剤の場合と液剤の場合がある。
錠剤の場合は、普通に多めの水で飲めばいい。
液剤の場合は、きちんと指示どおりの時間をかけて飲むことが大切だ。
一気に飲んでしまうと、下剤本来の力が発揮できず、翌日大変な目に遭う。
とにかく指示どおりが大切だ。
検査当日
腸管洗浄剤との戦い
検査当日は、朝から腸管洗浄剤を時間をかけてひたすら飲む。
これも必ず、指示どおりの時間を守って飲もう。
嫌なものは一気飲みしてしまいたいかもしれないが、ほどよく時間をかけて飲まないと、液剤が本領を発揮できず、結果的に余分に飲む羽目になる。
最悪気分が悪くなって、検査ができなくなる可能性もあるので、必ず指示を守ろう。
腸管洗浄剤は病院で飲むパターンと、自宅で飲むパターンがあるが、もし選択できるのなら、自宅で飲む方が気楽だろう。
ただし、送迎してもらえるか、病院まで近い場合に限る。
なぜなら飲み干したあと、へろへろになるからだ。
ちなみに、私はいつも病院で飲んでいる。
病院で腸管洗浄剤を飲む場合、同じ部屋に同じ検査を受ける人が何人かいるため、私は勝手に〈今日の同士〉だと思っている。
話しかけはしないが、「いっしょに頑張ろうぜ」とひそかに思っている。
腸管洗浄剤にも種類があり、2リットル飲まなければならないニフレックというものがある。
私はこのニフレックと相性が悪かった。
一度この液剤で気持ち悪くなってしまい、飲み干すことができずギブアップしたことがある。
しかし、大腸はきれいになっていたので予定どおり検査を受けることができ、心底ほっとした。
そう。
前日から準備し頑張って大量の腸管洗浄剤を飲んでも、大腸がきれいにならなければこの検査を受けることはできないのだ。
仕切り直しになり、また別日に食事制限からの振り出しに戻り、また腸管洗浄剤と戦わなくてはならなくなる。
それだけは絶対にイヤだ。
とにかく、この腸管洗浄剤が難関なのだ。
前日の水分補給を水だけにしたのは、この腸管洗浄剤の味すらも〈味があるもの〉として飲めるからだ。
そして、前日の夕食を水オンリーにしたのは、排出物を少なくするため、つまり規定の腸管洗浄剤の容量で大腸をきれいにするためだ。
前日の努力は、すべてこのためである。
規定の容量を飲んでも大腸がきれいにならなければ、腸管洗浄剤を追加オーダーされる。
これほどおかわりしたくないものはない。
これだけはどうしても避けたいがための前日からの準備なのだ。
ちなみに、私はニフレックで気分が悪くなってしまって以降は、別の腸管洗浄剤1リットルと規定量の水分を飲む形にしてもらったので、少しラクになった。
大腸がきれいになれば、あとはようやく検査なわけだが。
正直ここまで来れば、少々ぐったりするので、あとはどうとでもしてくれ、という気分になり、恥ずかしさはずいぶん薄れる。
それでも恥ずかしい場合は、医師は腸内しか興味がないと思おう。
あなたのお尻がザラザラだろうが垂れ下がっていようが、そんなものはガン無視している。
あなたのお尻に興味なんかない。
鎮静剤を使うか、使わないか
検査は鎮静剤を使うか使わないかで、痛さが変わる。
鎮静剤を使う場合、痛みは和らぐ。
ただし、検査後、1〜2時間病院で休んでいかなければならないのと、当日車の運転ができない。
また、鎮静剤によっては吐き気を催す人もいるらしい。
鎮静剤を使わない場合、検査の結果、特に異常がなければ即帰れる。
車の運転もできる。
ただし、痛みを伴う場合もある。
私の場合、潰瘍性大腸炎が少し悪化している時は、最初のカーブが特に痛い。
「炎症性腸疾患の人は、痛がる人が多い」と医師が言っていたので、大腸が健康な人は私ほどは痛くないのかもしれない。
一度、かなりの激痛で、
「痛ぁーい!ちょっと待ってぇ!」
と叫んでしまったことがあった。
その時、お医者さんはかなり慎重にカメラを進めてくれたし、看護師さんはずっと私の手を握りながら、背中をトントンしてくれた。
ありがたかった。
よほど変な医師や看護師でない限り、病院のスタッフの方々は、私たちに寄り添ってくれる。
力を抜いて委ねよう。
検査台に乗っている間は、まな板の鯉だ。
私の場合、激痛ポイントさえ通過してしまえば、あとはなんとかなるのだが、その日のコンディションで痛みの度合いは変わる。
「腸の形ってね、その時々で変わるんだよー」
「そーなんですかぁ」
と、自分の腸内が映し出されたモニターを医師と確認しながらそんな雑談をしたことがある。
もうすっかり常連なので、
「今日は痛そうじゃないね。余裕じゃん」
「そうですねー、今回はわりとラクです」
とか、
「あれ、今日は眼鏡?イメチェン?」
「なんか今日はもう眼鏡でいいやーって思っちゃって」
など、お尻に管を突っ込まれながら、そんな雑談もする。
痛みがなければ普通に会話できる。
話が少しそれたが。
カメラの管の太さ、医師の熟練度によっても痛みは変わる。
鎮静剤を使うか使わないかは、メリットデメリットを考えて医師と相談して決めよう。
検査後はご褒美を
大腸内視鏡検査は、ラクな検査じゃない。
だから、検査が終わったら自分にご褒美をあげよう。
私はいつも、プリンを食べることにしている。
「検査が終わればプリン、検査が終わればプリン」
と、心の中で唱えながら、いつも腸管洗浄剤を飲んでいる。
検査後のこのプリンのひと口目が、たまらなくおいしい。
そして、このひと口を食べるたび、おいしく食べられることに感謝する。
さいごに
私は今年も大腸内視鏡検査を受ける。
一緒に腸管洗浄剤を飲んでいる〈今日の同士〉を眺めながら、
「この中で、この検査の一番のベテランは多分私だな」
と、心の中でしょうもないマウントを取りつつ、
「しんどいけど、いっしょに頑張ろうぜ」
と、ひとりひそかに頷いたりするのだろう。
初めての方も、毎度の方も、憂鬱だろうが仕方がない。
ならば、腹をくくろう。
自分の健康のため。
そしてそれは、家族のため。
大切な人のため。
私といっしょに乗り越えよう。
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